ミッキークイーンは数年に1頭の馬 三冠馬トレーナーが惚れた素質
樫の女王、二冠へ
樫の女王ミッキークイーン、二冠獲りへ挑む 【netkeiba.com】
(取材・文:大恵陽子)
喜びのGI、絶望の新馬戦
「新馬戦は絶望」こんな気持ちはオルフェーヴル以来だったと池江調教師は振り返る 【netkeiba.com】
桜花賞を3分の2の抽選で除外になり、同日のオープン特別・忘れな草賞勝利を経ての戴冠を、管理する池江泰寿調教師はこう振り返る。
「気持ち良かったですね。直線半ば、坂を駆け上がったあたりから前を行く2頭と勢いが違ったので、勝てるんじゃないかと思いました」
会心の勝利とともに語られるのは、一冠目・桜花賞の無念だった。
「オーナーが宝塚市出身で、桜花賞への思い入れがすごく強いんです。僕自身も桜花賞はとても獲りたいレースだったんですが、クイーンCを取りこぼしてしまって……。トライアルを使うか、放牧に出して馬体を立て直すか葛藤がありました。でも、馬自身はデビュー当初からオークス向きだと思っていたので、いい状態でオークスを迎えられるようオーナーと相談し、後者を選択しました」
ミッキークイーンは2013年セレクトセール1歳市場で1億円で取引された。牝馬としてはこの年の同部門2番目の高値だった。
「値段に見合う血統背景ですし、この馬のすごい点は柔軟性や身のこなしでした。正直、立ち姿だけではこの馬を凌ぐ馬は何頭かいました。でも、動かすとダントツに良かったんです。数年に1頭ですね」
大きな期待を背に、12月7日、阪神・芝1400mで新馬戦を迎えた。
ワンテンポ遅れたスタートから直線は鋭く追い込むも、勝ち馬ジルダに1/2馬身届かずの2着。予想外の結果に、池江師は当時の心境をこう語った。
「絶望でした。負けることがないと思っていました。レースでそんな風に自信を持てる馬は数年に1回で、こんな気持ちはオルフェーヴルの新馬戦以来でしたね」
今春から導入した「半マイル追い」
ミッキークイーンは池江寿厩舎にとって牝馬初GI、その裏には今春から導入した「半マイル追い」の効果が大きかった 【netkeiba.com】
繊細でカイ食いが安定しないミッキークイーンは、トライアルは使わず、賞金不足による除外を覚悟で桜花賞に登録した。しかし冒頭で述べた通り、不運にも抽選に漏れ、忘れな草賞からオークス制覇を成し遂げた。
それは、三冠馬を輩出した厩舎の牝馬初GI制覇だった。
「牝馬をないがしろにしているわけじゃないんですが、入厩自体が少なく、28馬房のうち20頭以上は牡馬が占めているんです。でも、これまで牡馬と牝馬を分けずに画一的な調教をしていたのが悪かったのかな、と思います。この春くらいから明確に調教内容や負荷のかかり具合を分けるようにしています。ミッキークイーンがいたからということもあり、色々考えさせられました」
さらなる進化を求め、今春から池江厩舎は「半マイル追い」も導入。Cウッドコースでの追い切りは6F前後で行われるのが主流なのに対し、半マイル=4Fは軽い負荷の追い切りとなる。
「ミッキークイーンだけでなく、基本的に当該週は半マイル追いです。追うって感じではなく、サッと。それくらいでちょうどいいんです。その分、前倒しして1週前にはある程度仕上げるようにしています。そのため在厩期間は以前より1週間多くとっています」
馬房の回転数より、大切なことがそこにはあった。
「今までは当該週でも6Fで3頭併せとかをやっていて、それで勝つこともありましたが、牝馬はなかなか重賞を勝てませんでした。この春から変えて、ミッキークイーンがオークスを勝てたということは、何らかの効果があったのでしょう」