ラグビー日本代表、新HCの条件は? エディー氏は「敵」として日本大会へ

斉藤健仁

エディー氏がイングランド代表HC就任

日本代表をW杯で3勝1敗の好成績に導いたジョーンズ氏がイングランド代表HCに就任した 【写真:ロイター/アフロ】

 11月20日、10月末に閉幕したワールドカップ(W杯)の余韻が残る中、ラグビー界に衝撃的なニュースが舞い込んだ。

 2015年のW杯において、日本代表を指揮したオーストラリア人のエディー・ジョーンズ氏がイングランド代表のヘッドコーチ(HC)に就任したのだ。日本を離れ、11月1日から南アフリカのスーパーラグビーチームのストーマーズの指揮官に就任していたが、契約を解除し、ラグビーの「母国」の指揮官となった。もちろん、これは先のW杯で日本代表を率いて、南アフリカ代表を倒すなど3勝1敗に導いた実績のインパクトが大きく影響したことは間違いない。

 しかも新ヘッドコーチの任期は4年、2019年の日本開催のワールドカップまで、となった。つまり、何もなければ、ジョーンズ新HCはイングランド代表を率いて、日本開催のワールドカップで采配を振るうこととなった。「話を聞いたときに大変ワクワクしました。イングランド代表はとてもポテンシャルがあるチームです。2015年のW杯は若くて素晴らしい選手がたくさんプレーしていたので、彼らの70%は2019年のW杯に出場するでしょう。こうしたチームを指導するのは大変良い機会だと思いました」(ジョーンズHC)

日本とイングランドの違い

 またジョーンズHCは、イングランド代表指揮官就任に際してのインタビューで、やはり日本代表のことにも触れた。「私は3回のW杯を経験しています。中でも2015年W杯は信じられないくらい素晴らしい経験となりました。日本代表に対してもイングランドのファンが、自分たちのチームが負けているにも関わらず、素晴らしい声援を送ってくれました。そういったファンの方々が次の4年間で、もっとエキサイティングになれるようなチームを作っていきたい」

 もちろん、イングランドは「強い国内リーグを持っている」(ジョーンズHC)ため、日本代表に課したように160日間の合宿を実際にすることは不可能であり、やる必要はないかもしれない。しかし、日本と違い、イングランドのリーグは完全にプロフェッショナルであり、日本人のように忍耐強くもないはずだ。

伝説的選手からは批判も

エディーHCが率いるイングランド代表は来年2月に初戦を迎える 【写真:ロイター/アフロ】

 もともとは“校長先生”だったジョーンズHCの得意とする、スパルタ指導について、元オーストラリア代表WTB(ウイング)で伝説的選手だったディビッド・キャンピージは、BBCラジオでジョーンズのコーチングスタイルについて「まるで学校の教師のよう」と指摘し、さらにこう批判を続けた。「ラグビーはプロフェッショナルなスポーツだ。我々に教師は必要ないが、エディーはそのものだ。ラグビーは見に来る人をプレーで魅了するもの。エディーはその仕事はできるだろう、つまり勝つことはできる。だが、ラグビーのスタイルは好ましいものではない。彼のチームは非常に組織的にプレーし、選手たちは彼の言うとおりに動くスタイルだ」

 さらにキャンピージは、自国にプロリーグがあるにもかかわらず、イングランド出身者を新しい指揮官に選ばなかったイングランド協会も批判した。「ラグビーというものはその国のためにプレーする人間たちが、国の仕事として成し遂げるものであって、その点で協会は無策だとしか言いようがない。組織というのはどこにあるのか? 世界で一番になりたいという若いコーチたちはどこにいるのか。絶望的だ。ただ助っ人に金を払うだけで良いと思っている」

 ジョーンズHCに率いるイングランド代表の初戦は、来年2月6日の「シックスネーションズ」のスコットランド代表戦である。やはり、「ジャパンウェイ」よろしく「イングリッシュウェイ」を追求することになるのか。まずは、どんなラグビーや選手選考をするのか、お手並み拝見である。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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