6番・中田が見せつけた勝負強さ 「楽な気持ち」で3安打5打点

中島大輔

同点に追いつかれた直後の9回裏、中田のサヨナラ打でメキシコに競り勝った 【Getty Images】

 バックスクリーンをはさんで両翼フェンス外に掲げられた出場12カ国の国旗が、試合中ずっと揺らめいていた。山々に囲まれた天母棒球場は、千葉ロッテの本拠地QVCマリンフィールドのように強い風が吹き込んでくる。
 データの少ないチーム同士の対戦で、環境的に難しいからミスや失投が起こりやすい。日本が12安打、メキシコが13安打と乱打戦となったのは、ある意味で必然のことだった。

 そんな一戦を勝利に導いたのが、侍ジャパンの元4番打者・中田翔だ。試合後、小久保裕紀監督はこうたたえている。
「今日は中田に始まって、最後はサヨナラヒットを打ってくれました。このシリーズに入ってからいい状態で、今日はそのまま結果につながったと思います」

先輩に4番の座を譲り…

「世界野球プレミア12」に臨んでいる侍ジャパン代表で、最も注目されたひとつが4番争いだ。初戦の韓国戦からそのポジションに座るのは、初めて日本代表として参戦している中村剛也。指揮官は中村の招集を決めた直後から、4番で起用することを決めていたという。

 それが中田にとって、ここまでは奏効している格好だ。5番に筒香嘉智をはさみ、6番に座る中田は韓国戦で2安打を放ったのに続き、この日のメキシコ戦では3安打、5打点の大爆発を見せた。

「(中村が4番にいることで)正直、楽な気持ちはありますし。それ以上に前と後ろにすごいバッターがたくさんいますので。そういう意味でも、楽に立てているかなと思います」
 本心かはわからない。小久保監督が就任して以来、4番を任されてきた自負があるはずだ。いくら大阪桐蔭高の先輩が代表入りしたからといって、やすやすとポジションを譲り渡す気はなかっただろう。

 だがメキシコ戦後、稲葉篤紀打撃コーチは“中村効果”を口にした。

「中村が4番に座ることによって中田まで機能させました」

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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