衝撃のアマNo.1右腕・田中正義の1年=来年の大学最終年で完成形を目指す

高木遊

目立った修正力と充実した精神力

最速156キロを誇るストレートで来年のドラフト1位候補として評価が高い。しかし、田中は「まだ完成形には程遠い」とさらなる成長を誓う 【写真は共同】

 一方で「今日は変化球でも腕が振れて、特にフォークが低めに決められました」と話すように、前日は精度を欠いた変化球も1日でしっかり修正してきた。またピンチの場面での登板にも「こういう場面で抑えるために、いろいろなことを犠牲にして、野球に打ち込んできたんだという自負を持って投げました」と、これまでにはない強い意気込みを感じる言葉も口にした。

 リーグ戦中にも何度か「調子が悪いなりにもいい投球ができるようになった」ことを手応えに挙げることも幾度かあり、投手としての修正力や危機管理能力が、充実した精神力とともに上がっていることは間違いない。

「今日は連投で疲れもあった分、うまく力が抜けていましたね。昨日よりストレートも良かったですよ」
 関東地区大学野球選手権での敗退後、そう話したのは創価大の佐藤康弘投手コーチだ

 高校1年の秋に右肩を痛め、その後は主に外野手を務めていた田中だが、創価大のセレクション時に投手再転向を直訴。そのフォームを見てすぐに「筋力がないので、腕をたためずにうまくトップの位置を作ることができていない」と感じた佐藤コーチは、田中と二人三脚で「故障しないフォーム作り」にじっくり取り組んできた。

自己評価と周囲のギャップに戸惑い

 それだけに「まだまだ完成形には程遠い」というのが2人の共通認識だ。

「自己評価と周囲の評価のギャップに戸惑いがあります」と以前から口にしてきた田中は、この日の試合終了後も「まだ完成形には程遠く、50パーセントにも行っていないと思います。来年は今日の投球内容を最低ラインとしてやっていきたいです」と、いまだに納得はしていない。

 また、スカウト陣からは「変化球を投げる際に腕の振りが緩むので、簡単に当てられてしまう場面もある」との指摘も4日の試合時にあった(一方で、その状態でも抑えられていることも事実)。

「これからの1年で、プロ野球の1軍で活躍できるだけの力をつけたいです」とインタビューを締めた田中。アマチュア球界で圧倒的な投球を見せる逸材が、大学生活最後の年にどこまで成長を遂げるのか。ひと冬超えた田中正義が今から楽しみだ。

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著者プロフィール

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

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