衝撃のアマNo.1右腕・田中正義の1年=来年の大学最終年で完成形を目指す

高木遊

最速156キロでスポーツ紙の1面も

今秋の神宮大会出場をかけた関東地区代表決定戦の準決勝・上武大戦でリリーフ登板した田中。4回2/3、11奪三振の快投を見せたが、後一歩及ばずチームは敗れた 【撮影:高木遊】

 高校時代に甲子園出場はおろか、右肩の故障により投手ですらなかった男が今年、アマチュア球界にさまざまな話題をもたらし、大学3年目のシーズンを終えた。

 初回から9回までコンスタントに150キロ近いストレートを投げ、「来秋ドラフトの超目玉」と目される創価大の右腕・田中正義。今夏に行われたユニバーシアードでは、善波達也監督から大学日本代表のエースに任命され、NPB選抜と対戦した壮行試合ではプロの若手有望選手たちから7者連続三振を奪い、4回無安打無四球8奪三振。この快投がもたらす衝撃は大きく、翌日のスポーツ紙では1面を飾った。

 分かっていても打てない最速156キロのストレートに加え、大型(身長186センチ)でありながらコントロールも良く、四球が少ないことも大きな特長だ。プロ球団スカウトたちは「別格。この秋のドラフトでも1位ですよ」と、既に昨年から声をそろえており、中には「12球団が1位指名で競合するかもしれません」と話すスカウトもいるほどだ。

 さらに、今秋は東京新大学リーグで6戦全勝、46イニングを投げ無失点と、これまでの記録だった小川泰弘(当時・創価大/現東京ヤクルト)のシーズン最高防御率0.12も上回った。また、春の成績も合わせると12連勝、連続無失点は50イニングにまで伸びた。

 一方で、チームは全国でも上位進出を狙えるだけの戦力がそろっていたものの、田中の未登板時に敗れる、もしくは田中の登板前にリードを奪われる展開になり敗れるなどで、春秋と2季連続で全国大会出場を逃した。また、ユニバーシアードでは満を持しての先発予定だった決勝戦が雨天中止(日本と台湾の両チームが金メダル)に見舞われるなど、不運な1年でもあった。

4回2/3、11奪三振実らず…

「対策はしてきたのですが、全くダメでした。今日は本当にすごかったですね」
 横浜スタジアムで行われた関東地区大学野球選手権(明治神宮大会関東地区代表決定戦)の準決勝(11月5日)で、田中と対戦した上武大・谷口英規監督はチームの勝利にも苦笑いを浮かべた。

「今日は1点もやれないという状況からの登板だったので、いつも以上に気持ちが乗っていました」と田中が振り返るように、登板は3点ビハインドの5回1死三塁の場面から。だが、先頭打者にこそ死球を与えたものの、後続は連続三振に斬って取り、6回にも3者連続三振を奪った。前日4日の登板では9回1失点、10奪三振の完投。球数は151を数えたが、調子はこの日の方が良く、結果的には4回2/3を投げて前日を上回る11三振を奪い、1安打1四死球でチームに逆転を託した。

 しかし、チームは田中の好救援で作った流れを生かしきれず、2対3と一歩及ばず敗退。試合後に田中は「昨日が100球ほどで終わっていたら、今日も頭から(先発で)投げることができたはずです」と、悔しそうな表情を浮かべた。

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著者プロフィール

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

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