対照的なスタイルを持つイランに挑む日本 「鬼門」の準々決勝突破なるか

川端暁彦

先発10人を刷新し試合に臨んだ日本

スタメンを10人入れ替えて、サウジアラビア戦に臨んだ日本代表 【Getty Images】

 リオデジャネイロ五輪アジア最終予選を兼ねたAFC U−23選手権、サウジアラビアとのグループリーグ第3戦は戦う前から日本のグループ1位が確定済みというシチュエーション。単に連勝しただけでは1位通過は確定しないのだから、裏カードの結果にも恵まれた形である。

 手倉森誠監督は「良い流れが降り注いでいる」と表現していたが、確かに運は向いている。「何ともぜいたくをさせてもらっている」と笑う指揮官は、第2戦からDF奈良竜樹(川崎フロンターレ)を残して先発10名を刷新。「フレッシュな選手で戦い続ける」ことを選んだ。

 変えたのはメンバー構成だけではない。システムも従来の4−4−2から4−3−3へと変更。手倉森監督が「3ボランチ」と呼ぶこのシステムを、あえて決勝トーナメントの前に披露した。狙いは「(決勝トーナメントからは)分析の部分が出てくるが、メンバーとシステムをいじったことによって、『日本は何をしてくるんだ?』という戸惑いを生じさせられれば」というスカウティング対策。

「まあ策略です」と不敵に笑った指揮官の様子からも、すでに1位突破を決めていたという心理的な余裕が感じられた。スタンドでは準々決勝の相手であるU−23イラン代表の選手たちも見守っていたが、確かに日本がどういうスタメンでくるかは読みづらくなったに違いない。

3戦全勝でのグループリーグ突破を果たす

初出場の井手口は監督の期待に応え、追加点を奪った 【Getty Images】

 そんな試合は、前半からボールが双方のゴール前を行き来する、少々慌ただしい攻防となった。サウジアラビアは俊足の左ウイング、アルムワラドをスペースに走らせる攻めが目立ち、対面のDF松原健(アルビレックス新潟)らを脅かすシーンがしばしば生まれた。前半10分には奈良が早くもイエローカードを受けるなど、MF大島僚太(川崎F)が「あまりうまくいっていないと思っていた」と率直に語ったとおり、日本の流れではなかった。

 ただ、少々流れが悪かろうと、1人の力で展開が変わることもあるのがサッカーだ。前半31分、ペナルティーエリア手前でボールを受けた大島は、1人のマークを外してミドルシュートを放つ。30メートルほどの距離から放たれたシュートは、ミサイルのような勢いで一直線にゴールネット左上へと突き刺さった。

「イメージ通りというか、イメージ以上かな。相手を抜いたところでシュートを打とうとは決めていた。スペースがあったのでリラックスして打てた。コースを狙ったというより、まずしっかり蹴ろうと思った。(コースは)うっすら見えているくらいだった」(大島)

 サウジアラビア側が直前の前半29分にコーナーキックに対するカウンターから絶好機をつかむなど、「いける」と思っていたであろう流れだっただけに、大島のゴールが与えたダメージは大きかった。「相手のメンタルがガクンときたのは感じた」とFW南野拓実(ザルツブルク)は言う。

 後半8分には、その南野のドリブル突破を起点にした攻めから、最後は今大会初出場のMF井手口陽介(ガンバ大阪)が冷静なシュートを決めて追加点を奪取。12分に不可解なPKから1点差とされてしまったものの、その後は快足FW浅野拓磨(サンフレッチェ広島)を投入して相手の攻勢をけん制しつつ、1点のリードを保って逃げ切ってみせた。

 手倉森監督は「(サウジアラビアは)もっと歯応えがあると思ったのだけれど」と余裕の表情で白い歯を見せたとおり、この試合もまた終わってみれば日本の快勝。大胆にメンバーを入れ替えながら、3戦全勝でのグループリーグ突破を果たし、「勢いを持って決勝トーナメントに臨める」(同監督)こととなった。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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