連覇を狙うNECのルーキー古賀紗理那 さらなる高みを目指して取り組む筋力強化

田中夕子

「しなやかで力強い選手」を目指して

全日本で感じた課題を克服するため、古賀(8番)は筋力強化に取り組んでいる 【坂本清】

 無駄な力を入れない、やわらかな体の動きから繰り出すプレーを強みとする古賀だが、当然ながらすべてがパーフェクトではなく、弱点もある。全日本での経験を重ねたからこそ、より露呈した課題に、今まさに取り組んでいるのだと古賀は言う。

「高校時代は全くトレーニングをやってこなかったので、パワーとか、スピードがないし、体力も足りない。5月(のリオデジャネイロ五輪に向けた世界最終予選)までに全部を高めなければいけないと思うんですけれど、まずはそこかなと思って、今は頑張っています」

 強豪校の中には積極的にウエートトレーニングや体幹トレーニングに取り組む学校も少なくないのだが、古賀の場合は違う。相手ブロッカーやレシーバーを見て打ち分ける巧みなスパイク技術を持ち合わせてはいるが、さらに一段、二段上のステージを目指すには、スピードやパワーも求められ、そのためには基礎体力や基礎筋力を高めなければならない。そのため、特に背筋や大腿二頭筋など後部の筋力を鍛えることに重点を置き、練習前のウォームアップ時にも体力トレーニングの一環として、ハムストリングの筋力強化を行っていると言う。

 トレーニングの効果はやればすぐに出るというほど簡単なものではない。だが、チームの柴田昌奈トレーナーも「体力面に関しては伸びしろしかない」と言い、古賀も「ジャンプが高くなっている気がする」と言うように、成果は確実に表れている。目指すべき「しなやかで力強い選手」となるのも、そう遠い日ではないだろう。

 課題を克服することでスーパールーキーがどんなプレーを魅せるのか。また、チームとしては経験のないNECの連覇に貢献できるのか。期待は高まるばかりだ。

覇権奪取を狙うライバルたち

個性や戦うスタイルの異なる8チームが覇権を争うなか、NECの連覇なるか 【坂本清】

 当然ながら連覇を狙うNECは古賀や近江だけでなく、今季から主将になったミドルブロッカーの島村春世や昨年の新人王、ウイングスパイカーの柳田光綺など高い攻撃力を誇る選手がズラリと顔をそろえ、新たな歴史を刻もうとチームのモチベーションは高い。

 だが、力をつけているのは他チームも同様だ。特に長岡望悠や石井優希、座安琴希らW杯でも活躍した選手を擁しながら、昨年NECに決勝で敗れ、リーグ3連覇を逃した久光製薬スプリングスを筆頭に、出産からの復帰を遂げた荒木絵里香がけん引し、プレミアリーグ昇格初年度に3位と躍進を遂げた上尾メディックス。セッターの宮下遥やベテランミドルブロッカーの山口舞が在籍する市民クラブで、悲願の初優勝を目指す岡山シーガルズ。W杯でも手堅いプレーを見せた内瀬戸真実など若手を中心にした3Dスピードバレーを掲げる日立リヴァーレや、昨年3シーズン振りに木村沙織が復帰したものの、6位と不本意な結果に終わった東レアローズ。さらに、大竹里歩や鍋谷友理枝、古賀と学生時代からライバルとして戦ってきたルーキーの坂本奈々香など、成長著しい若手がそろうデンソーエアリービーズに、主将の竹田沙紀やリベロの佐藤澪を中心とした手堅いディフェンスに加え、昨秋の世界選手権で得点王に輝いたアゼルバイジャンの主砲、ポリーナ・ラヒモアを獲得したトヨタ車体クインシーズ。

 個性や戦うスタイルの異なる8チームの中で、最後に勝利するのはどこか。古賀の活躍はもちろんだが、見どころはそれだけではない。どのチームが、どんな戦力や戦い方で挑むのか。

 17日の開幕戦を皮切りに、楽しみは尽きない。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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