羽生結弦が示した底知れぬポテンシャル 写真で切り取るフィギュアの記憶(4)

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 選手の数だけそれぞれの物語がある。笑顔、涙、怒り……こうした表情とともにこれまで多くの名場面が生まれてきた。後世まで脳裏に刻んでおきたいフィギュアスケートの記憶を写真で切り取る。

「羽生結弦 GPファイナル男子SP(2013年)」

【坂本清】

 時間が経過するにつれて鼓動が高鳴る。ひょっとしてこれはかなりの点数が出るのではないか。羽生結弦(ANA)の演技を見ていて、そう思った。

「素晴らしい選手がそろっているなかで、どれだけ自分に集中できるかが課題ですし、それが自分にとっての挑戦でもあります。勇気を持ってしっかりと足を踏み出し、集中しきれるようにしたいと思っています」

 大会の前日会見でそう語る彼は、何かを悟ったかのように泰然自若としていた。パトリック・チャン(カナダ)ら他の選手を意識するあまり、自らのバランスを崩していたのは、ほんの数カ月前のことだ。

 コーチであるブライアン・オーサーから、彼はこんな助言を受けていた。

「ユヅルは心のエネルギーを使いすぎている。何週間も前からパトリックとの対戦に気合いが入っている。もっとリラックスして、試合直前に集中することが大事なんだ」

 4回転を含むジャンプはすべて成功。神経が研ぎ澄まされた彼の演技は、息をのむような圧倒的な迫力と美しさがあった。雑念は何も感じられない。この18歳の底知れぬポテンシャルに、ただただ驚くほかなかった。アナウンスされたスコアは99.84点。当時の世界歴代最高得点だった。

(文:大橋護良/スポーツナビ)
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