前半戦首位から最下位転落…… DeNAに足りなかった勝者の精神

ベースボール・タイムズ
 約3カ月前、前半戦首位ターンを決めて「1998年以来17年ぶりの優勝!」と気勢を上げた横浜DeNAだったが、終わってみれば62勝80敗1分けの最下位でシーズンを終了した。同時に、中畑清監督が球団側の慰留を振り切って退任。98年の日本一に貢献した駒田徳広氏の分析を聞きながら、今季の戦いと4年間の中畑体制を振り返るとともに“新生”DeNAが強くなるために必要なものを確かめたい。

前半戦を首位ターンしながら、最下位に沈んだ今季のDeNA。4年間にわたった中畑体制だったが、結果を出すことはできなかった 【写真は共同】

崩壊した先発陣とセンターライン

 まるでジェットコースターだった。開幕直後の快進撃から交流戦での大失速。5月半ばに最大11まで積み上げた貯金は、その後の約1カ月足らずの間に使い果たし、夏場以降は借金生活。最終的に18個の借金を抱えてシーズンを終えた。

 失速の要因は多々あるが、まずは投手陣だろう。特に先発投手陣が総崩れ。昨季は久保康友の12勝6敗を筆頭に、井納翔一(11勝9敗)、モスコーソ(9勝9敗)、山口俊(8勝5敗)と、先発ローテの4投手が計40勝をマークして、積年の課題であった「先発投手の整備」にメドが立ったかに思えたが、今季はその“先発4本柱”の誰一人としてローテを守り切ることができず、久保の8勝がチーム最多。その久保も規定投球回数には達せず、計14人を数えたセ・リーグの規定投球回達成者の中にDeNA勢の名はなかった。

 また、チームをつくる上で重要なセンターラインも最後まで固まらなかった。状況的には黒羽根利規、高城俊人、嶺井博希の3人が正捕手の座を争ったが、いずれも経験不足。今季、プロ野球ワーストタイ記録となった計68暴投は、決して投手陣だけのせいではない。

 野手では、「1番・二塁」として奮闘していた石川雄洋が、7月末に故障離脱。その代わりに宮?敏郎、そして遊撃手には、ルーキーの倉本寿彦に加え、3年目の白崎浩之や4年目の飛雄馬などを起用したが、いずれも打率2割台前半のままシーズン終了。谷繁元信を扇の要に置き、駒田徳広、ローズ、進藤達哉、石井琢朗と錚々(そうそう)たるメンバーをそろえた98年の内野陣と比べると、非常に大きな力の差があった。

収穫以上に見えた“変えるべきもの”

「5番・一塁」、そして主将として98年の日本一に貢献した駒田徳広氏は、今季の急失速を「気持ちの問題が大きい」と分析する。

「戦力云々はありますが、結局は気力が最後まで持たなかったということだと思います。長いシーズン、いろんなことが起きる。それを戦い抜く気持ち、体力がまだまだ足りなかった。勢いは大事ですけど、それだけでは優勝できない」

 4番・筒香嘉智の成長や、梶谷隆幸、荒波翔の活躍は来季へ向けても大きな収穫。投手陣では、新守護神・山崎康晃の活躍に加え、砂田毅樹、石田健大らの若手も頭角を現した。だが、それ以上に“変えるべきもの”があると、駒田氏は厳しく指摘する。

「例えば、中学の時にすごく勉強のできる学校に行って40人中35位で苦労した子が、高校では少し勉強が楽な学校へ行った。だけど、2年生になった時にはやっぱり35位になっている。その子は、どの学校に行っても、結局は自分が楽なポジションに落ち着いてしまいます。それと同じで、ベイスターズも自分たちの居心地のいい場所で野球をやってしまっている。その部分を変えないと、いつまで経っても勝てない」

 シーズンを戦い抜く上で、勝者のメンタリティーを持つか否かは、やはり重要になる。

「勝つチームというのは、けが人などが出ても最終的には何とかなるものです。巨人も今年は非常に苦しかったですが、上(2位)にはいる。DeNAには、そういう“何とかする”という力が足りない。結局は『ピッチャーがダメだったね』ってことかもしれませんが、それは何年も前から言っていること。戦力が足りなくても、その上でどうやって戦って、どうやって勝つのか。その部分を真剣に考えて、チーム全体が共通の認識を持たないといけない」

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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