チームを優勝に導く「エース」は誰だ? 逸材そろう春高バレーの見どころ<男子>

田中夕子

鈴木祐貴(左)ら「Team CORE」メンバーを中心に、春高バレーの注目選手を酒井新悟監督に語ってもらった 【坂本清】

 バレーボール部に属するすべての高校生にとって憧れの舞台である「春高」。全日本バレーボール高等学校選手権大会が新春、1月5日に開幕する。

 出場校も出そろい、12月6日には組み合わせ抽選会も行われた。優勝の行方もさることながら、日本バレーボール界の未来を担う逸材として期待を寄せられる選手も多く出場する。2020年の東京五輪での活躍が期待される選手を強化指定選手とする「Team CORE」にも選出された選手を中心に、春高に出場する注目選手をTeam CORE男子の酒井新悟監督に語っていただいた。

雄物川のエース鈴木はシニア合宿にも参加した逸材

酒井監督は鈴木に歴代エースと同様に、チームを優勝に導く働きを期待している 【スポーツナビ】

 男子の出場選手の中で、Team COREに選出されたのは2名。雄物川高校(秋田)の鈴木祐貴選手と、東福岡高校の金子聖輝選手です。

 まず鈴木選手は2メートルを超える高さがありながら、レシーブ力も高いウィングスパイカーであることが高評価を受けています。大型選手でありながらも動きは機敏で、本年度の全日本登録メンバーにも選出され、4月には地元の秋田で行われたシニア合宿にも参加しました。パワーという部分ではまだ体が出来上がっていないために足りない面もありますが、動きや高さは遜色ない。全日本U−23チームの候補選手としてキューバ遠征に行った際も、身体能力で勝るキューバの選手に対して高さで劣ることなく、攻撃力の高さを見せつけました。将来の日本を背負って立つ逸材であることは間違いありません。

 ただ、彼には現時点で超えなければならない課題もあります。それは、エースとしての気構え、心構えです。例えば、春高に目を向けても、歴代の大会で「エース」として役割を担ってきた柳田(将洋=サントリー)選手、石川(祐希=中央大)選手といった面々は、ただ打数を重ねるだけでなく、チームを優勝に導いてきました。鈴木選手に期待するのは、まさにその部分。打数が自分に集まる中でいかにチームを勝利に導くことができるかという勝負強さです。国内では彼の高さは圧倒的な武器ではありますが、それだけでなく、多少の粗さがあったとしてもとにかく決めにいくという勝負にこだわる姿勢が見たい。

 20点以降の勝負を決する場面で、大事な1本を取れる選手かどうかという能力は非常に大切な要素です。真面目で頭の良い選手ですが、生真面目さだけでなく、時には荒々しく、ガムシャラに勝負する姿を見せ、高校最後の大会で彼が持つ勝負強さを証明してほしいと願っています。

東福岡・金子は将来セッターとしての活躍も期待される

金子は東福岡のエースでありながら、代表ではセッターを担う 【坂本清】

 金子選手は昨年2年生ながら、インターハイ、国体、春高の三冠を制したチームのエースであり、攻守のバランスがとれた良い選手です。3年生になった今季、インターハイは敗れましたが、国体も他校と混合の福岡代表として優勝しました。チームを勝利に導く難しさも知っている、いろいろな意味でチームを背負っている選手です。

 高さという面では鈴木選手には劣りますが、金子選手は非常に巧さがある。機動力を生かしてスパイクが打てることに加え、どの攻撃を選択することがベストか、空中で判断するスキルがある。ブロックの間を抜く、うまくタッチを取ってブロックアウトにする技術力は非常に長けた選手ですので、単にスパイクを決めた、というだけではなく、どんなふうに決めたのかという点もぜひ見てほしい選手です。

 東福岡ではエースとして活躍する金子選手ですが、全日本ユースチームや全日本U−23チームのキューバ遠征ではセッターとしてプレーしています。抜群のバレーセンスと高さを生かし、高い位置でセットアップできる利点もありますし、ディフェンスも良い。ハンドリングも非常に良いので、セッターとしての将来も非常に期待しています。とはいえ、まだまだ経験は少ないので、今は高い位置で取って良いトスを上げるという段階です。セッターならではの駆け引きなどはまだ備えていません。しかし、自分がスパイカーとして活躍する選手ですので、こういう場面はどんなトスを上げてほしいか、というスパイカー心理はよく理解しています。パス力もありますし、異なるポジションをこなせる逸材、金の卵を潰さないように育てていきたいと思っています。

 Team COREに選出されたメンバーを見ると、女子は高校生や高卒1年目の選手など若い選手が多いですが、男子は大学生や大卒の選手が多く、高校生は前述の通り、現段階では2名だけ。つまりそれだけ、彼らが持つ可能性が大きいという表れでもあります。高校ではボール練習が多く、トレーニングにあまり時間を割けなかったという選手も、大学やその先の進路では専門スタッフによる指導を受けながら、体づくりにも徹底して取り組むことで飛躍的に成長しています。鈴木、金子両選手とも高校時代はけがに苦しめられることもありましたが、本格的にトレーニングをすることでさらに伸びていくだろうと期待しています。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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