連続トリプルスリーの課題は盗塁? 史上初の偉業達成は周囲の理解も必要

ベースボール・タイムズ

両リーグMVP、さらに流行語大賞も獲得した柳田(左)と山田。史上初の“2度目のトリプルスリー”は実現するか!? 【写真は共同】

 2015年の新語・流行語大賞にも選ばれた「トリプルスリー」(打率3割、30本塁打、30盗塁以上)。過去8人しか達成できなかった偉業を成し遂げた福岡ソフトバンク・柳田悠岐、東京ヤクルト・山田哲人両選手への称賛は、今さら惜しむべきものではない。では来季、2016年はどうなのか?2年連続のトリプルスリー達成はあるのだろうか?

複数回の達成者はゼロ

 8人。

 昨年までの日本プロ野球80年の長い歴史の中で、“トリプルスリー”の偉業を達成した選手の数である。

 初の達成者は、“元祖神主打法”の松竹・岩本義行と毎日(現千葉ロッテ)・別当薫(ともに1950年達成)の2人。その3年後の53年には、伝説の“怪童”、西鉄(現埼玉西武)の中西太が高卒2年目に軽々とトリプルスリーを達成した。当時は特に話題に挙がらなかったというが、83年に阪急(現オリックス)が誇ったオールラウンダー・蓑田浩二が30年ぶりに偉業を達成して注目を集めると、その後、西武・秋山幸二(89年達成)、広島・野村謙二郎(95年達成)、広島・金本知憲(2000年達成)といった新人類世代が次々と3割30本30盗塁をクリア。さらに02年には、西武・松井稼頭央が史上8人目の達成者として、球史にその名を刻んだ。

 しかし、この8人にして、トリプルスリーの複数回達成者はゼロ。現役22年の秋山、同21年の金本を筆頭に、いずれも長きに渡って第一線での活躍を続けた歴戦の猛者たちだが、トリプルスリーの達成は1度きりだった。

松井稼頭央の後悔とは?

 その原因を探るべく、まずは過去8人のトリプルスリー達成年とその翌年の成績を見たい。

・岩本義行(松竹)
1950年(38歳)打率3割1分9厘、39本塁打、34盗塁
1951年(39歳)打率3割5分1厘、31本塁打、10盗塁

・別当薫(毎日)
1950年(30歳)打率3割3分5厘、43本塁打、34盗塁
1951年(31歳)打率3割9厘、16本塁打、22盗塁

・中西太(西鉄)
1953年(20歳)打率3割1分4厘、36本塁打、36盗塁
1954年(21歳)打率2割9分6厘、31本塁打、23盗塁

・簑田浩二(阪急)
1983年(31歳)打率3割1分2厘、32本塁打、35盗塁
1984年(32歳)打率2割8分、26本塁打、5盗塁

・秋山幸二(西武)
1989年(27歳)打率3割1厘、31本塁打、31盗塁
1990年(28歳)打率2割5分6厘、35本塁打、51盗塁

・野村謙二郎(広島)
1995年(29歳)打率3割1分5厘、32本塁打、30盗塁
1996年(30歳)打率2割9分2厘、12本塁打、8盗塁

・金本知憲(広島)
2000年(32歳)打率3割1分5厘、30本塁打、30盗塁
2001年(33歳)打率3割1分4厘、25本塁打、19盗塁

・松井稼頭央(西武)
2002年(27歳)打率3割3分2厘、36本塁打、33盗塁
2003年(28歳)打率3割5厘、33本塁打、13盗塁

・柳田悠岐(ソフトバンク)
2015年(27歳)打率3割6分3厘、34本塁打、32盗塁

・山田哲人(ヤクルト)
2015年(23歳)打率3割2分9厘、38本塁打、34盗塁

 トリプルスリーの翌年は、上記のように打率3割未満が8人中4人、本塁打30本未満は8人中4人、そして盗塁は8人中7人が30盗塁に届かなかった。唯一、秋山が盗塁数を20も増やしたが、それ以外の面々は10以上、あるいは20以上も盗塁数が減少した。

 成績低下の要因として、他球団からのマークが厳しくなったことが容易に考えられるが、同時に盗塁数に関しては選手自身の意識の問題もあるだろう。決して盗塁成功率が著しく下がったという訳ではなく、盗塁企図数が少なくなったのだ。

 達成翌年の03年に打率3割5厘、33本塁打と2項目をクリアしながらも盗塁数が13に留まった松井は、このシーズンを振り返って「後悔がありますね。それまで30本塁打を打ったことがなかったのが、前年に打てた。それで翌年は『40本打ちたい!』と思った」と振り返る。そして「(柳田も山田も)どうしても打つ方に目が行くと思うけど、もう一回、走ることを意識すれば、2度、3度、(トリプルスリーを)達成できると思う」とアドバイスを送る。

 いまだ東北楽天で現役選手として奮闘を続ける松井は、96年に50盗塁をマークした後、翌97年からは3年連続盗塁王(62盗塁、43盗塁、32盗塁)に輝き、メジャー時代の07年にも32盗塁、そして40歳を迎えた今年も14盗塁をマークした。その脚力をフル活用すれば、30盗塁は十分に可能だっただろう。当時27歳という年齢からしても、「後悔がある」という言葉は納得できる。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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