侍ジャパン、5連勝で首位通過も… 一発勝負の前に見えた投打の不安

中島大輔

4番に座る中村剛也だが、グループリーグでは打率1割5分8厘と調子を落としている 【Getty Images】

「世界野球プレミア12」で初代王者を目指す侍ジャパンは、15日のベネズエラ戦で9回サヨナラ勝ちを飾り、無傷の5連勝でグループB首位通過を果たした。

 グループリーグでは一発勝負になる準々決勝以降の戦いを見据え、投打でチームの形を固めてきた印象だ。1試合を残して準々決勝進出を決めた14日の米国戦後、小久保裕紀監督は会見でこう話している。

「照準は準々決勝。負けたら終わりなので、そこに向けて投手起用を決めてきたかなというのは言えます。打線は状態の良い選手が多いので心配はしていなかったんですけど、中田(翔)が非常にこの大会でキーマンになっていますので、残り試合もいい活躍を期待します」

 グループリーグ5試合を戦いながら攻守でチームの形が決まり、勝利を重ねることでチームの雰囲気も高まっている。ただし、一発勝負ではわずかなほころびから足をすくわれかねない。そうした戦いを前に、投打の主軸に不安材料があるのは事実だ。

不振・中村剛も稲葉コーチは「いままで通り」

 打線は全5試合で3番から6番を動かさなかったように、中心メンバーが当初から固まっていた。3番に山田哲人、4番に中村剛也を据えて、5番は右打者を続けないために筒香嘉智で、6番に中田翔。「楽な気持ちで打てている」と口をそろえる筒香、中田が好調を維持している一方、気になるのが中村剛の状態だ。

 韓国戦こそ5打数2安打だったが、以降の4試合は14打数1安打と沈黙している。ベネズエラ戦は1打席目のショートゴロ、2打席目のピッチャーゴロ、ともに完全にタイミングが合わず、弱い打球で打ち取られた。なかなか打球が上がらず、シーズン中の悪い状態に似ているのだ。ベネズエラ戦では第3打席に代打を送られたほどだった。

 ただし、それでも稲葉篤紀打撃コーチは“4番・中村効果”を指摘する。
「打てないより打ったほうがいいんですけど、彼が4番でどっかり座ってくれれば、周りがそれで良い方向に行っていますので。打ってほしいですけど、いままで通り(4番で)やらせてあげればいいと思います」

 中村が結果を残せていない一方、稲葉コーチの言うように5番・筒香、6番・中田がポイントゲッターになっているのも事実だ。さらに、出塁率が5割を超える3番・山田の働きも見逃せない。

 稲葉コーチが続ける。
「フォアボールをきっちり得られたり、我慢するところを我慢したり、3番としてすごくいい役割をしている。そのほかではおかわり君(中村剛)がダメでも、(ベネズエラ戦では)筒香が低めの球を我慢して、次につなげようというのがあった。チームの中で『俺が、俺が』ではなく、『次に回そう』と出ている感じがする」

 おそらく準々決勝のプエルトリコ戦では打順をいじらず、これまで通りのオーダーで臨むことになるだろう。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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