「Team CORE」メンバー4人の活躍に期待 逸材そろう春高バレーの見どころ<女子>

田中夕子

春の高校バレーが1月5日に開幕。今大会には宮部(写真)ら東京五輪での活躍が期待される「Team CORE」のメンバーが4人出場する 【坂本清】

 バレーボール部に属するすべての高校生にとって憧れの舞台である「春高」。全日本バレーボール高等学校選手権大会が新春、1月5日に開幕する。

 出場校も出そろい、12月6日には組み合わせ抽選会も行われた。優勝の行方もさることながら、日本バレーボール界の未来を担う逸材として期待を寄せられる選手も、多く出場する。2020年の東京五輪での活躍が期待される選手を強化指定選手する「Team CORE」にも選出された選手を中心に、春高に出場する注目選手をTeam CORE女子の安保澄監督に語っていただいた。

全日本でも活躍した宮部の将来性と金蘭会高校の取り組み

 昨年優勝の金蘭会高校(大阪)の2年生エースである宮部藍梨選手は、今年7月のワールドグランプリ(WGP)にも出場しました。Team COREに選出された時点ではまだ技術的には荒削りな面が多い選手でしたが、180センチを超える身長と跳躍力、手足の長さに加えて抜群の将来性も秘めていました。金蘭会高校の池条(義則)先生は、宮部選手の今だけを見るのではなく、潜在能力の高いこれからの選手であるという認識を持たれて、現在の彼女の力量を十分に把握されたうえで、しっかりとした技術を身につけさせようと指導されているように思われます。

 金蘭会高校は、チームスタイルとして高い軌道のセットに対してアタッカーはしっかりと助走し、跳躍をして、ボールを強くインパクトするということが徹底的に鍛えられています。WGPにおいて、宮部選手は高校で指導されてきた基本技術の成果を十分に発揮していて、通過点が非常に高いスパイクを打っていました。仮にブロックに当たったとしても、ブロッカーにシャットされてしまう位置を外し、ブロックアウトになるようなスパイクが打てるようになった。これは確実に成長した点と言えるでしょう。

 高校生の中では体つきもしっかりとしてきて良くなってきましたが、まだ線は細く、今の状態でシニアのレベルで国際大会に出続けるという点ではまだまだ足りないところもあります。シニアで国際大会の経験を積んできている選手や、Vリーグを何年も戦っている選手と比較すると、例えば、フロアディフェンスの面では、打球の強さや速さに対する慣れが違いますし、取るべきポジショニングも違う。

 ブロックでも、手の角度、止められる幅なども含め、まだ不十分な面は少なくありません。とはいえ、それでも現時点で高校生がシニアのコートに立って堂々とプレーできるということは非常に素晴らしい。評価に値することであるのは間違いありません。

 宮部選手は9月の国体は腰痛で出場を控えておりましたが、金蘭会高校は宮部選手だけのチームではなく、チーム全体が鍛えられ、この状況でどんなプレーをすべきか、全員が分かって動いている賢いチームです。ディフェンス力は高校生の枠を超え、日本のトップクラスです。宮部選手が入った時の長所と、宮部選手が入らない時の長所、両面をしっかり持ち合わせて鍛えているチームですので、どんな戦いを見せるか非常に楽しみなチームです。

激戦区・東京代表、下北沢成徳のエース黒後

下北沢成徳のエース黒後に、安保監督は試合を決めるプレーを期待している(写真は昨年のもの) 【坂本清】

 全国大会に出場するために地区予選を勝ち上がるのは、どのチームにとっても大変困難です。近年、女子の東京代表争いは非常にし烈な戦いが繰り広げられています。どのチームにも将来性を感じさせる選手がいて、なおかつそれぞれのチームが掲げるコンセプトが明確にあり、それにのっとったチームづくりがなされている。東京を勝つのは至難の業と言えるでしょう。

 そんな東京で3位となり、出場権を手にした下北沢成徳高校のエースが2年生の黒後愛選手。彼女も宮部選手と同様に、Team COREに選出された選手で、オフェンスだけでなく、サーブ、サーブレシーブ、ディフェンス、フロアディフェンス、セッティングと、すべてのプレーにおいて非常に技術力が高い選手です。

 性格も明るく、コートの中でムードを作り出せる選手でもありますが、彼女がこれから身につけていかなければいけないのは最後の最後、切羽つまった1点を争うような場面で、エースとして責任を負ってプレーできるか。チームのために自己犠牲をいとわず、献身的なプレーができるかどうかでしょう。なおかつエースとして「私のプレーでこの勝負を決するんだ!」と強い気持ちを持って戦うことができるか。一見すれば将来性を計るうえでそのようなことは関係ないように感じるかもしれませんが、世界で戦ううえで、この要素は非常に大切なものでもあります。

 春高に出場することや、世界ユース選手権や世界ジュニア選手権に全日本代表選手として選ばれるということは能力が高い証しです。黒後選手は同世代の中でも非常に高いポテンシャルを持った選手です。「この場面ではこのショットがベストだ」と自信を持って選択し、そのプレーが実行できているかどうか。もし、1本で決めるには不十分な体勢であるならば、相手が嫌がるところへボールをコントロールしようと考えてプレーできているか。1本1本のプレーに、どれだけ深い意図を持っているかどうか。そういったチームの勝ち負けの責任を負うだけの能力を持った選手ですので、春高という誇りを懸けて戦う舞台で、どのような意図をもってプレーを選択するかというところに期待したいですね。

 下北沢成徳はトレーニングにも積極的に取り組み、金蘭会と同様に、高いトスに対してきちんと助走を取って、しっかり跳んでたたくという基本を重視したチームです。黒後選手はそういったチームの中で鍛えられている選手であり、現在はコンディションも良好です。強豪校と言われるチームとの対戦が続く組み合わせですが、そこでどんな戦いをするか、非常に注目しています。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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