小久保監督が託した主将とリーダー 松田宣浩は侍ジャパンの太陽になる

田尻耕太郎

2013年秋の小久保監督就任後、常にキャプテンを任されている嶋。今大会もチームを引っ張り世界一を目指す 【Getty Images】

 11月2日、「世界野球プレミア12」で初代世界一を目指す侍ジャパンが集結した。小久保裕紀監督が現役時代に長くプレーした福岡で、2日間の合宿練習とプエルトリコ(前回ワールド・ベースボール・クラシック準優勝)との強化試合2戦を行い、その後8日の開幕戦(韓国戦・札幌ドーム)に臨む。

 最初のミーティングで小久保監督が行ったのは、チームのキャプテンを指名することだった。
 10月9日に最終メンバー28名を発表した際、小久保監督はリーダーとして内川聖一(福岡ソフトバンク)の名前を挙げていた。「野手では内川が過去のWBCの出場もあって、今年も優勝したホークスのキャプテンだった。そういう思いでメンバーに入れました」と語っている。しかし、内川は左肋骨(ろっこつ)骨折により今大会を辞退したため不在となった。

キャプテン嶋「監督と選手のパイプ役に」

 注目のキャプテンには、嶋基宏(東北楽天)が指名された。プロ4年目だった2010年オフに楽天の選手会長の座に就き、12年オフには労働組合日本プロ野球選手会の第8代目会長に史上最年少の27歳で就任した。そして小久保ジャパン誕生以来、最初の台湾遠征でも、昨年の日米野球でもキャプテンを任された。

「年齢的にも上の方(12月で31歳)。先頭に立って声を出してほしい。我々の目標は一つ。なので、結束すること自体はそんなに難しいことではない。ただ、選手同士が遠慮しないように、誰かが声を出して先頭に立って動く方がスムーズに運ぶと思った」

 小久保監督はそう言って期待を込めた。それを受けて、嶋も決意を語る。

「小久保監督が選手に伝えたいことの、パイプ役になっていければいいと思っています。バッテリーを含め守備が大事になると思うのでその中心となっていけるようにしたいし、若い選手も多いので声を掛けていけるようにしたい。プレミア12は初めて行われる大会で注目度も高いと思います。もう一度、日本の野球が世界一だということを、この大会を通じて証明したい」

リーダー役には“熱男”松田

けがで代表から外れた内川に代わり、リーダーとして期待される松田 【Getty Images】

 ただし、小久保監督は「内川が居たとしてもキャプテンは嶋に任せるつもりだった」と言う。リーダー役はまた別の人間。それを内川に託すはずだった。

 あらためて小久保監督の口から挙がったのは、日本一ソフトバンクの選手会長である松田宣浩の名前だった。

「野手では松田が最年長(32歳、中村剛也・埼玉西武と同学年)になる。今年のホークスでやってきたようにやってくれれば、チームは十分盛り上がる。ただちょっと盛り上げすぎなところもあるのでそこは注意しながらね(笑)」(小久保監督)

 松田のリーダーシップは、侍ジャパンの大きな力となるはずだ。

 自ら「12球団一の“熱男”」と言い、ソフトバンクを「12球団で一番声が出て、元気のあるチームにする」と先頭を切って声を張り上げる。試合後にはいつも声がガラガラに枯れている。なのに、翌朝にはきっちり治っている。チームメイトも驚く中、試合が始まればベンチに居る時も守備についていても、とにかくチーム全体を鼓舞する。

「野球選手なので、野球のときは元気を出して、あとは影を消すんです。このメリハリです。一日中元気を出すとバテてしまうので。家に帰ったら静かにしています(笑)」

松田「全力で声を出していく」

 松田の笑顔を擬音で表すならば、「ニカッ」が一番似合っている。松田の言動には計算がない。だからこそ必死な気持ちも伝わってくるし、仲間もついていく。
 
 また、ソフトバンクでは長く主軸を打つが、13年のWBCでは主に9番打者が働き場所だった。それでもチームのために熱血プレーをする姿勢は変わらなかった。どんな役割だとしても、自分の力の限りを尽くせる男。それが松田だ。

「日の丸は誰でも付けられるものではない。光栄に思い、世界一を全力で取りに行きたい。(期待されているのは)みんなを盛り上げる元気だと思う。試合に出ても出なくても、チームのため日本のため、全力で声を出していきたい。もちろん、熱く、熱男で! ただ熱いばかりではいけないので、時折冷静に(笑)」

 侍ジャパンでは背番号3を背負う。

「3番といえば長嶋茂雄さんですね!」。
 松田は侍ジャパンの太陽。世界一への道を明るく照らす存在となるはずだ。
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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