U−22日本代表が中東遠征で見せた変化 五輪最終予選まで1カ月、ブレーク間近か

飯尾篤史

五輪アジア最終予選まであと1カ月

U−22ウズベキスタン戦をスコアレスで終え、カタール・UAE遠征は2試合連続の0−0となったU−22日本代表 【写真は共同】

 U−22ウズベキスタン戦が終わってから30分後――。選手全員がスタジアムに隣接するホテルに戻ったあとで取材エリアに姿を現わしたU−22日本代表の手倉森誠監督は、取材陣に向かって「何、沈んだ顔をしてるの?」と笑顔を見せたあと、「決めるところだけだね。でも俺は、本番で決めればいいだろうって思っているよ」と言って、話を切り出した。

 果たして、それは本心なのか、強がりなのか。

 リオデジャネイロ五輪アジア最終予選まで、あと1カ月。最終選考の場として位置づけられたカタール・UAE遠征で行なわれた10日のU−22イエメン戦、13日のU−22ウズベキスタン戦はいずれも0−0の引き分けに終わった。

 2試合とも得点力の欠如を露呈してしまったが、同じスコアレスドローでも試合におけるテーマ、ゲームの様相は異なっている。

 10日に行なわれたイエメン戦は「チャンスを与えたいという思いがある中での人選だった」と指揮官が語ったように、テストの趣が色濃く反映されたゲームだった。

 先発の2トップには荒野拓馬と鎌田大地という初めてのコンビが起用され、後半からはオナイウ阿道と金森健志のセットが試された。先発の2ボランチも公式戦で初めてペアを組む原川力と秋野央樹だった。

 ハーフタイムに7人の選手を入れ替えると、終盤にはけが明けの松原健を15分間プレーさせ、秋野をボランチから左サイドバック(SB)に移してもいる。最終的に11人全員を交代させたため、コンビネーションを図るのが難しく、ゲームは次第に大味なものになってしまった。

 それでも前半、二度の決定機に絡んだ鎌田と、後半に同じく二度の決定的なチャンスを迎えたオナイウは瞬間的に輝きを放ったが、選手の中には「こんなにメンバーを代えるとは……」と驚きを隠せない者もいた。

様相が違った2つのスコアレスドロー

 一方、ウズベキスタン戦は「本番を想定して、絞り込んで戦う」との指揮官の宣言どおり、遠藤航、大島僚太、岩波拓也、植田直通といったアジア最終予選でのレギュラーが予想される顔ぶれがピッチに立った。

 もっとも、2トップに関しては、この日も鈴木武蔵とオナイウという初めてのペアが試されている。手倉森監督は試合前日、「身体能力の高い2人を組ませたらどうなるか」と彼らの起用を明言したが、中盤から後ろの顔ぶれは固まりつつあるのに対し、前線はどの選手、どの組み合わせも決め手に欠き、模索が続いているというのが現状だ。

 前半は、鈴木のスピード、オナイウの高さや強さを生かそうと、ボールをシンプルに縦に入れ、サイドハーフの中島翔哉や矢島慎也が絡んで厚みのある攻撃を繰り出した。なかでもゴールへの強い意欲を見せたのが、矢島である。前半の決定機の多くは彼のフィニッシュからだった。しかし、残念ながらシュートがネットを揺らすことはなかった。

 一方、中島をトップ下に置き、4−4−2から4−2−3−1に変更して戦った後半は、足元でショートパスをつないで崩すスタイルに変更。結果として前半よりもチャンスの数は減ってしまったが、選手の立ち位置やシステムによって攻め方を変え、それがチームとして共有されている点に、成長の跡が見えた。

 2試合続けて0−0だったため、「ゼロ」がクローズアップされることになったが、注目したいのは得点の「ゼロ」ではなく、失点の「ゼロ」である。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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