開幕から1カ月、接戦の続く男子Vリーグ 高まるサーブとチーム戦術の重要性
抜群の安定感を誇る豊田合成
それぞれが果たすべき役割を果たす豊田合成は、抜群の安定感を誇る 【坂本清】
事実、大混戦の1レグを7連勝と無敗で終え、現在首位に立つ豊田合成トレフェルサ。高い「個」の能力が結集する場が全日本とするならば、豊田合成にはW杯に選出された選手は1人もいない。昨シーズンは初の3位と躍進を遂げたチームとはいえ、全日本しか見ない、という人々にとってはあまりなじみがないチームかもしれない。
指揮を執るのはJTのヴコヴィッチ監督と同様、3シーズン目を迎えたアンディッシュ・クリスティアンソン監督。母国のスウェーデン代表やイタリア、ギリシャなどのクラブチームで指揮を執った名将で、主将の古賀幸一郎が「どんな時にも必ず答えがあり、コーチングに絶対の自信がある」と称するように、選手に提示する課題や戦術は実に明快だ。
例えば1つ1つのプレーに対しても曖昧な基準ではなく明確な指針を設け、サーブやスパイク、ブロックやレシーブなどを12個の項目に分け、それぞれに効果率を設定する。 その結果、昨年まではイゴール頼みだった攻撃も、今シーズンは課題としてきたポジション4、レフトからの攻撃回数が多いウイングスパイカー(WS)の攻撃力が向上、得点が増えただけでなくミスの数が大幅に減少した。クリスティアンソン監督も「選手に提示しているスパイクに関する数字は、すべてクリアしている」と言うように、成果は顕著に表れている。
加えて、攻撃以上に手堅いのが守備だ。2年連続でベストリベロに輝いた古賀のディグ(スパイクレシーブ)力など、一見すれば個人技がリードしているように見えるかもしれないが、決してそうではない。ブロッカーが自分の判断で跳ぶ、レシーバーが読みで動くなど自分勝手なプレーをクリスティアンソン監督は許さず、どの位置、どのタイミングでブロックに跳び、レシーバーはどの位置で守り、次の攻撃につなげるかという鉄壁のフロアディフェンスが、揺るがぬベースとして構築されている。
「自分たちが『強い』と思うことはない」と謙遜しながらも、勝ち続けている理由をセッターの内山正平はこう分析する。
「相手からすれば『決まった』と思うボールもブロックやレシーブにかかって、簡単に決まらない。気持ちよく得点が取れないと、なかなか勢いに乗ることはできないんです。どれだけ良いコースに打ってもワンタッチを取ってつなげられて、相手は波に乗れずにいるのに対して、僕らは『こうすれば点が取れる』というベースが1人1人にあるから大きな波がない。それが一番の強みかもしれませんね」
イゴールという攻撃の絶対的な柱はいるが、それだけでは勝てない。決して派手ではないが、それぞれが果たすべき役割を果たし、相手にやりたいことをやらせぬうちに自チームのチャンスをつくりだす。まだ1レグを終えたばかりとはいえ、抜群の安定感は7連勝で首位、という結果を十分に納得させる要素と言えそうだ。
長いシーズンはまだ始まったばかり
昨年優勝したJTサンダース。今年はどこが栄冠を手にするのだろうか? シーズンはまだ始まったばかりだ 【坂本清】
優勝が決まるファイナルマッチは3月。5カ月に及ぶ長いシーズンは、まだ始まったばかりだ。
W杯で活躍した選手が見たい。ひいきのチームを応援したい。サーブの威力を見てみたい。派手なフライングレシーブだけではない守備力を見てみたい。
理由は何でもいい。一度、男子バレーの会場に足を運んでみてはどうだろうか。「来てよかった」と思える試合やプレーがどれだけ見られるか。その真価を、自らの目で確かめてほしい。