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ヤクルトを変えた“ROB”の誕生
救援陣の再建に腐心しつかんだV

最重要課題だったリリーフ陣の再建

14年ぶりとなったヤクルトの優勝。2年連続最下位から優勝ができたその要因とは?
14年ぶりとなったヤクルトの優勝。2年連続最下位から優勝ができたその要因とは?【写真は共同】

 雄平のバットから放たれた鋭い打球が右翼線に抜けると、三塁からサヨナラの走者がかえるのを待ちきれず、今季最多3万3986人の大観衆で埋まった神宮球場のスタンドは興奮のるつぼと化した。延長11回、4時間2分──。激闘の末に、東京ヤクルトは劇的な形で14年ぶりのセ・リーグ優勝を決めた。


 先発の小川泰弘からローガン・オンドルセク、秋吉亮、久古健太郎とつなぎ、8回途中から守護神のトニー・バーネットをマウンドに送り込みながら、そのバーネットが今シーズン初めてセーブに失敗して同点に追いつかれた。だが、10回から2イニングを投げたオーランド・ロマンが無失点で切り抜けたことが、劇的な幕切れにつながった。1点を取られても、次の1点を与えずに粘り強くつかんだ勝利は、今シーズンのスワローズを象徴していた。


「他球団に比べて投手力が劣っていると感じています。ピッチャーを含めたディフェンスが大事なのかなと思います」


 昨年10月の就任会見で、チーム再建の方針を問われた真中満監督が打ち出したのは「投手力を中心とした守りの野球」。昨シーズンはチーム打率、得点ともリーグNO.1。その一方でチーム防御率は両リーグワーストの4.62と、低迷の原因はハッキリしていた。


 投手陣の中でも、特に深刻だったのがリリーフ陣であった。なにしろ肝心の抑え投手がいない。2012年にセ・リーグ最多セーブに輝いたバーネットは、過去2年はケガもあって計21セーブどまり。バーネット不在の間に代役を務めた山本哲哉、秋吉らも、抑えとしては長続きしなかった。


 投手陣の立て直しを託され、昨シーズンから指導者として古巣に復帰していた高津臣吾投手コーチにとっても、リリーフ陣の再建は最重要課題だった。


「投手陣、その中でもブルペン(リリーフ陣)が強くないと勝てるチームにはならないと僕はずっと思っていました。去年はいろいろ言われてね(苦笑)、競り勝つにはどうしたらいいかと考えた時に、後ろに何人かしっかりしたピッチャーがいるのがベストだと思っていました」

鉄壁の救援トリオ「ROB」の誕生

 しっかりしたピッチャーで試合の終盤を固める──。いわゆる「勝利の方程式」を構築するための最初のピースは、海の向こうからやってきた。2010年にシンシナティ・レッズでデビューして以来、3年連続で60試合以上に投げるなど、昨年までメジャー5年間で281試合登板の実績を持つオンドルセクである。


 球団は身長203センチのこの長身リリーバーと、バーネットに抑えの座を競わせた。キャンプ、オープン戦を経て、最終的に選ばれたのはバーネット。オンドルセクはオープン戦ではまだ本調子ではなく、メジャーでも抑えは未経験。それならばと、真中監督も「一番仕上がってキャンプに入ってきた。初日から150キロ(の球を)投げていたからね」と言うほどの意気込みを見せていたバーネットの復活に懸けた。


 これがズバリと当たった。バーネットは開幕から23試合連続無失点の球団新記録をマークするなど、絶対的な守護神として君臨。序盤はそのバーネットにつなぐ役割を、オンドルセクのほか、2年目の秋吉、左腕の中澤雅人らが担ったが、途中からそこにロマンが仲間入り。5月半ばになるとこのロマンと、日本の野球に慣れて本領を発揮し始めたオンドルセクに7、8回を任せるパターンが確立し、外国人3人による鉄壁の救援トリオ「ROB(ロマン−オンドルセク−バーネット)」が誕生した。時にROB、時にはORBの順番でゲーム終盤を担い、ヤクルトはこの3人がそろって登板した試合では23勝2敗2分と抜群の勝率を誇った。


「やっぱり後ろ(救援)の3人じゃないですか。勝っている試合を確実に取っているんで、それはスゴいですよね」


 今季からシニアディレクターに就任した小川淳司前監督も、昨年との違いをそう指摘する。今年は先制した試合の勝率は7割5分(昨年は5割7分5厘)。逆転負けは19試合と半減した(昨年は38試合)。現在、セ・リーグ打率トップの川端慎吾が「5回、6回まで勝っている状態でつなぐのが、僕たちがやらないとならないこと」と話し、投手陣のリーダー、石川雅規が「後ろ(リリーフ)がいいから、最初から飛ばしていこう」と意識して6連勝をマークしたように、ROBの存在はゲーム中盤までリードしていれば勝てるという安心感をチームに与えた。

菊田康彦
菊田康彦

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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