“ビッグ4”から学ぶ錦織圭の成長 変革を恐れず、視線はすでに来季へ

内田暁

新たな自分と出会うことを恐れない

 今回のツアーファイナルズ決勝を戦ったのは、この大会で錦織に異なる意味を持つ敗北と、いずれも明日への糧となる経験を与えた、ジョコビッチとフェデラーだった。決勝のジョコビッチは、錦織を破ったとき同様にバリエーション豊かなサーブを打ち、ラリーを支配して試合を制する。今季を82勝6敗で終えた王者は「キャリア最高のシーズンだった」と認めることをためらわなかった。

ジョコビッチ(左から2番目)、マレー(同3番目)、フェデラー(同4番目)、ナダル(右から3番目)のビッグ4を間近で見ているからこそ、錦織も変革を恐れない 【Getty Images】

 このジョコビッチとフェデラーに加え、今季を2位で終えたアンディ・マレー(イギリス)、そしてラファエル・ナダル(スペイン)の“ビッグ4”は、今大会においても大きな存在感を示してきた。マレーは昨年、背中の手術の影響もあり一時はランキングを12位まで落とすも、今季はバックのダウンザラインを多用し、早いタイミングで展開するテニスで勝利を重ねた。ナダルも、ベースラインから下がらずネットにも出る攻撃スタイルを確立し、10位まで落ちたランキングを最後は5位まで上げてきた。

「ビッグ4と呼ばれるナダルもマレーもそうですが、やっぱりしぶといですね。ここに来て自信をつけて、また良いプレーをしている」

 背を追う先達の偉大さを、錦織はあらためて認識する。彼ら4人は、一時は不調やランキング下降を経験するも、その度に変革を恐れず己に向かい、さらなる武器を携えはい上がってきた。

 そして、そんな良き手本が身近にいるから……いや、彼自身がこの地位に留まりビッグ4を間近で見ているからこそ、錦織も、新たな自分と出会うことを恐れない。

「来季は、もっとネットに出るようにしていきたい。ファーストサーブも、もっと入れるようにする。僕はサービスエースを多く取れるわけではないから、確率を上げる必要がある。オフには、厳しいトレーニングをする。フィジカルも鍛えなくてはいけない。細かい点をいろいろと改善することで、全体的に上達していきたい」

すぐに新たなシーズンが幕を開ける。錦織は来季に向け、さらなる飛躍を誓った 【Getty Images】

 長いシーズンを終えた彼の目は、既に来季に向けられていた。

「こうやってトップ8で終われるのは、非常に価値があること。もっと上に行ければよかったけれど、この位置にいるのも簡単ではないので。この大会に出たのも評価できると思うので、プラスな部分と直す部分をしっかり考え、オフシーズンに臨みたいと思います」

“オフシーズン”と言えど、真に“オフ”の季節は驚く程に短命だ。この後、錦織は日本でチャリティーイベントやエキシビションをこなし、傷ついた体をしばし休め、そしてすぐに追い込みの日々が訪れる。

 新たなシーズンの幕開けは、わずか6週間後に迫っている。

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著者プロフィール

内田暁

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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