ヤクルトを変えた“ROB”の誕生 救援陣の再建に腐心しつかんだV
最重要課題だったリリーフ陣の再建
14年ぶりとなったヤクルトの優勝。2年連続最下位から優勝ができたその要因とは? 【写真は共同】
先発の小川泰弘からローガン・オンドルセク、秋吉亮、久古健太郎とつなぎ、8回途中から守護神のトニー・バーネットをマウンドに送り込みながら、そのバーネットが今シーズン初めてセーブに失敗して同点に追いつかれた。だが、10回から2イニングを投げたオーランド・ロマンが無失点で切り抜けたことが、劇的な幕切れにつながった。1点を取られても、次の1点を与えずに粘り強くつかんだ勝利は、今シーズンのスワローズを象徴していた。
「他球団に比べて投手力が劣っていると感じています。ピッチャーを含めたディフェンスが大事なのかなと思います」
昨年10月の就任会見で、チーム再建の方針を問われた真中満監督が打ち出したのは「投手力を中心とした守りの野球」。昨シーズンはチーム打率、得点ともリーグNO.1。その一方でチーム防御率は両リーグワーストの4.62と、低迷の原因はハッキリしていた。
投手陣の中でも、特に深刻だったのがリリーフ陣であった。なにしろ肝心の抑え投手がいない。2012年にセ・リーグ最多セーブに輝いたバーネットは、過去2年はケガもあって計21セーブどまり。バーネット不在の間に代役を務めた山本哲哉、秋吉らも、抑えとしては長続きしなかった。
投手陣の立て直しを託され、昨シーズンから指導者として古巣に復帰していた高津臣吾投手コーチにとっても、リリーフ陣の再建は最重要課題だった。
「投手陣、その中でもブルペン(リリーフ陣)が強くないと勝てるチームにはならないと僕はずっと思っていました。去年はいろいろ言われてね(苦笑)、競り勝つにはどうしたらいいかと考えた時に、後ろに何人かしっかりしたピッチャーがいるのがベストだと思っていました」
鉄壁の救援トリオ「ROB」の誕生
球団は身長203センチのこの長身リリーバーと、バーネットに抑えの座を競わせた。キャンプ、オープン戦を経て、最終的に選ばれたのはバーネット。オンドルセクはオープン戦ではまだ本調子ではなく、メジャーでも抑えは未経験。それならばと、真中監督も「一番仕上がってキャンプに入ってきた。初日から150キロ(の球を)投げていたからね」と言うほどの意気込みを見せていたバーネットの復活に懸けた。
これがズバリと当たった。バーネットは開幕から23試合連続無失点の球団新記録をマークするなど、絶対的な守護神として君臨。序盤はそのバーネットにつなぐ役割を、オンドルセクのほか、2年目の秋吉、左腕の中澤雅人らが担ったが、途中からそこにロマンが仲間入り。5月半ばになるとこのロマンと、日本の野球に慣れて本領を発揮し始めたオンドルセクに7、8回を任せるパターンが確立し、外国人3人による鉄壁の救援トリオ「ROB(ロマン−オンドルセク−バーネット)」が誕生した。時にROB、時にはORBの順番でゲーム終盤を担い、ヤクルトはこの3人がそろって登板した試合では23勝2敗2分と抜群の勝率を誇った。
「やっぱり後ろ(救援)の3人じゃないですか。勝っている試合を確実に取っているんで、それはスゴいですよね」
今季からシニアディレクターに就任した小川淳司前監督も、昨年との違いをそう指摘する。今年は先制した試合の勝率は7割5分(昨年は5割7分5厘)。逆転負けは19試合と半減した(昨年は38試合)。現在、セ・リーグ打率トップの川端慎吾が「5回、6回まで勝っている状態でつなぐのが、僕たちがやらないとならないこと」と話し、投手陣のリーダー、石川雅規が「後ろ(リリーフ)がいいから、最初から飛ばしていこう」と意識して6連勝をマークしたように、ROBの存在はゲーム中盤までリードしていれば勝てるという安心感をチームに与えた。