田中将大に求められたのは完璧 物足りない…試合つくれても支配できず

杉浦大介

序盤の失点は痛恨、“一発病”が命取りに

田中は序盤に痛恨の2被弾で5回2失点。結果的にはシーズン中の課題だった“一発病”に泣いた 【Getty Images】

 結局、シーズン中から続いた“一発病”が大舞台でも命取りになった。

 10月6日(日本時間7日、以下現地時間)、ヤンキー・スタジアムに50,113人の大観衆を集めて行われたアストロズとのワイルドカードゲーム――。緊張で凍りつくような一発勝負のプレーオフ戦で、先発した田中将大はニューヨークの人々を喜ばせることはできなかった。

 決め手となったのは2本の本塁打。2回には先頭のコルビー・ラスマスに93マイル(約150キロ)の速球を、4回にはカルロス・ゴメスに84マイル(約135キロ)のスライダーを、それぞれを豪快にスタンドに運ばれた。ここで許した失点を最後まで挽回できず、ヤンキースは0対3で敗北。2012年以来初めてたどり着いたポストシーズンは、たった1試合であっけなく終わりを告げた。
 
「シーズン中から周りの方々もそうだし、自身でも課題に感じていたホームラン(を打たれてしまった)。シーズンで出ていたことがここでも出てしまった」

 試合後に田中本人がそう振り返った通り、必然的にロースコアの可能性が高くなる総力戦において序盤の失点は痛恨だった。

「あれだけのピッチャーを相手にチームとして戦うわけですから、先に点を取られれば苦しくなる。追加点を取られれば苦しくなる。こういう展開にしてしまったのはすべて僕の責任だと思っています」

 アストロズの先発マウンドに立ったのは今季ア・リーグのサイ・ヤング賞候補筆頭左腕ダラス・カイケル(今季20勝8敗、防御率2.48)。過去2カ月間、ヤンキースはサウスポーの先発投手に8勝12敗と苦手にしていた。そんな状況下ゆえに、田中が4回に2点目を献上した時点でスタジアムに早くも悲壮感が漂ったのは仕方なかっただろう。

最大の敗因は手も足も出なかった打線

 もっとも、このビッグゲームでのヤンキースの敗因がすべて田中にあると言いたいわけではない。

 5回で4安打3四球を許しながら、失点はホームランの2点だけ。開始直後から制球に苦しみ、毎回のようにランナーを背負った。それでも2回の2死満塁、3回の無死2塁、4回の1死一塁といったピンチを何とかしのぎ続け、持ち前の粘り強さは誇示した。

「田中は幾つかミスをおかした。(しかし)たいていの場合は5回を2失点に抑えてくれれば勝利の大きなチャンスがあるものなんだ」

 ジョー・ジラルディ監督のそんな言葉は口先だけのものではない。カイケルは確かに難敵だが、この試合前には9月1日以降は防御率5.63でメジャー最下位というアストロズのブルペンの弱さも喧伝された。一方、ここに来て疲れ気味とはいえ、ヤンキースはアンドリュー・ミラー、デリン・ベタンセス、ポール・ウィルソンという強力な救援3本柱を擁している。

 僅少差に保ったまま、ブルペン勝負に持ち込めれば勝機はある。カイケルがマウンドを降りた6回まではそのシナリオ通りだったとすれば、田中もある程度は自身の仕事を成し遂げたと見ることもできる。

 最大の敗因は、アストロズが送り出した4人の投手たちに3安打とほとんど手も足も出なかった打線である。散発3安打に終わり、中でも1番のブレッド・ガードナー、4番のアレックス・ロドリゲス、5番のブライアン・マキャンは3人合わせて12打数0安打5三振だった。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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