“2強”を追う無良崇人の覚悟 芽生えてきた勝利に対する強い欲求

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SPで初の90点台をマーク

全日本選手権SPで3位につけた無良崇人。FSで羽生、宇野を追う 【坂本清】

「NHK杯が終わってから、次の全日本選手権では90点以上を出すという気持ちで練習をしてきたので、93点(93.26点)を出せたのはすごくうれしいです。また、このトップスケーターが集まる緊張感のある大会で、ミスが許されない状況の中でしっかり最後までやり切れたのはよかったです」

 自身の演技後、無良崇人(HIROTA)は開口一番、そう手応えを口にした。無良にとってショートプログラム(SP)で90点台をマークしたのは初めてのこと。3位スタートとなったが、表情には自信がみなぎっていた。

 この日は演技に気持ちが入っていた。「6分間練習で厳しい着氷が続いていたので、しっかりやらなければ」と臨んだ冒頭の4回転トウループ+3回転トウループのコンビネーション、続くトリプルアクセルをきれいに着氷。共にGOE(出来栄え点)で2点以上の加点がつく見事なジャンプだった。そこからリズムに乗ると、3回転ルッツを決め、さらにはソチ五輪アイスダンス金メダリストのチャーリー・ホワイト直伝のステップでレベル4を獲得するなど、会心の演技を披露した。

「前半はあまり余裕がなかったんですけど、ジャンプを2発決めた後に、曲調が変わって観客の皆さんに手拍子をいただき、そこから自分もリラックスして演技ができたかなと思います。全日本は独特な緊張感があり、ピリピリした空気感もあります。SPはミスしたらどんどん下に落ちてしまうので、そういう緊張感の中で自分がどれだけやれるかは楽しみにしていました。NHK杯の演技があったからこそ、こうやってSPをしっかりやれていると思うので、今の勢いをしっかりフリースケーティング(FS)につなげていきたいです」

4回繰り返した言葉

 今季の無良はケガもあり、シーズン序盤は精彩を欠いた。10月のスケートアメリカではまさかの10位。NHK杯は3位と復調をアピールしたものの、1位の羽生結弦(ANA)や2位の金博洋(中国)には大きく水をあけられた。昨季は自身も出場したグランプリ(GP)ファイナルに出られず、羽生や宇野昌磨(中京大中京高)の活躍をただ見ることしかできなかった。

 しかし、その悔しさが大きな刺激となった。

「ゆづ(羽生)や昌磨はどんどん高得点を出している。また下からも突き上げが来ているので、しっかり上に食らいついていくという気持ちを忘れずにやっていきたい」

 羽生はNHK杯とGPファイナルで世界歴代最高得点を更新し、この日のSPでも4回転サルコウで転倒しながら、102.63点をマーク。宇野も今季は自己ベストを次々と記録し、SPでは97.94点で2位につけた。今後、この2人に割って入るには100点前後の点数が必要になってくるだろう。

 目指す頂は高い。だが、無良にはそれに挑む覚悟がある。SP後は「2人に食らいついていきたい」という言葉を実に4回も繰り返していた。これまでの無良は相手を意識した発言をすることがあまりなかった。だからこそ、ここまで明確な意志を口にしたことに驚いた。

 意識の変化はプログラムにも表れている。今季のSPは前述したチャーリー・ホワイトの振り付けだ。以前からの課題だった表現力をつけるために教えを請い、スケートアメリカ後にも5日間ほど「濃密な」合宿を行ったという。元から定評のあったジャンプに加え、今大会でもステップでレベル4を取るなど、徐々にその成果は出てきている。

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