記憶に残る2015年ロイヤルズの世界一=“史上最高のカムバックチーム”の裏側

杉浦大介

「諦めない」戦いで4勝すべて逆転

MLB史上に残る勝負強さで30年ぶりワールドシリーズを制したロイヤルズ 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

“史上最高のカムバックチーム”。30年ぶりにワールドシリーズを制した2015年のロイヤルズは、そんな形容とともに記憶されていくのだろう。

 11月1日(現地時間、日本時間2日)に敵地ニューヨークでの第5戦を延長12回の激闘の末に7−2で制し、メッツを4勝1敗で下してシリーズ勝利が決定。この4勝はすべて逆転勝利であり、うち3勝は8回以降の終盤イニングにひっくり返したものだった。MLB史上でも、大舞台でこれほどの勝負強さを発揮したチームは存在しない。

「もうみんなよく知っているはずだ。僕たちは絶対に諦めない。“試合は決まった”などと考えず、最後のアウトまで闘い続ける。今夜のゲームでもそれをやっただけだよ」

 シリーズ打率3割6分4厘を残してMVPを獲得したサルバドール・ペレスが勝ち誇った通り、第5戦の土壇場での同点劇、延長での勝ち方は、ロイヤルズのすべてを象徴するかのようだった。

土壇場で同点に導いた積極的走塁

 メッツのエース、マット・ハービーに完璧に抑えられ、8回終了時点で0−2。ニューヨークのファンはハービーに大声援を送り、この時点ではメッツが逃げ切り、決着はカンザスシティでの第6戦に持ち越されることが濃厚に思えた。

 しかし、2年連続で最終決戦に辿り着いた百戦錬磨のロイヤルズは、9回に反撃を開始する。先頭のロレンゾ・ケーンが四球で出塁すると、4番のエリック・ホズマーの二塁打で1点を返す。その後、ハービーの後を継いだメッツの抑えの切り札ヘウリス・ファミリアから1死三塁のチャンスをつかむと、ペレスのサードゴロの間に、ホズマーが意表を突く走塁で同点のホームを陥れた。

 おそらくこれから先に何度もハイライトとして振り返られるであろう好走塁。ルーカス・デューダ一塁手のホームへの送球が逸れたのは事実だが、それよりもホズマーの機転と判断力を褒めるべきだろう。ロイヤルズとメッツの間では、もともと身体能力と守備力に雲泥の差があった。そんな背景を考慮すれば、ここでのメッツの守備の乱れは、ロイヤルズの積極的な走塁によって導き出された必然の結果にしか思えなかったのである。

メッツにとって悪夢だったマッチアップ

「接戦にさえ持ち込めば、勝機を見つけられると感じている。相手に裂け目を見つけるや否や、そこに付け込むことができる。最も大事なのは、(重要な場面で)私たちの誰もがバットにボールを当てられることなんだ」
 ネド・ヨースト監督のそんな言葉通り、今シリーズ中に誇示したロイヤルズの粘り強さは驚異的なほどだった。

 ハービー、ジェーコブ・デグローム、ノア・シンダーガードといったメッツの若き剛腕投手を相手に、序盤は抑えられても決して慌てない。10月27日の第1戦では、1点を追った9回1死からアレックス・ゴードンが起死回生の同点弾。31日の第4戦でも、2−3で迎えた8回に四球、四球、エラー、単打、単打と連ねて決勝の3点をもぎ取ってみせた。

 第1戦での殊勲打は予想外の一発だったが、これは数少ない例外にすぎない。終盤イニングのロイヤルズは、とにかくチーム一丸となって確実に打球を転がしてくる。一人一人が堅実に仕事を果たすプロ集団は、特に内野守備に弱点を抱えるメッツにとっては悪夢のようなマッチアップだった。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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