UFC正式契約を獲得――石原夜叉坊インタビュー「『ROAD TO UFC:JAPAN』でホンマ成長できた」

WOWOW

「UFC193 in オーストラリア」で初のテレビ解説に挑戦

『ROAD TO UFC:JAPAN』でUFCとの正式契約を勝ち取った石原夜叉坊 【(C)Photo Courtesy of UFC】

“日本版TUF”と呼ばれた『ROAD TO UFC:JAPAN』では、オクタゴン内外で主役級の活躍を見せ、9.27さいたまスーパーアリーナ「UFC JAPAN 2015」での決勝戦でも、廣田瑞人を相手に激闘を展開した石原夜叉坊。決勝戦はドローとなったが、見事にUFCとの正式契約を勝ち取り、新たなスーパースター候補として、その期待は高まる一方だ。
 11月15日に開催される「UFC193 in オーストラリア」では、WOWOWライブ生中継(15日12:00〜)のゲストとして出演することも決定した夜叉坊に、あらためて『ROAD TO UFC:JAPAN』トーナメントと、今後について聞いた。

UFCと契約したんで何年かはアスリートしてもいいかな

決勝戦はドローとなったが廣田瑞人を相手に激闘を展開 【花田裕次郎】

――もう9.27「UFC JAPAN 2015」さいまたスーパーアリーナでの『ROAD TO UFC:JAPAN』決勝前から、いろんな反響はすでにありましたか?

 ありましたけど、やっぱりさいたまの試合後ですね。あの試合で、「けっこうやるんや」みたいになって。そこで周りの見方が変わりましたね。それまでは口先行で、しょうもない試合してたんですけど、決勝でちょっと本気見せられたかなって。ただもう、ボクはあんなもんじゃないんですよ。そろそろちゃんと練習して、それを見せようと思ってるんですけど。

――決勝の廣田瑞人戦は素晴らしい試合でしたけど、あんなもんじゃない、と。

 ボク、試合の1カ月前までホンマ練習してなかったですからね。それで1カ月切ったぐらいになって、のりピー(田中路教)に、「ここまで、このトーナメントでずっとお前を見てきたけど、いまの夜叉坊が一番最悪の状態だぞ。何を気ぃ抜いてるのか知らねえけど、このままじゃ勝てねえし、いまから頑張っても、俺は勝つのは難しいと思うよ」って言われたんすよ。もうメッチャ怒られて。そこから気持ち切り替えて、「やらなあかん」と思って、頑張ったんすけど。だから、あの3ラウンドの見事な失速ぶりは、それが原因っすね(笑)。

――試合の1カ月前まで遊んでたツキが3ラウンドに来た(笑)。

 ちゃんと前から練習してたら、最後まで動けたと思うんすけど。ちょっと始めるのが遅かったっすね。だから、これでUFC行くことになったんで、何年かぐらいはアスリートしてもいいかなって、思ってるんすよ。本気の夜叉坊がどれだけできるか。“やればできる子”やってことを、ちょっと見しときたいですね。

――これまでは、追い込んで試合して、しばらくずっと遊んで、また試合前に追い込んで、終わったらずっと遊んでの繰り返しだったわけですか。

 繰り返しなんすけど、ちょっと追い込んで、めっちゃ遊んでだったんで。

――追い込み期間より、遊び期間のほうがずっと長いという(笑)。

 そうなんすよ。だから、その割合をちょっとだけ変えようかなって。これまでは試合後、1カ月半はジムに現れなかったっすからね(笑)。もう遊び以外は、音信不通になるんで。だから、ちょっと頑張っちゃおうかなって。

――でも、野球やってた頃は、野球漬けの毎日だったわけですよね?

