株式上場などで追い風のフェラーリ 黄金期再来へ必要なカギは?

田口浩次

ニューヨーク証券取引所へ上場

2014年にフェラーリ会長に就任したマルキオンネ氏 【Getty Images】

 しかし、当時と大きく違っていることもある。それはF1参戦に関わる費用の増加だ。現在、トップチームで年間400〜500億円とも言われる予算が必要とされている。フェラーリの場合、FOM(フォーミュラワン・マネージメント)からの分配金だけで推定1億6400万ドル(約200億円前後。14年の分配金で、プレミア分の9700万ドル/約120億円が含まれる)が支払われ、チームへのスポンサー収入は1億ドル/約124億円を軽く超える程度(いまだにフィリップモリスが車体全体における広告部分にデザインの拒否権など大きな影響力を持つと言われている)、さらにはマーチャンダイズのライセンスフィーなどがある。これらを合わせると他のチームに比べて非常に潤沢な資金を持っているように見えるが、それでもF1のトップランナーとして戦っていくにはギリギリのところである。

 そんなフェラーリのF1活動を財務的に後押しするニュースが先日あった。フェラーリのニューヨーク証券取引所への上場(10月21日)だ。1969年にフィアットグループの傘下に入って以来、長くフィアットグループ内の非上場企業だったが、プレミア市場での圧倒的な人気と高い利益率から上場しさらなる資金調達を図ることになった。結果、フェラーリについた売り出し価格は52ドル。証券コードは『RACE」』レースイメージの強いフェラーリらしい証券コードの人気もあったのか、初値は60ドルをつけた。

 ちなみに、この上場でフェラーリについた価値(株価総額)は約1兆2000億円。これがどれほどの価値かを比較すると、現在販売絶好調のマツダが約1兆5000億円、三菱自動車が約1兆600億円、ジャンルは違うがいま話題の東芝が約1兆2000億円ほど。年間1万台に満たない販売台数の自動車メーカーが、年間70万台、100万台規模の自動車メーカーや世界的電機メーカーと株式市場における企業価値は同じということだ。

チームに必要な最後のピース

 このように、今後必要な開発資金等、財務的なテコ入れも加わったフェラーリにとって、もうひとつの追い風が、あまりにも強すぎるメルセデス製PU(パワーユニット)との差を埋めるべく、ルールが追いかける側にとって有利に変更されていく可能性が高いことだ。こうした動きに対して、メルセデス側も2年連続でダブルタイトルを獲得できた後だからか、以前ほど強硬に反対をしなくなった。

 こうなってくると、再びフェラーリの黄金期はやってくるのかが気になるところ。

 現在、フェラーリが手にした鍵は、最高のマネージメント体制、最高のドライバー、潤沢な資金だ。1996年当時のフェラーリが手にしていたのは、これらに加えてロリー・バーンという最高のデザイナーがいた。現在のフェラーリには2013年にロータスから引き抜いたジェームス・アリソンがいるが、アリソンの立場はデザイナーというより、ロス・ブラウンが担ったテクニカル・ディレクターの役割だ。まだ最後のキーは手にしていないといえる。もし、フェラーリが最後のキーとなるデザイナーを手にしたら、本当に再び最強の名前を欲しいままにする可能性は高い。15年シーズン最終戦もそうだが、この先のフェラーリに注目していきたい。

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