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全日本男子が確立し始めたバレースタイル
W杯で見えた五輪出場への道しるべ

強豪ロシアに善戦も惜敗

W杯の最終戦で、強豪ロシアを相手に勝利まであと一歩と迫るもフルセット負けを喫した全日本男子。5勝6敗の6位で大会を終えた
W杯の最終戦で、強豪ロシアを相手に勝利まであと一歩と迫るもフルセット負けを喫した全日本男子。5勝6敗の6位で大会を終えた【坂本清】

 ロシアの3枚ブロックが石川祐希(中央大)の前に立ちはだかる。


 23日に行われたワールドカップ(W杯)バレー、日本vs.ロシアの第1セット、27−27。攻撃を阻もうと、グッと前に出てくる6本の腕を見ながら、石川は冷静だった。


「『せーの』で跳んで打っちゃうと、相手のタイミングになってしまう。ロシアのブロックはあおってくるので、その前に打てば、ああなるだろうな、と思って少し早めに打ちました」


 ああなるだろう、の言葉の通り、石川が放ったスパイクは3枚ブロックとネットの間に吸い込まれ、ロシアコートに落ちる。会心のスパイクで28点目をもぎ取ると、今度は相手のスパイクをブロック。29−27で世界ランク2位のロシアから、第1セットをもぎ取った。


 第2セットは落とすも第3セットを取り、勝利まであと一歩と迫った。しかし、最後は試合巧者の相手を前にフルセット負け。だが、広島、大阪ラウンドでもそうであったように、東京・代々木第一体育館を埋め尽くした満員の観客から大きな拍手が沸き起こる。


 課題だけでなく成果や自信など前向きな言葉が選手から述べられる中、石川が言った。


「W杯は楽しかったです。でもそれより勝ちたかった。勝てない相手じゃなかったので。楽しさよりも、今は悔しさの方が大きいです」


 連日、アイドル顔負けの歓声を送られながらも、ブレることなく地に足をつけ、その目は次なる戦い、リオデジャネイロ五輪最終予選、そしてその先にある五輪を見据えていた。

サーブがもたらした好循環

石川らサーブで得点できる選手たちの存在は、チームの躍進を支える大きな原動力となった
石川らサーブで得点できる選手たちの存在は、チームの躍進を支える大きな原動力となった【坂本清】

 前評判では「1、2勝がやっとではないか」と言われ、選手たちも「正直、不安の方が大きかった」という大会で、躍進を遂げた理由は何か。


 まず挙げられるのは、チームとしてどう戦うかという「スタイル」が構築され始めたことだ。


 その中で鍵になったのは、中間総括でも触れたように、石川と柳田将洋(サントリー)、清水邦広(パナソニック)といった、サーブで得点できる選手たちの存在だ。東京ラウンドでもポーランドやアルゼンチン、ロシアという完全に格上の、これまではなすすべなく敗れることすらあった強豪に対しても、3人のサーブからブレイクを取る場面が多く見られた。


 サーブが走り、相手の守備を崩すことができれば、それだけ相手の攻撃の選択肢を減らせるため、戦術遂行力も向上する。ローテーションごとのパターンや、相手セッターやアタッカーの特徴を細かく分析し、打数が多いスパイカーに対してのブロックやレシーブを手厚くする。前衛のブロッカーがマークする位置も、ミドルはライトとレフトのどちらを重視するのか、サイドはクイックのヘルプに入るのか入らないのか。ライトをマークするとしても、一度ミドルも警戒しているとフェイクをかけるのか。数字には表れないような細かなプレーばかりではあるが、その徹底がなされたことがチームとしてディフェンス力の向上につながる要因となった。


 コートの縦・横幅9メートルをすべて守るという意識ではなく、レフトサイドの選手はここ、ミドルはここ、ライトサイドはここ、といったように細かく役割を提示することに加え、攻撃の出現機会が少ないポジションからの攻撃は思い切って捨てる。


 チーム内で最も代表経験の長い阿部裕太(サントリー)はこう言う。


「今までだったら、サーブでここを狙ってこの攻撃を抑えよう、と対策をしていても、そこまでサーブで崩し切れていなかった。だから相手のパスを見て『ここは捨てる』と決めたけれど、このパスだったらこっちから攻撃されるかもしれない、と迷いがあった。でも今は違う。石川や柳田のサーブが走れば確実に崩れるので、ブロッカーやレシーバーの迷いも消えました」


 思い通りの展開に持ち込めた試合を重ねることで選手たちの自信も増幅し、前評判を覆す好結果をもたらす一因となった。

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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