 ずっと野球ばっかっすよ。学校の敷地内に寮があって、その学校も山の上にあるから、学校から出られないんすよ。もう地獄でしたよ、マジで。

――逃げ場がない状態だったんですね。

 その頃のスタミナ練習の貯金で、ここまでやってきた感じもあるんですけど、その貯金も底を尽きてきて、スタミナなくなってきたんで。また、ちょっとやらなあかんなって。

――じゃあ、野球辞めたあと、ずっと遊んでて。格闘技を始めてからは、ちょっと追い込んで、また遊んでという生活だったわけですか。

 だから1年の半分は無駄にしてたんすよね。ちょっとその割合を変えて、3分の1遊びとかに変えたら、ホンマ強くなるんちゃうかなって。ボク、伸びしろしかないんで。

――その片鱗は、確実に決勝戦で見せていましたよね。

 ただあれも、のりピーがボクに怒ってなかったら、無様な負け方をしてたと思うんすよね。

――ある意味、決勝戦に出られるという時点で、半分目的達成みたいな気持ちだったわけですか?

 それはありましたね。負けても、面白い試合はできるやろうし、大舞台でできるんで、まいっかって思ってたんすけど。「それじゃ、あかんやろ!」って、いいお兄ちゃんがおったおかげっすよ。

入場時や試合中の大歓声、気持ち良すぎでしょう!

試合中の大歓声に「ホンマ最高! マジで。気持ち良すぎでしょう!」と感動 【花田裕次郎】

――では、あらためて廣田瑞人選手との決勝戦を振り返ってみて、いかがですか?

 人生で一番しんどい試合でしたね。ホンマ、自分の中で一番の激闘でした。しかも、5月からトーナメントやって、4〜5カ月で3試合やったんで、もういまは、身体が練習することを拒んでますね(苦笑)。

――それぐらい、出し切ったわけですね。

 完全にボクにスポットライトが当たってるって勝手に思ってたんで。それで頑張れたんかな。

――入場時や試合中、大歓声があがってたのはわかりました?

 最高でしたよ! ホンマ最高! マジで。気持ち良すぎでしょう! なんなんすか、あれ?

――プロ格闘家は、あれを一度体験しちゃうと、やめられないという。

 そうっすよ。あれはもう、ヤバいっす。いっぱい格闘家がいる中で、あれを感じられるのは一握りだと思うんすよ。ボクがそのひとりになれたっていうのは、幸せですね。

――『ROAD TO UFC:JAPAN』は、最初から「自分が主役だ」っていう意識で臨んだわけですか?

 そうっすね。主役でしたでしょ? 最初っから。でも、1話目とか観たら、「ヤバい。咬ませ犬感、ハンパなく出てるわ」思って(笑)。

――大口叩いて、アッサリ負けるキャラに見えた(笑)。

「この位置、ヤバいかもな」って思ってたんすけど、うまいこといきましたね。ホンマに成長できましたね、あの(トーナメントの)3試合で。マジで神様が一個一個、自分に課題を与えてくれた感じっすね。まったく違うタイプを3人当てられて。最後はボクが一番得意なタイプが相手でしたから。最高でしたね。

――準決勝までの勝ち方も、調子に乗れない勝ち方というか、勝って兜の緒を締めずにはいられない勝ち方だったのが良かったのかもしれないですね(笑)。

 ホントっすよ。逆にコスい勝ち方で、ギリギリで上がれたのが良かったっすね。あれで気が抜けなかったし、一生懸命やれたんで。

――ああいう番組に出た、約4カ月間の生活というのは、どうでした?

 向こうでの撮影はしんどかったですね。縛られるのが嫌なタイプなんで。全部細かいスケジュールが決められてて、自由がなかったんで、精神的に大変でした。

UFC参戦が決まり、こっからが修羅の国っすね

――コーチのジョシュ・バーネットはいかがでした?

 ジョシュはテレビのとおり、めっちゃいい人でしたね。あれはテレビ用のジョシュというわけじゃなくて、プライベートでもジョシュの家に泊まらせてもらって、練習行かせてもらって、面倒見てもらって。あのまんま、めっちゃやさしくて。なんか、日本人より日本人というか。いい男っす。

――準決勝のあと、ジョシュの家に一泊するシーンがありましたけど、それ以降も泊めてもらったり、一緒に練習したりっていうことがあったわけですね。

 そうなんです。完全にプライベートで、のりピーと一緒にジョシュの家に住まわせてもらって。ジョシュ・バーネットの家に泊まるって、なかなかないことっすよ。なんやねんこれって。考えられないことっすよね。

――さいたまで試合が終わったあと、ジョシュと言葉を交わしたりとかは?

