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W杯と同じくらい厳しい大会
FC今治が挑む地域決勝とは?

狭く厳しいJFLへの道

昨年の地域決勝で優勝し、JFL昇格を決めた奈良クラブ。厳しい大会を勝ち抜いた選手たちは喜びを爆発させた
昨年の地域決勝で優勝し、JFL昇格を決めた奈良クラブ。厳しい大会を勝ち抜いた選手たちは喜びを爆発させた【宇都宮徹壱】

 11月6日から開幕する、全国地域サッカーリーグ決勝大会(以下、地域決勝)の取材のために愛媛にやってきた。全国9つの地域リーグのチャンピオンに、岩手県で開催された全社(全国社会人サッカー選手権大会)の上位3チームを加えた合計12チームでJFL昇格を争う地域決勝。39回目となる今大会は、1次ラウンドが11月6日から8日まで、決勝ラウンドが11月21日から23日まで、それぞれ行われる。先に発表された組み合わせと会場は以下のとおり。


Aグループ@中津総合運動場サッカー場(大分)

新日鐵住金大分(九州)、バンディオンセ加古川(関西/全社枠)、ブリオベッカ浦安(関東)、札幌蹴球団(北海道)


Bグループ@島根県立浜山公園陸上競技場(島根)

ラインメール青森FC(東北/全社枠)、松江シティFC(中国)、FC刈谷(東海)、FCガンジュ岩手(東北)


Cグループ:愛媛県総合運動公園球技場(愛媛)

サウルコス福井(北信越)、アルテリーヴォ和歌山(関西)、阪南大クラブ(関西/全社枠)、FC今治(四国)


 この1次ラウンドを勝ち抜いた4チーム(各グループ1位と各グループ2位の中で最も成績の良い1チーム)が、高知県立春野総合運動公園陸上競技場で開催される決勝ラウンドに進出。決勝ラウンドでの上位2チームが、ひとつ上のカテゴリーであるJFLに昇格できる。各地域リーグや全社を勝ち抜いた12チーム中、昇格できるのはわずかに2チーム。地域リーグからJFLへの道は、それだけ狭く厳しい。本稿では、FC今治が組み込まれたCグループを展望することにしたい。

侮り難いCグループのライバルたち

地域決勝の常連、サウルコス福井。昨年は初めて決勝ラウンドに進出したものの、1勝もできずに涙をのんだ
地域決勝の常連、サウルコス福井。昨年は初めて決勝ラウンドに進出したものの、1勝もできずに涙をのんだ【宇都宮徹壱】

 JFL昇格を今季の最大の目標としている今治にとり、愛媛で行われる1次ラウンドは最初の難関である。ここを突破できなければ、来季も引き続き四国リーグで活動することになるだけに、チームにかかる重圧は尋常ではない。そして同組となった3チームは、いずれも侮り難い相手ばかり。まずは、それぞれの対戦相手を紹介することにしたい。


 サウルコス福井は、4シーズン連続で北信越リーグを制してきた地域決勝の常連。12年は1次ラウンドの最下位に終わったものの、13年にはグループ2位、そして14年には首位突破を果たして初めて悲願の決勝ラウンド進出を果たした。結果として、奈良クラブ、FC大阪、クラブ・ドラゴンズの後塵を拝し(2敗1PK負け)、JFL昇格の夢はついえてしまった。今年の全社では、1回戦で今治に逆転負けを喫したものの(2−3)、4チームの中では最も地域決勝の経験値が高いのが強み。ちなみに13年の地域決勝では、1次ラウンドで今治に2−1で勝利している。


 アルテリーヴォ和歌山は、今季の関西リーグのチャンピオン。いわゆる「権利持ち」だったにもかかわらず、今年の全社では札幌蹴球団やFC刈谷といった地域決勝出場チームを次々と打ち破り、見事に初優勝を果たした。しかもこの大会では、8人のレギュラー選手が仕事やケガなどで出場できず、ほとんど1軍半のメンバーで5試合を戦い抜いた。全社で得た自信と経験、そしてレギュラー組が復帰することでのチーム内競争は、和歌山のポテンシャルをさらに引き上げることだろう。彼らに不安材料があるとすれば、今大会が初出場であることくらいか。


