「プロレスはエンタメの最高峰」の真意 南キャン山ちゃん デビュー心境語る[後編]
知らないふりをする美学
分かっていても、目の前のものを受け入れて知らないふりをする美学。それがプロレスファンには備わっている 【前島康人】
やっぱりあの目線、ファンの方々の目線というのはすごいと思いますよ。僕は一番感じたのは、(2014年の両国大会の時)ディーノが急に体調が悪くなって、僕がディーノとしてリングに上がった時、その途中、相手のスーパー・ササダンゴ・マシンが気づくまで、それこそマスクもつけていないし、このまんまの赤メガネで出ていますけど、途中まで会場の1万人は、僕のことを「ディーノ」と呼んでくれましたからね。そのあたりのかっこよさですよね。
今の人たちって、テレビで言うと、「いやいや、山里じゃん!」って言っちゃう人がいると思うんですよ。「なんで山里なのに、ディーノって言ってんの?」と。それって、お笑いのセンスがあるかないかで言うと、めちゃめちゃないのに、めっちゃお笑いセンスがあるかのような顔をしているでしょ? そういうところで、プロレスを見に来て「お前らの無力さを知れ」と。「台本があるんでしょ?」って言ってしまうような奴らに対して、プロレスファンはそのかっこよさ、美学があるから好きなんですよね。
――ここまでの話を聞いていると、テレビ視聴者に対する提言になりそうですね。
本当に、そう思いますよ。僕が出演している番組に対し、「あれ台本あるんでしょ?」って言っちゃうような奴らって、本当にかわいそうに思いますよ。実際にないのに、それをあると思って見ちゃうより、ないと思っていた方がすごく楽しくない?と。
まあ下世話な話で言うと、素人物のアダルトビデオだって、「絶対これセクシー女優だよ!」って見るよりも、それをこっちの協力で「なんで、この大学生出ちゃうの?」って思って見ている方がめっちゃ興奮するじゃんと。
――そうですね。「どうしてそんな怪しい車に乗っちゃうの?」と真に受けた方がいいよと……
そうそう、そうなんです! なんでこのマジックミラー、明らかにおかしいじゃんって(笑)。この車に「なんで乗っちゃうの? 絶対無理だろ」と思っている方が、興奮するってね。知的レベルは確実にこっちの方が高いんじゃないですか?
――いろいろなことを分かった上で楽しんでいると。
そこですよね。かっこいいのは。今一番かっこいい人間というのは。
プロレスはプロレスラーのもの
リングに上がるのは「最初で最後です!」と強調する山里さん。やはり山里さんのフィールドはお笑いの中でしかない! 【スポーツナビ】
最近、ニュースで『南海キャンディーズ復活』って言われるから、いよいよ本腰ですねって言われるけど、別に今までも解散してないし、昔と今も何にも変わってないですよ(笑)。まあ仕事の形が変わって、みんなが美談にしてくれているから、今は乗っとこうと思っていますが。お笑いで関わっているなら頑張って、ライブもやっていければと思っています。
僕はありがたいことに、お笑い芸人をやらせていただいて、言っても今回は向こう(プロレス)の本拠地に行くわけですから、負けて当然、勝ったらラッキー。そういう風にハードルを下げて、『下から関節』を狙っていきますよ。
――では、リングに上がるのは、これが最初で最後?
これに関してははっきり言わせてください。今言っておくべきだと思うのですが、最初で最後です!
ほかの芸能人の方をけなすという意味では毛頭ないですけど、僕はやっぱり、プロレスはプロレスラーのものだと思うんです。ファンの人たちもその方がうれしいと思います。ファンの皆さんがやさしいから、僕を受け入れてくれようとしているけど、その1試合は絶対、僕のところにプロレスラーがいた方が面白かったってなると思うんですよ。その後悔をさせたくないし、僕の大好きな団体のレベル向上を妨げたくないから、これが最初で最後です。DDTのリングに上がることは、大阪を最後にないです。終わったら、ディーノには言うつもりです。
――なるほど。固い決意があるのですね。ではほかの団体はどうですか? 年末には格闘技のイベントがあったりします。今年はヒョードル選手の復活などで話題になっていますが?
大喜利だったらやってやりますよ(笑)。
でもヒョードルだと、何を言ってもうけると思いますが……。ペンを持っているだけでもうけそうで、ちょっと怖いですね。ただまあ、大喜利勝負だったら受けて立ちますよと、ヒョードル側に言っておいて下さい(笑)。大喜利か漫才、漫才でやれるなら、ピーター・アーツあたりと組んでやってこいと(笑)。
――やはりお笑いでしか戦わないという固い決意があるということですね。それでは最後に、試合への意気込みをお願いします。
DDT11.28、吉本の看板を背負っているので、大阪の地にまた戻るためにも、松竹芸能さんを完膚なきまでに叩きのめしたいと思います。
(取材・文:尾柴広紀/スポーツナビ)