「ユヅルを意識しないわけではない」 パトリック・チャンが明かす復帰への思い

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エキサイティングな試合になる

ソチ五輪で金メダルを争った羽生(左)とは、スケートカナダで再び顔を合わせる 【写真:ロイター/アフロ】

――その羽生選手やフェルナンデス選手、テン選手の演技は気にしていた?

 いや、そんなことはないですよ。ソチ五輪後にはショーに向けて準備しなければならなかったですし。自分のスケーティングや振り付け、パフォーマンスの方法といったものを変えるのは、ひと夏でできるものでなく、ものすごく長い時間が必要です。競技に戻ったら、ソチ五輪のシーズンと似たような感じになるだろうと思っていましたが、実際にそうなりましたね。

 今、こうやってリンクに戻って来られてうれしいです。ビックリするような驚きもなく、これまでどおり自分に集中してやるべきことをやれています。これこそが、この1年のオフで学びたかったことです。最終的にはリンクに立ったら自分ひとりで戦わなければいけません。他の選手が同時に演技することはないので、他人と比較する必要もない。彼らと競うのは、ポイントが発表されて結果が出たときだけ。それ以外は自分ができることをやるだけです。

――GPシリーズの復帰戦となるスケートカナダには羽生選手も出場します。それでも意識することはない?

 意識しないというわけではないですよ(笑)。他のスケーターがどんな演技を見せてくれるか楽しみにしていますしね。ただ、僕が言いたかったのは、僕が気に掛けているのは自分自身のスケーティングであるということです。今年はショートもフリーも難しく、それぞれ違ったプログラムになっています。だから自分がやるべきことに集中したいんです。もし自分の演技や、演技の成功に注力しなければ、ミスが出てうまくいかなくなると思います。毎日トリプルアクセルや4回転ジャンプを練習するのと同じで、試合では毎回、自分のプログラムに集中したいんです。(スケートカナダは)僕やユヅルのGPシリーズ初戦だから、ファンやジャッジにとって、とてもエキサイティングな試合になると思います。

長期的な目標は平昌五輪に出ること

――今季、技術的に新たにチャレンジしてみようと思うことはありますか?

 いや、何もないですね(笑)。これまでと同じく、ジャンプはトリプルアクセルや4回転トウループを跳んでいます。今季も序盤だし、ものすごく変わったことをやろうとは思っていないです。ただ、感情表現やプログラムを通じて伝わるものに進化が見られるのではと思います。それが僕が今、力を入れていることで、観客にも見てもらいたいポイントです。ジャンプはジャンプとして変わることはありませんし、プログラムの複雑さや込められた思いに目を向けてもらいたいですね。

――今は表現や感情といった部分に重点を置いているのですね。

 その通りです。加えて音楽の解釈にもフォーカスしています。そういった要素が昨年、僕が学び、成長してきた部分だと思うんです。ショーに参加したことで、結果ではなくパフォーマンスに集中できたからこそ得られたことです。

休養中にはアイスショーに出ることで、表現や音楽の解釈といった要素を磨いた 【写真:アフロスポーツ】

――今季の目標、そして長期的な目標をそれぞれ教えてください。

 今季はまず、カナダ王者のタイトルを取り戻したいと思っています。もし世界選手権に出場できたら素晴らしい経験になるでしょうね。そこで成功を収めることができたら、素敵なおまけになりそうです。長期的には平昌五輪に出ることが目標です。3度目の五輪に出られれば、キャリアの終わり方としては最高でしょうね。

――残り2年弱で五輪出場までたどり着く自信は?

 もちろん、常に自信を持っているし、2回経験しているわけだから、もう1度五輪に出場できる自信があって当然ですよ。ただ唯一、言っておきたいのは、けがをすることもあるということ。これだけは予測できないことですからね。でも先を見越してリンクでも陸上でも、正しいトレーニングをすればけがは防げると思います。適切なウォームアップや治療、リハビリをやり 自分の体の声を聞いてやれば、あと3年、五輪へしっかり準備できる良い状態を保てると思います。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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