スターダム“最後の1期生”岩谷の覚悟 芽生えた自信と、同期・世IV虎への思い
いつも助けてくれた世IV虎
しばしば逃げ出すこともあったと話す岩谷。それでもここまでやってこれたのは、同期の仲間、世IV虎のおかげだったという 【スポーツナビ】
そうですね。初めてハイスピードのベルトに挑戦するとなった時は、逃げだしてしまって……
――逃げる?
実は今までに5回くらい逃げ出しています(笑)。実家に逃げたり、家に引きこもったり。
――その理由は?
もともと私って、あまり注目を浴びたくなくて、下で細々とやれればいいかなと思っていたんです。それに、ハイスピードは自分にできないと思っていて。練習のさぼり癖もあったし、だからスタミナもスターダムで1番なかったし。自分に対して自信がなくて逃げちゃったんです。
――それでもこうして戻ってきていますが、戻った理由というのは?
そんな時、一番に助けてくれたのが世IV虎ちゃんでした。私が部屋に閉じこもっていると、家が遠いにも関わらず迎えに来てくれて……。私が「誰にも会いたくない!」と部屋にこもっていた時も、無理やりにでも部屋から出そうとしてくれました。
――世IV虎さんとは同期ということで仲が良かったんですね。
すごく仲良かったです。寮に入った時もずっと世IV虎ちゃんと一緒で、1年間は世IV虎ちゃんと同じ部屋で、朝起きて、一番に顔を合わせて、ごはんを食べて、練習して、帰ってきてから一緒にごはんを食べて、DVDを見てと、本当に毎日一緒で。一番思い出があります。
自分がプロレスを止めたいと思った時はいつも引きとめてくれて、本当に今、自分がプロレスをできているのは世IV虎ちゃんのおかげです。
――その世IV虎さんは、6月に団体を去りました。実際、同期の仲間として、あの事件についてはどう思っていますか?
世IV虎ちゃんはあの試合(2・22後楽園大会のワールドオブスターダムの試合 王者・世IV虎vs.挑戦者・安川惡斗)の前から、「惡斗とは試合ができない」と話していました。まだ惡斗が赤いベルトを懸けて戦うほどの選手じゃないと。
でも試合が決まってしまったので、ちゃんと試合をしようと、世IV虎ちゃんも覚悟を決めていました。でもあんな試合になってしまって……。
その日の夜に夕飯に誘ったのですが、すごく落ち込んでいて、私は「大丈夫だよ」と声をかけることしかできませんでした。そうしたら後々、大々的な話題になってしまって、世IV虎ちゃんは誰からの電話にも出ないし、メールも削除していて、精神的に落ちてしまったんです。
でもその時、私は何もしてあげられなかった。私が逃げた時はいつも世IV虎ちゃんが助けてくれたけど、自分は何もできなかったんです……。
夢だったハイスピードを必ず取る!
自信をつけた岩谷。3度目の挑戦で、夢のハイスピード王座獲得を狙う 【スポーツナビ】
実際、そんな状態だったので、連絡を取ることがいっさいできなかったんです。私は会いに行く準備をしていたんですけど、連絡が取れないから。世IV虎ちゃんのお母さんから「時間をおいてほしい」という話があったようで、みんなそれに納得して待っていたんです。でも結局、やめるという結論を出してしまったので、会いに行けなかったことが裏目になってしまいました。
――今でも世IV虎さんには戻ってきてほしいと思っている?
もちろん戻ってきて欲しいとは思っています。でも、最初から世IV虎ちゃんは「もうプロレスをやらない」と話していたし、私としては楽しくないのに無理にやらせることはできないので、戻ってきて欲しいとは言えないです。
世IV虎ちゃんも今は吹っ切っているので、私も吹っ切らないとと思っています。
――未練はあると。
世IV虎ちゃんが言っていたのは、私だったり、イオさんだったり、風香さんには良くしてもらったので、その仲間がいなくなった、仲間と接することができなくなったのが寂しいと話していました。プロレスで得られる充実感は、ほかの仕事よりも大きいし、仲間に対する未練もあると。でも、世IV虎ちゃんにはプロレスに対する未練はないと……。
――岩谷さんとしては、今後どうしたいというのはありますか?
前にも話しましたが、世IV虎ちゃんがいなくなってから、いろいろなことを自分でやらなきゃいけなくなって、責任感が出てきました。もちろん、プレッシャーにも弱いし、あまり目立ちたくないという気持ちもなくなってはないんですけど、最後の1期生、旗揚げメンバーとして頑張りたいです。
――そんな頑張っている姿を世IV虎さんに示したいと。
そうですね。戻ってくる可能性はゼロではないと思うし、もし「もう1回プロレスをやりたい」と思ってくれるなら、スターダムで待っています。
――そのためにも11日、ハイスピード王座の獲得はターニングポイントになりそうですね。
まずは第一の目標、プロレスラーとしての目標だったハイスピードのベルトを頑張って取って、夢をかなえたいと思います!
(取材・文:尾柴広紀/スポーツナビ)