未来を模索するフィギュア元全米王者 アボットが語る休養の理由と迷い

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休養という決断を下した理由や、胸の内にある迷いをアボットが明かしてくれた 【スポーツナビ】

 米国王者に輝くこと4回。五輪にも2度出場し、ソチ(2014年)では団体戦で銅メダル獲得に貢献するなど、ジェレミー・アボットは国際舞台で長きにわたって活躍しているフィギュアスケーターだ。表現力やスケーティングスキルに優れ、これまでも多くのファンを魅了してきた。

 そんなアボットだが、今季はジャパンオープン以外のすべての競技会を欠場し、1年間休養することを発表した。現在30歳。現役引退の文字もちらつくが、競技に対する情熱はまだ衰えておらず、迷いも生じているようだ。ジャパンオープンでも持ち前の流麗なスケーティングでファンを沸かせている。休養を決断するに至った理由、今後の計画などについてアボットが語ってくれた。

競技を続けるかは決めていない

――今季、ジャパンオープン以外の試合を欠場するのはなぜですか?

 1年休もうと思ったのは、自分の目標を、そしてスケートを通じてやりたいことを考え直すためです。ジャパンオープンは3度目の出場ですが、いつも楽しく過ごせています。10回目の節目を迎えて、僕もその一部を担えればと思っていたので、声をかけてもらえてハッピーでした。今季もまだ始まったばかりですが、試合に出て、それ以外のこともやって、その中で自分自身がどうしたいか考えたいと思っています。アスリートとして、スケーターとして、そしてプロの振付師としてもね。

――もともと、ソチ五輪のシーズン(2013−14)に引退すると表明していましたよね。ただ、さいたまスーパーアリーナで行われた14年の世界選手権で、日本のファンから万雷の拍手を受けて、現役続行を決めたと聞きました。

 そうだね。ソチ五輪シーズンの前は疲れ切っていて、スケートも試合に出るのも楽しくなかった。だから、このシーズンにすべてをつぎ込んで、やり終えたときに「満足です、やり切ることができました」と言えたらな、と思っていました。でも、シーズンが進むにつれて、自分はやはり競技者なんだなと思って。そして、さいたまでの世界選手権にたどり着いたとき、プログラムをやり切って、スタンディングオベーションが起こりました。そのとき、すべてが一つに合わさって、ピタッとはまった感じがしたんです。世界選手権のメダルも手の届くところまできたので(結果は5位)、ここで諦めたくない、できる限り続けて世界選手権の表彰台に立つんだと思うようになりました。

本来はソチ五輪シーズンで引退するつもりだったが、14年3月の世界選手権で多くの日本人ファンから声援を受けたことで、現役続行を決めた 【写真:ロイター/アフロ】

――現役続行を決めたほかの理由があれば教えてください。

 その頃は、競技者としてもっとできることがあるのではと思いました。ただ、その準備はできていないとも感じていました。今でも競技を続けるかどうかは決めていません。今季が終わって振り返ったとき、「もうやり切った。プロになろう」と思うかもしれません。でも、まだ「試合で勝つんだ」という野心を抱いていますし、アスリートとして4回転ジャンプができるよう頑張りたい。年齢を重ねるにつれて、年々ハードになりますけどね。

 練習ではトウループとサルコウの4回転を練習していて、完成に近いところまできています。だから、もし来季を迎えたとき4回転が跳べて、やる気もみなぎり、体の状態も良ければもう1シーズン競技を続けるかもしれませんね。でも今はその日その日で、試合のことを心配せずに自分自身や、僕にとっての幸せに集中したいと思っています。

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