ロイヤル・アントワープが紡ぎ続ける歴史 ベルギー2部で異彩を放つ熱きサポーター

中田徹

1部リーグを凌ぐ熱い雰囲気

ベルギー2部に所属するロイヤル・アントワープ。父から子へとその歴史が引き継がれていた 【中田徹】

 ベルギー2部リーグに所属するロイヤル・アントワープのホームスタジアム、ボサイルは、市街からトラムで15分ほどのところにある。その最寄り駅を降りるとすぐ『ザ・グレート・オールド』というクラブのニックネームを冠したカフェがあった。キックオフまでまだ3時間あるというのに、サポーターが店に入りきれず、道路まで人が溢れていた。この日はベルギー2部リーグの首位攻防戦の日。トゥビーズに勝てば、ロイヤル・アントワープは首位に浮上する。

 28歳のサポーター・ユセフさんは「うちらのチームは今、とても調子が良い。3日前、俺たちはベルギー1部リーグの首位オーステンデとカップ戦をアウェーで戦い、2−0で勝ったんだ。今日もいただきさ」と自信満々だ。

 ベルギー2部リーグという、欧州サッカーシーンの中ではまったく日の当たらぬ舞台だというのに、1部リーグの熱狂を凌駕(りょうが)する熱い雰囲気がそこにはあった。きっと、僕の目が驚きで泳いでいたのだろう。55歳のサポーター、ヘンクさんは「このカフェのにぎわいは、ビッグゲームだからじゃないぜ。いつも、そうなんだ」と言ってから、北へ顔を向けた。

「あっちへ行ってごらん。500メートルほど歩けば、そこにもサポーターが集まっているから」

 スタジアムの前を通り過ぎ、さらに北へ歩くと『ザ・ロイヤル』という名前のカフェがあり、ここにも多くのサポーターがたむろっていた。サポーターたちが談笑する中、 僕はまるで空気のような存在だった。雰囲気に気圧されて、彼らに話しかけることができない。

サポーターは生涯のもの

ボサイル・スタディオン周辺には2つの有名なサポーターズカフェがある。写真はザ・ロイヤル 【中田徹】

 3人組の男たちがそれぞれビールを片手にカフェを去り、スタジアムに向かって歩き出した。一番若い男に、僕は話しかけてみた。マキシムさんという青年は丁寧に答えてくれた。

「ロイヤル・アントワープはハート、そしてライフ。フットボールを超えたものなんだ。クラブには良い時も悪い時もある。今、ロイヤル・アントワープは2部リーグで12シーズン目。だけど、僕たちの気持ちは決して離れない。今から16年前、僕が6歳の時、親父が初めてスタジアムに連れて来てくれた。その試合でロイヤル・アントワープがヘンクを3−0で下した。だけど、僕がロイヤル・アントワープのサポーターになったのは、この試合で感動したからではない。いつも、いつも、親父が僕をスタジアムに連れて行ってくれたからなんだ」

 僕とマキシムさんの話しに無関心を装いながら、斜め前を歩いていたのが父親のウェルナーさんだった。

「ずっと話しを聞いてたよ。息子が言うように、ロイヤル・アントワープはライフなんだ。私も5〜6歳の時からこのチームを応援している」

 それは、もしかしてあなたのお父さんと?

「ああ、そうだ。父から子、そしてまた父から子へと、ロイヤル・アントワープのサポーターの歴史は続いていく」

 そういえば、『ザ・グレート・オールド』で会ったユセフさんも、ヘンクさんも、その周りにいたサポーターたちも、「ロイヤル・アントワープを応援し始めたのは5歳の時」「俺は6歳の時」と言っていた。ベルギーの週刊誌『スポルト/フットボールマガジン』が2部に長年低迷するロイヤル・アントワープの特集記事を載せいていたが、そこに「監督、選手、さらに首脳陣は変わっていくが、サポーターというのは生涯のものなんだ」というコメントがあった。『ザ・グレート・オールド』にも、『ザ・ロイヤル』にも、そのロイヤル・アントワープ気質を体現するようなサポーターばかりがいた。

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著者プロフィール

中田徹

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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