神宮で躍動した早大・茂木と立命大・桜井 ドラフト指名された2人の活躍を振り返る

高木遊
「秋の大学日本一」を争い行われた第46回明治神宮野球大会・大学の部は、亜細亜大が早稲田大を延長14回に及ぶ激闘の末に2対1と下して、2年ぶり5回目の優勝に輝いた。

 今秋のドラフト指名を受けた選手も多く出場した今大会。中でも早稲田大・茂木栄五郎内野手(東北楽天ドラフト3位)と立命館大・桜井俊貴投手(巨人ドラフト1位)が、自らの持ち味を発揮する際立った活躍を見せた。

対応力の高さを発揮した茂木

楽天ドラフト3位に指名された早稲田大学・茂木は高い対応力で初戦、準決勝と決勝タイムリー 【写真は共同】

「チャンスで打てなかったことが、こうした結果につながりました。チームに申し訳ないです」

「3番・サード」として全試合に出場し、早稲田大として史上初の春秋連覇まであと一歩と迫った茂木だったが、最後は亜細亜大に惜敗。茂木自身も8回1死一、二塁のチャンスで空振り三振に終わるなど、4打数無安打(2四球)と悔しい結果に終わった。

 だが、準々決勝と準決勝では決勝打となる先制タイムリーを放つなど、持ち味の勝負強い打撃でチームを決勝に導いた。初戦となった準々決勝・愛知大戦では、球速以上のキレを感じるストレートと、打ち気を絶妙に逸らす変化球を低めに集める左腕・中川誠也(中日育成ドラフト1位)に対し、それまでの3打席では内野安打1本に抑えられていた。しかし、7回2死満塁の場面では、「差し込まれないように、ポイントを前にしました」と修正し、初球のストレートを強振。左中間を破る走者一掃のタイムリー三塁打でチームに勢いをもたらした。

 また、今春の大学選手権準決勝と同カードとなった準決勝の上武大戦では、初回にリベンジに燃える相手の出鼻をくじく先制タイムリー。1ボールからのファーストストライクを打ち返した。

ソフトバンクの松田のような存在に

 この2打席に象徴されるように、茂木を語る上で欠かせないのが、その対応力の高さだ。

 入学直後にレギュラーをつかんで出場した1年春の全日本大学選手権では打率3割5分7厘、4年春の全日本大学選手権では打率6割1分5厘、2本塁打8打点で最高殊勲選手と首位打者に輝いた。今大会も安打自体は3本だが4打点と勝負強さを見せた。また、侍ジャパン大学日本代表として出場した今夏のユニバーシアードでも、打率4割6分2厘、4試合4打点とチームを引っ張り、大学日本代表として史上初の金メダル獲得に貢献した。

 全国大会や国際大会では当然、初顔合わせの相手が多くなるが、「初球から強く振る」ということを常に心がけ、「どんな球筋かをイメージしますが、あくまで打席で感じた印象を参考にします」と、球種などにヤマは張らないという。そして、甘い球が来ようものなら一発で仕留める。

 こうした姿勢や能力は、プロでも大いに期待が持てる。

「最も期待するのは、やはり打撃ですね。積極的で勝負強い。またガッツもあるので、松田宣浩(福岡ソフトバンク)のようにチームを盛り立てる存在にもなって欲しいですね」
 そう話すのは、担当の楽天・沖原佳典スカウトだ。

「1軍で1年間戦える強い体を作る」

 今大会から打席に立った際に叫ぶルーティンはやめたが、秘めている並々ならぬ闘志は日々の取り組みから表れている。侍ジャパン大学日本代表で行動をともにした青山学院大・吉田正尚(オリックスドラフト1位)が「茂木はストイックですし、理論を持ちながらも、感覚も大事にしていたりして、頭がいいなと思います」と舌を巻くなど、野球に対する向上心の高さは、周囲の人間が口をそろえる。

 しかし、自らの信念を強く持つ一方で、柔軟に他選手の良いところも自らに落とし込んでいる。今大会は準々決勝と決勝が雨天に見舞われたが、処理をひとつ間違えば、それが致命傷となりかねないピンチでの打球も落ち着いて捕球、送球をスムーズに行った。これはユニバーシアードでの国学院大・柴田竜拓遊撃手(横浜DeNAドラフト3位)の取り組みを参考にしたことも要因のひとつだという。
「柴田は、このような雨が降っていた試合の時は、試合前のノックで捕球や送球をする際に、入念に芝の状態を確かめていたので、そうしたことも参考にしていました」

 自身3度目の大学日本一は惜しくも逃したが、「1球に対する執着心を学ぶことができました。まずは1軍で1年間戦えるように強い体を作っていきたいです」と話し、この悔しさを糧にしたプロでの活躍を誓った。

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著者プロフィール

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

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