青学大、3冠見えた“格の差”の勝利 駒澤大OB神屋氏が出雲駅伝を解説
2度目の優勝を果たした青学大アンカーの一色恭志=出雲ドーム 【共同】
駒澤大の元エースで、現在は東京経済大陸上部コーチの神屋伸行氏がレースを解説した。
戦略通りにレースを展開
戦前の予想通りと言いますか、青山学院大は神野君が欠けても戦力的に優勝する確率が高いと言われていたので、その通りの力を示したレースでした。
――2区終了時では駒澤大がトップで、青山学院大は24秒差の2位でしたが?
おそらく青山学院大は、1区に駒澤大の中谷(圭佑)選手が来ているので、3区の久保田選手で逆転するか、最悪キチッと秒差で抑えられればいいという戦略だったと思うので、ほぼ読み通りと言いますか、「最悪これくらいで(駒澤大との差を)守れればいいよね」というレベルだったのではないかと。対する駒澤大も、それなりに戦略通りだったとは思うのですが、大八木(弘明)監督としては(2区までで)もう少し離して、3区の工藤(有生)選手に渡したかったというのがあったのではないかと思います。1区中谷選手と3区久保田選手の部分で、青山学院大の方が作戦の範囲内で遂行できたのではないかと。
――3区以降は駒澤大とつばぜり合いになりましたが、それも青山学院大としては想定通りと?
選手の言葉にもありましたが、アンカーに一色選手がいるので、先行されても焦らずについていって、最後にスパートで前に出るなり、最低何秒以内に抑えるという、その1点に絞って作戦が遂行できたと思います。一方の駒澤大は、大塚選手で逃げ切っていく展開を想定していたと思うので、できるだけ早く(青山学院大を)離したいという中で、(選手を見ていると)思うように離せないというジレンマを感じるような表情やしぐさが見られました。後ろを振り返るという動作もすごく多かったですね。
――勝負の鍵となったのは?
やはり3区の久保田選手です。今年どれくらいの調子なのかが多少隠れている中でしたが、一色選手がアンカーに来て、彼に何秒以内で渡せば確実に勝てるといったところはあったと思います。躍進している(駒澤大の)工藤選手に対して、久保田選手が今どれくらい調子が良くて、どれくらいの差までひっくり返せるのかが鍵になったのではないでしょうか。
留学生の活躍が光った2位・山梨学院大
青山学院大と駒澤大はほぼ互角で、戦力的にはそんなに変わりません。でも、オーダーや作戦、そしてやはり個人の強さ、区間賞を取るような選手の強さの違いが、青山学院大を1位にしたと思います。一方の山梨学院大と東洋大、東海大は(青山学院大、駒澤大とは)格差がある。ただ、東洋大は1区のブレーキがなければ青山学院大、駒澤大とそんなに変わらないので、この3校の力の差は戦力的にはあまりなかったのではないかと思います。
――2位には山梨学院大が躍進しました。
上田(健太)選手や市谷(龍太郎)選手ら(2年前の全国高校駅伝を制した、山梨学院大附属高の)メンバーがいるので、面白い駅伝はできていましたが、やはりアンカーの(ドミニク・)ニャイロ選手が大きかったのではと思います。良い駅伝をしたという意味では、東海大もそれなりの駅伝ができたのではと思います。この2校はまだ1、2年生も多いので、これから上に上がってくる、躍進につながる駅伝ができたのではないかという印象を受けました。(今後の)飛躍が見える駅伝というのがあると思うんです。かつての青山学院大が「ここでこれだけ走れたから、次はこれだけ走るよね」というのが見えたように。これから面白いチームという位置に山梨学院大と東海大が顔を出している感じがします。これまで4強、5強と言われてきたチームに食い込んで、いよいよ本当の力を出してきたという感じはしますね。
――東洋大は、1区でコースを間違えるアクシデントもありましたが、4位に入りました。
1区がすべてだったので、東洋大らしくないと言えば、らしくない出雲駅伝になってしまいました。その中で2区勇馬、3区弾馬の服部兄弟と(4区の)口町(亮)選手、アンカーの櫻岡(駿)選手も、ニャイロ選手に逆転こそされましたが自分の走りをしっかりしていましたし、チーム力はあると思います。こういうブレーキが起きた中で、(11月の)全日本大学駅伝でしっかり自分たちらしい駅伝ができるかだと思います。勇馬選手は故障上がりと聞きましたし、(主力の)上村(和生)選手も今はいませんが、全日本でどれくらい戻せるかで、チーム力も変わってくるでしょう。