小塚崇彦、感動を呼んだ魂の名演 写真で切り取るフィギュアの記憶(5)
「小塚崇彦 全日本選手権男子FS(2014年)」
【坂本清】
「練習では調子が悪くなかっただけに残念です。ただこの結果を引きずっていても仕方ないですし、もう後がないのでFSでは小塚崇彦らしい演技を見せたいです」
その決意どおり、FSで彼は攻めた。4回転ジャンプを2本入れ、あえて難度を上げた構成で挑んだ。演技が進むにつれて疲れが見え始めたものの、決して倒れない。『イオ・チ・サロ』の情感あふれた旋律と美しいヴォーカルが、彼の滑りと見事にマッチする。そこに限界なんて微塵も感じられなかった。終わった瞬間、彼はこれまで見せたことがないような大きなガッツポーズで喜びを表した。FSの得点は173.29点。一気に3位まで浮上し、世界選手権の出場権も獲得した。
【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
追い込まれた男が見せた土壇場での復活劇。その魂の名演に称賛の拍手はいつまでも鳴り止まなかった。
(文:大橋護良/スポーツナビ)
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