メイウェザー引退後の“ボクシングの顔”へ 新怪物ゴロフキンが無敗で3団体統一王者に

杉浦大介

WBA、WBC、IBF世界ミドル級王座を統一

15連続KO防衛で3団体王者となったゴロフキン。メイウェザー引退後の“ボクシングの顔”の有力候補に 【Getty Images】

 ボクシング界の新怪物の最新ファイトは、ファンが期待した破壊的なKO劇では終わらなかった。だからといって、その価値が損なわれるものではない。
 これまでのゲンナディ・ゴロフキンは、何よりも豪快な試合内容でファンを喜ばせることを念頭に、多少の被弾は覚悟でアグレッシブに前に出ていた感があった。しかし、現地時間10月17日に米国ニューヨークのマディソンスクエア・ガーデンで行われたIBF王者デビッド・レミューとのWBA、WBC、IBF世界ミドル級王座統一戦で、WBAスーパー、WBC暫定王者はある意味でこれまで以上に完成された姿を見せてくれた。

怪物的パンチャーが見せた新たな一面

これまでの豪快な一発ではなく積極的なジャブで新たな一面を見せたゴロフキン 【Getty Images】

「デビッドは良い選手で、とても強かった。だから、みんなに(アウト)ボクシングができることも示したかった。僕は単なるパンチャーでも、クレイジーなファイターでもない。(アウト)ボクサーでもあるんだ」
 試合後のそんな言葉通り、カザフスタン人王者は序盤からいつも以上にジャブを積極的に使い、距離をコントロールしていく。硬質の左は完璧なまでに有効で、一発強打を打ち込もうと狙う相手に付け入る隙を与えなかった。
 “瞬きもできない打撃戦は必至”。戦前はそう喧伝された統一戦で、34勝中31KO(2敗)を記録してきたレミューのパンチャーズチャンスを指摘する関係者は多かった。しかし、そんな声をあざ笑うかのように、ゴロフキンはまるでマシーンのようにジャブをつき、右ストレート、左右フックに繋げていく。

 距離を制圧されているため、レミューは得意の左フックどころか、右ストレートが当たる距離に到達することすら叶わない。こうしてゴロフキンは相手を徐々に追い込むと、第5ラウンドに左ボディショットで初めてのダウン。第7ラウンドにも再び左ボディで2度に渡ってレミューが腰を落としかけたところで、レフェリーが試合をストップした。
「(王者の)ジャブはとても良いパンチだった。僕もパンチを当てる機会を毎ラウンドに渡って待っていた。ファイトはストップされるべきではなかった」
 最高のタイミングでのストップではなかったのも事実だが、試合後のレミューのそんな不平に耳を貸すものはいないだろう。

 ゴロフキンは8ラウンドを通じ、全549発のパワーパンチ中280発をヒット。エリートファイターとは言えないとはいえ、IBFタイトルホルダーのレミューをほとんど子供扱いし、レベルが違うという印象すら周囲に与えた。
 これで21連続KO、15連続KO防衛。WBCは暫定タイトルながら、3団体を統一した。怪物的なパンチャーのイメージが定着しかけたところで、前述通り、総合力も誇示したいという思いもあったのだろう。思惑通りに隙のない強さをアピールし、今後はパウンド・フォー・パウンド(全階級を通じても)でも最高級のファイターとの声も高まってくるに違いない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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