古巣への復帰を決めた柿谷と丸岡の決意 C大阪はどのように変貌を遂げるのか

元川悦子

柿谷「全員で絶対にJ1に上がるという強い意識で」

柿谷はこれまで以上に走力と運動量が要求されるだろう 【写真は共同】

 柿谷と丸岡――この2人が“新生セレッソ”でどのように使われるのか……。今季のJ2において最大の注目点と言っても過言ではないだろう。

 柿谷について、大熊監督は最前線のみならず、左右のサイドでもプレーできると考えている。「曜一朗は14年までセレッソにいた時は1トップで、代表でもそのポジションでW杯にも行ったけれど、徳島では左、バーゼルでは右もやっている。実戦形式の練習を見ながらポジションを決めたい」と指揮官はコメントしていた。

 確かに新シーズンのFW陣を見てみると、柿谷、杉本に加え、昨季の主力でシーズン10得点をたたき出したベテランの玉田、ターゲットマンとして働いた田代有三、新外国人助っ人のリカルド・サントスとブルーノ・メネゲウと、少なくとも6枚の選択肢がある。リカルド・サントスは完全な1トップタイプで、ブルーノ・メネゲウの方は2列目ならどこでもこなせるセカンドトップタイプというから、彼らを含めてどのようにFWを組み合わせるかが問題になってくる。

 大熊監督は柿谷について、「曜一朗はJ1でシーズン21得点を挙げた時みたいに、基本的には真ん中の方がいいかもしれないけれど、求めるのは点だけじゃない。セレッソを将来的にJ1優勝、AFCチャンピオンズリーグ出場へと引き上げていくためにも、前線の守備の貢献度が重要になる。良いボールの取り方ができれば、その分、自分の決定機という形で返ってくるわけだから、曜一朗にも相手へのプレッシャーを意識してもらいたい」と語っており、これまで以上に走力と運動量が要求されるだろう。1年半試合から遠ざかっていた柿谷にとって、そのハードルを越えることが最初のテーマだ。

「自分がバーゼルへ行った半年後にセレッソはJ2に落ちた。その責任が自分にないとは思わない。実際、俺がJリーグでもっと点を取っていたら、あんなことにはならなかった。勝負弱いとかプレッシャーに弱いってことは、自分自身が一番良く分かっているから。移籍した蛍だって『J1に上げてから海外へ行きたかった』と俺に言っていたし、J1からの誘いを断って残った選手もいる。そういう仲間の気持ちも汲み取って、今年は全員で絶対にJ1に上がるっていう強い意識で戦わないといけないよね。

 今の自分は代表とかはどうでもいいし、とにかく開幕のことしか考えていない。しょっぱなから勝ち点をガンガン積み上げていけるように、自分ができることをしっかりやるだけだと思います」と柿谷は語気を強めた。バーゼル移籍前はこういった責任感を表に出すことが滅多になかった。それも1年半を異国で過ごした成長の証しなのかもしれない。

「今年からやっと、ちゃんとしたサッカー選手になれるんじゃないですか」と素直な思いを口にする26歳のアタッカーが、シーズンで15〜20得点を奪ってくれれば、指揮官もチーム全体もラクになる。柿谷にはそのくらいの高い目標が求められているのだ。

C大阪はどのように変貌を遂げるのか

ドルトムント同様、左の2列目でのプレーを希望する丸岡 【写真は共同】

 清武、柿谷、南野拓実と次世代のエース候補が背負ってきた13番をつけることになった丸岡は「一番こだわりたいのは試合に勝つ、勝ち点3を取ること」と“フォア・ザ・チーム精神”を前面に押し出している。チームを成功に近づける早道として、彼はセレッソU−18時代のボランチではなく、ドルトムントU−23で実績を積み重ねた2列目で勝負することがプラスになると考える。

「向こうではずっと左の2列目で起用されてきた。僕の中でもこの役割にフィットし、試合に出て、得点も取ってきました。だから、セレッソでも同じポジションで戦いたい。自分はマルコ・ロイスみたいなアタッカーではないので、タメを作りながら動き出しで勝負したいと思っています。ボールがない時にたくさん走って相手を疲れさせられれば、よりチャンスは増える。世界基準のドルトムントのサッカーを少しでもセレッソに持ち込んで、チームを変えられればいい。真司君から教わった『サッカーに全てをささげる姿勢』も生かして頑張っていきます」

 今季のセレッソには関口訓充、新加入の清原翔平といった2列目要員がいるが、柿谷や杉本、リカルド・サントスもこの位置で使われる可能性があり、やはり激戦のポジションなのは間違いない。それでも丸岡は他の選手にはないダイナミックさとアグレッシブさがある。「丸岡がセレッソに足りなかった球際の部分や攻守にハードワークするところを示してくれれば、チームも良い方向に変わる」と大熊監督も大きな期待を寄せていたように、彼が新たな起爆剤になる可能性も大いにあるのだ。

 欲を言えば、柿谷と丸岡のホットラインからゴールが量産されるような形が確立されれば、チームにとって最高だ。「曜一朗君は動き出しの部分が速いので、つねに曜一朗君を見ながらワンツーや2列目での入れ替わりだったり、良い連係を積み重ねていきたい」と丸岡も笑顔で話していた。

 そういう意味でも、欧州経験者2人が加わったC大阪がどのように変貌を遂げるのか、楽しみで仕方がない。2月28日のJ2開幕節・町田ゼルビア戦でベールを脱ぐ柿谷と丸岡から目が離せない。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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