 阪南大クラブは、関西大学サッカー界の雄である阪南大サッカー部のセカンドチーム。今季の関西リーグでは、8チーム中6位と振るわなかったが、学生チームならではの勢いと回復力を武器に、今年の全社では旋風を巻き起こした(結果は準優勝)。Jクラブユースの出身者も多く、セットプレーのキッカーを3人擁する。和歌山と同様、地域決勝は今回が初めてとなるが、前回大会では流通経済大学サッカー部の3軍に当たるクラブ・ドラゴンズが見事JFL昇格を果たした。阪南大クがこれに続く可能性は十分にあり得よう。

厳しい立場の今治に勝機はあるのか?

今年の全社では、まさかの2回戦敗退となったFC今治。JFL昇格を果たすために、負けられない戦いが続く
今年の全社では、まさかの2回戦敗退となったFC今治。JFL昇格を果たすために、負けられない戦いが続く【宇都宮徹壱】

 これら3チームに対して、今治はどれだけアドバンテージがあるのだろうか。率直に言えば、不安要素のほうが多いように感じられてならない。以前のコラムでも指摘したことだが、先の全社では2回戦敗退となったため、3連戦のシミュレーションや異なるタイプとの真剣勝負ができなかったことは非常に痛い。地域決勝という大会に出場するのは2年ぶりだが、当時とはメンバーも体制も大きく変わっているため、大会の経験値という面でもいささか心もとない。山田卓也や市川大祐といった、元日本代表のキャリアを持つベテランたちも、さすがに3日間フル稼働で働いてもらうのは厳しいだろう(全社では2人ともけがで参加していなかった)。「ホームで試合ができる」という見方もあるが、松山と今治は距離がある上に、それほど大規模な応援も期待できない。


 ここで注目したいのが、今治の対戦順である。1日目は阪南大ク、2日目は和歌山、3日目は福井。全社で5試合を戦った阪南大クと和歌山については、当然ながらすべての試合をスカウティングして、すでに分析を終えていることだろう。また阪南大クについては、彼らの武器である「勢いと回復力」が初戦で発揮されるとは考えにくい。むしろ地域決勝特有の緊張感が、マイナス方向に働く可能性も十分に考えられる。山場となるのは、3日目の福井戦。全社の1回戦で対戦したばかりなので、当然ながらやりにくさはあるはずだ。ゆえに2日目終了時点で、どれだけ相手よりも優位に立てるかが重要になる。


 個人的には、地域決勝はワールドカップ(W杯)と同じくらい難しい大会だと考えている。今治の岡田武史オーナーが日本代表監督だった、2010年の南アフリカ大会に無理やり例えるならば、阪南大クはカメルーン、和歌山はオランダ、福井はデンマークというイメージか。ただし、負けられない大会が3日連続で続くという意味では、むしろW杯よりも厳しいといえるかもしれない。大会の入り方を間違えると、短期決戦ゆえに修正は極めて難しい。こうした大会の初戦の重要性は、何より岡田オーナーが熟知しているはずだ。もちろんオーナー自らが指揮を執るわけではないが、南アでの日本代表のように初戦に向けたスカウティングと準備がしっかりできていれば、ここまで書いてきた懸念はいずれも杞憂(きゆう)に終わるのかもしれない。いずれにせよ、この大会で彼らに求められるのは理念や話題や感動ではなく、結果のみ。地域決勝は、敗者には何も与えられない大会である。

宇都宮徹壱
宇都宮徹壱
1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著はスポーツナビでの連載をまとめた『J2&J3 フットボール漫遊記』(東邦出版)