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香川真司はどうすれば生きるのか?
「代表で輝けない10番」から脱却できず

満を持してカンボジア戦のピッチへ

ドルトムントでは好調を維持する香川だが、代表では輝けない。原因はどこにあるのか?
ドルトムントでは好調を維持する香川だが、代表では輝けない。原因はどこにあるのか?【Getty Images】

 5万人の大観衆が押し寄せた17日夜のプノンペンのナショナル・オリンピック・スタジアム。5日前のシンガポール戦(3−0)はクラブでの連戦による疲労を考慮され、スタメンから外れた香川真司は、2015年代表ラストマッチとなるカンボジア戦のピッチに満を持して立った。


 カンボジアのエースFWクオン・ラボラビー(9番)が「日本で一番注目しているのはカガワ。ボルシア・ドルトムントの試合はいつも見ているし、彼は本当に素晴らしい選手。憧れている」と語ったように、相手選手も、スタジアムに駆けつけた人々も、日本のエースナンバー10の一挙手一投足に注目していた。


「ドルトムントと代表では求められる役割が違うし、別物ですけれど、(代表では)より高い位置でプレーすることが多いので、周りの選手をうまく生かしながら、自分も生きなければいけない」と香川自身も周囲との連係、イメージの共有を重視しつつ、ゴールを貪欲に狙っていく意向を示していた。


 前日練習では、長谷部誠がアンカーに入り、右インサイドハーフに山口蛍、左インサイドハーフに香川が入るという「ドルトムントスタイル」に近い形にもトライ。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督もクラブでの良い感覚を代表に還元させようとしていると思われた。

らしさは影を潜め、輝きを見せられず

カンボジア戦ではマークが集中。香川らしさは影をひそめた
カンボジア戦ではマークが集中。香川らしさは影をひそめた【写真:ロイター/アフロ】

 ところが、試合が始まると、香川の位置は完全なるトップ下。そこはマークが集中していて、なかなかボールが入らない。彼は身振り手振りで周囲に指示を出し、周りを動かしながら自らがフリーになるように仕向けるが、うまくいかない。前半のチャンスらしいチャンスは、17分に山口の縦パスを受け、反転して右足シュートを放った場面と、前半終了間際に左サイドを駆け上がった藤春廣輝にダイアゴナルのパスを出したシーンくらいだった。


 前半ラストの時間帯は中盤の低い位置に下がってインサイドハーフ的に動き、リズムを作ろうとしていたが、やはりドルトムントでプレーしている時に比べるとボールを触る回数が少ない印象だった。「シンジはボールを数多く触ってリズムを作る選手」とドルトムントのトーマス・トゥヘル監督も語ったことがあったが、この前半は明らかに彼のペースではなかったということだ。


 後半に入って柏木陽介、本田圭佑が入り、相手のペースダウンもあいまって、日本の時間帯が長く続くことになったが、やはり香川らしさは影を潜めたまま。チームはオウンゴールと本田の得点で2−0と辛くも勝利を収めたものの、彼自身は本来の輝きを示すことなく、スタジアムの大きな期待にも応えられずに、東南アジアの地を去ることになってしまった。

模索が続く代表での戦い方

抜群のコンビネーションを見せるドルトムントとは違い、代表での香川は戦い方を模索し続けている
抜群のコンビネーションを見せるドルトムントとは違い、代表での香川は戦い方を模索し続けている【Bongarts/Getty Images】

「僕らひとりひとりがまだドルトムントの個々のレベルに達していないのが、正直なところ。ドルトムントの選手たちは個人能力がすごく高くて、1人でもマークをはがす能力があったり、フリーになったり、数的優位を作ったりすることができる。真司を代表で生かしきれないのは、僕ら周りの責任でもある。彼自身もギャップがあって難しいと思います」


 長友佑都は無言でミックスゾーンを通り過ぎた盟友の思いをこのように代弁した。確かにそれも、香川が代表で輝けない理由の1つかもしれない。


 例えば、カンボジア戦の前半38分。香川が岡崎慎司のポストプレーから前を向いてパスを受け、浮き球のパスを再び前線に出した場面があった。しかし、ボールは岡崎の頭を微妙に越え、ヘディングシュートには至らなかった。クラブで日頃、コンビを組んでいるピエール・エメリク・オーバメヤンが前にいれば、ちょうど良い感覚でヘッドを決めていたと思わせるパスだった。


 やはり彼は、一瞬一瞬の判断を下す際、どこかで「ドルトムント基準」に合わせてしまう部分があるのではないか。代表は活動時間が短いから、そこまで熟成したコンビネーションは構築しにくい。「お互いが生かし、生かされる」という香川の理想形に近づけにくい環境があるのは、事実だろう。


「個の力という部分では、こっち(ドルトムント)はスピードや爆発力があるけれど、代表にはない。そこは考えないといけない。自分みたいな小柄な選手がフィジカルで勝つのはそう甘くないし、技術をもっと磨いていかないと。自信を持ってトライしていきたい」


 10月のシリア(3−0)、イラン(1−1)との2連戦を終えてドイツに戻った直後、香川もこう語っていた。最前線に頭抜けた迫力でゴールを量産できるアタッカーがいない状況下で、自分自身が代表でどんなプレーを選択しなければいけないか、どのポジションで何をするのがベストなのかを本人も長い間、模索し続けている。

元川悦子
元川悦子

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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