 ありました。軽くっすけどね。ボク、試合後はすぐ病院に行ってしまったんで。ジョシュとご飯行くみたいな話も、そのあともらったみたいなんすけど。ボク、病院行ったあと、女の子探しに遊びに出ちゃって(笑)。「やってもうた」って感じですよ。ボク、その当日も六本木で飲んでましたからね。もう顔ボコボコで。ホンマに病院行って、ホテル帰って、荷物まとめて自宅に帰ってすぐ六本木に行きました。

――あんなハードな殴り合いのあと、飲んじゃいましたか(笑)。

 ダメなことなんすよ。ホンマ「真似しないでください」って書いておいてください。でも、この日ばかりは我慢できなかったっすね(笑)。朝まで遊びました。ただ、その後でジョシュには北斗の拳のちょっと値が張るフィギュアとか、ええもん渡すことはできたんで。

――でも、これでUFCと正式契約を結んで、ここからが本当の勝負ですよね?

 こっから修羅の国っすよね。それを考えると、ヘコんできますよ(苦笑)。

――これまで以上に大変だということを考えると(笑)。次の試合は、いつ頃になりそうなんですか?

 1月終わりか2月になりそうだということは聞いてるんですけど。嫌やな〜と思って。でも、そう言いながら、やるときはやるんで、見とってください。

――『ROAD TO UFC:JAPAN』にはフェザー級で出ましたけど、もともとはバンタム級ですよね。階級はどう考えてますか?

 いやあ、フェザーでって言ってたんですけど、いま体重70kg切ってて、全然バンタムいけるやん、余裕やんって思ったんすけど。またちゃんと本格的な練習再開して、メシとかもちゃんと食べるようになったら(体重が)増えるんかなと思って。とりあえず12月はじめまで練習して、そんときの体重で決めようかなと思ってるんすけど。バンタムに落としても、動かれへんようになったらしょうがないんで。

――持ち前のスピードが活かせなかったら、意味がないですもんね。

 そうなんすよ。そこらへんは、ノリで決めます!

――試合に向けての練習は、またアメリカに行くことも考えてるんですか?

 いや、次の試合が終わったら行こうかなって考えてるんすけど、いまは日本でやっていこうと思ってます。

――いま、日本での練習のベースはどこなんですか?

 クレイジービーと、(和術慧舟會)HEARTSですね。超しんどいっす。今週あたりから、ちょいちょい始めるつもりなんすけど、嫌やなあ。ホンマ嫌や。まあ、がんばります……。

――いきなり、元気なくなりましたね(笑)。

 いや、みんなが思ってる以上に、ボク練習でやられますからね。だから、ホンマに嫌なんすよ。基本的にボコられる一方なんで。そりゃ、嫌でしょ。強くないボクが悪いんすけど、周りが強すぎるんで。

――クレイジービーもHEARTSも、堀口恭司選手や水垣偉弥選手をはじめ練習メンバーはすごい人が揃ってますもんね。

 練習場所変えたくなりますもん(苦笑)。ホンマ、すごいメンバーが揃ってるんで。

――環境がよすぎると(笑)。

 ハァー(ため息ついて)。……ちょっと話題変えましょう。練習のこと考え出すと、本気で落ち込むんで(笑)。

ゲスト解説、ホンマにボクでいいんすか?

「格闘技のことはしゃべれなくても女の子については語れる」と女子王座戦の解説にテンションの上がる夜叉坊 【(C)Photo Courtesy of UFC】

――では、話を変えます!(笑)。(日本時間の)11月15日に開催される「UFC193 in オーストラリア」では、WOWOWのゲスト解説を務めることが決まりましたが、こういったテレビの解説は初めてですか?

 初めてっすよ! ホンマ、ボクに格闘技のこと聞いていいんかな?と思って(笑)。選手の名前とか知らないっすからね。(一緒に練習やった)チーム・アルファメールの連中ぐらいっすからね。

――前から言ってましたよね。「格闘技に関しては自分にしか興味がない」って(笑)。

 ホンマそうなんすよ。だからこれ、最終確認なんですけど、ホンマにボクでいいんすか?

