羽生結弦に感じた“異質なオーラ” 写真で切り取るフィギュアの記憶(2)

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 選手の数だけそれぞれの物語がある。笑顔、涙、怒り……こうした表情とともにこれまで多くの名場面が生まれてきた。後世まで脳裏に刻んでおきたいフィギュアスケートの記憶を写真で切り取る。

「羽生結弦 全日本選手権男子FS(2012年)」

【坂本清】

 初優勝は格別のうれしさがこみあげるものだ。これまでの努力や苦労が報われた瞬間なのだから、それは当然の感情だろう。しかし、羽生結弦(ANA)は違った。全日本選手権を初めて制したにもかかわらず、その表情はやや曇っていた。

「自分はまだ本当のチャンピオンじゃない」

 この日のFSで、彼は2つの4回転ジャンプをいずれもミスした。SPの貯金を生かし、高橋大輔の猛追を振り切ったものの、彼の水準からすればとても満足いく演技ではなかったのだろう。18歳の新王者は、こちらが思う以上に自分に対して厳しかった。

「今日のプログラム自体は50%ぐらいの出来かなと思っています。今まで80%ぐらいの出来になったこともないんですけどね。でも、だいぶそこに近づいてきたかなという手応えはあります」

 理路整然とした物言いに、飽くなき向上心。他とは違う何か“異質なオーラ”を感じさせた。柔和な顔立ちからは想像もつかない内面の強さも時にのぞかせる。そして彼はこう言った。

「来年はまた違った羽生結弦を見せることができればと思っています」

 有言実行。それから約1年2カ月後、彼はソチ五輪で日本男子初となる金メダルを獲得した。

(文:大橋護良/スポーツナビ)
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