谷佳知を自然と変えた「夜中の素振り」 緊張を楽しめた現役生活を振り返る
オリックス復帰で意識した「恩返し」
10月3日の引退試合ではこれまで築き上げた谷の人望が表れた 【写真=BBM】
――通算2000安打まで残り72本での現役引退。会見で「惜しいとは思っていない」と語っていましたが、その思いは今も変わっていないですか?
変わっていないですね。残り72本は代打だけでは難しい。あと1、2年はかかるなと思っていました。1軍にいて、あと30本とかだったら、来年もがんばろうと思っていたでしょうけど、そもそもプロで19年もやれると思っていなかったので。4、5年できればいい、レギュラーになれればいいと思っていたくらい。ケガもしましたけど、なんとかここまでやってこられた。満足している部分もあります。
――やり切った思いが強い。
そうですね。だから、これからは後輩たちに教えないといけない。自分の考えだけじゃなくて、人の意見も取り入れながら。人それぞれ打撃理論は違うと思うので、自分の理論で教えるのではなくて、その人に合った教え方をしないといけない。今度は、そういう悩みが増えてくると思いますね。
――いずれは指導者として現場復帰する思いがあるということですね。
はい。プロ、アマチュア問わず。今までは自分のことばかり考えていましたが、これからは選手に応じて考えていきたい。プロだけではなくて、アマチュアも含めて。野球界の底上げに貢献したいと思っています。
――今季は2軍で武田健吾選手に指導する姿も見られました。
教えましたね。バットが外から出るので、内から出すことをキャンプのときから言っていました。外から出ると変化球についていけないですし、キレのあるボールに対応できないですから。あとはスイングスピードが遅いから、速くなるよう教えました。今年は成長しきれなかったですけど、バットが内から出るようになったので、これから成長してくれると期待しています。
――指導する意識が芽生えたのは、いつごろからですか?
巨人時代はなかったですね。オリックスに復帰したときからですかね。後輩への指導も含めて、「恩返し」と思って戻ってきたというのもあるので。だから教えていかないといけないなと思ってました。
――そんな谷さんの人望が表れていたのが引退試合でした。
チームが盛り上げてくれて、僕のために勝つ、というのを肌で感じました。先発した西(勇輝)もすごい投球をしていて、ノーヒットノーランするんじゃないか、と思ったし、2番手で金子(千尋)も投げると聞いてビックリした。本当に感謝していますし、とてもうれしかったです。
――谷さんが指導者として現場復帰することをファンの皆さんは期待していると思います。最後にファンの皆さんにメッセージを。
皆さんに支えられて、ここまでこられたと思っています。本当に声援が力に変わり、勇気をもらって打席に立てました。これからは、どういう形になるか分かりませんが、いずれは指導者として帰ってきたいと思っているので、そのときはまた応援していただければうれしいです。
<取材・構成=鶴田成秀(BBM)>