――大丈夫だと思います! ……たぶん(笑)。

 ボクでいいということは、何を言ってもいいってことですよね?まあ、ノリでいこうと思うんで。

――どうですか、当日はロンダ・ラウジーvs.ホーリー・ホルムの女子バンタム級タイトルマッチのがメインイベントですけど。

 女子の試合が二つ、メインとセミなんですよね? そこはボクにとって好都合ですね。格闘技のことはしゃべれなくても、女の子については語れるんで。

――女性については、俺に任せろ、と(笑)。

 そうですね。だから女性の試合が始まって、ようやくエンジンかかり始まるかもしれない。それまで、すごい静かにしてるかもしれないですけど、いきなりテンション上がるんで。その切り替わりも楽しみにしててほしいです。

――ロンダは女性として、いかがですか?

 いいっすね。色気ありつつ、勝ったあとの笑顔っすよね。あれはズキューンと来ますよ。

――『ROAD TO UFC:JAPAN』の1回戦では、ミーシャ・テイトが観戦に来てましたよね?

 いや〜、ハンパなかった。「俺、おまえのこと好きや!」って日本語で言いましたからね。焦りすぎて(笑)。

――そんな告白をいつの間にかしてましたか(笑)。

 ホンマ試合の直前に、控え室に激励に来てくれたんすけど、テンパりすぎて「俺、おまえのこと好きやねん!」っつって。そしたらジョシュに「アトデ、アトデ」って制せられて(笑)。

――試合直前に何をしてるんですか(笑)。

 いやあ、あれでテンション上がりましたね。すごいっすよ、あの身体。だから試合後、他の試合見るとき、ミーシャの斜め後ろに座りましたからね。試合観るふりをして、ずーっとミーシャの身体を至近距離から眺めてましたから(笑)。

――では、当日はそういった夜叉坊らしい、発言も期待してますよ(笑)。

 まあ、視聴者の皆さんには、夜叉坊が何を放り込んでくるか楽しみにしてもらって、WOWOWのスタッフさんには、ちょっとスリルを味わってほしいっす(笑)。

(取材・文:堀江ガンツ/WOWOW UFC解説者)

■詳しくはUFC 番組オフィシャルサイト(wowow.co.jp/ufc)へアクセス!
http://www.wowow.co.jp/sports/ufc/

◆◆◆ WOWOW番組情報(PR)◆◆◆

★「生中継!UFC−究極格闘技− UFC193 in オーストラリア 女王ロンダ・ラウジー&マーク・ハント!」
女王ロンダ・ラウジーが元ボクシングチャンピオン、ホーリー・ホルムと対決するオーストラリア大会を放送!地元出場のマーク・ハントはアントニオ・シウバと激突!
【放送日】11月15日(日)午後0:00〜[WOWOWライブ]※生中継
ゲスト:石原夜叉坊(UFCファイター)

<主な対戦カード>
女子バンタム級タイトルマッチ
ロンダ・ラウジーvs.ホーリー・ホルム
女子ストロー級タイトルマッチ:ヨアナ・イェンジェイチックvs.ヴァレリー・レターノー
ヘビー級:マーク・ハントvs.アントニオ・シウバ
ミドル級:ユライア・ホールvs.ロバート・ウィテカー

★「生中継!UFC−究極格闘技− UFC in ソウル 元王者ベンヘン&秋山成勲 参戦!」
韓国初のUFC大会、UFC in ソウルを放送。メインは2012年のUFC JAPANで王者となったベンソン・ヘンダーソン。秋山成勲、キム・ドンヒョンも参戦!
【放送日】11月29日(日)午後5:30〜[WOWOWライブ]
11月28日(土)夜10:00頃〜[WOWOWメンバーズオンデマンド]※先行ライブ配信
<主な対戦カード>
ウェルター級:ベンソン・ヘンダーソン × ティアゴ・アウベス
ウェルター級:キム・ドンヒョン × ホルヘ・マスヴィダル
ウェルター級:秋山成勲 × アルベルト・ミナ
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