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変革の時を迎えた全日本男子バレー
世界が認めるサーブとそれを生かす組織力

確実に縮まったイランとの差

8戦を終えて5勝3敗。戦前の予想を上回る全日本男子の活躍に、体育館は熱気で溢れている
8戦を終えて5勝3敗。戦前の予想を上回る全日本男子の活躍に、体育館は熱気で溢れている【坂本清】

 2セットを取りながらの逆転負け。18日に行われたワールドカップ(W杯)男子バレーの第8戦で、アジアの宿敵イランとのフルセットに及ぶ対戦を終えると、石川祐希(中央大)は悔しさをにじませた。


「良い試合をしたということよりも、勝てなかったことがとにかくすごく悔しいです」


 同じアジア勢でライバルであったはずのイランは、昨秋の世界選手権で6位入賞を果たすなど、近年急成長を遂げていた。


 いつの間にか広がっていた大きな差。


 絶対に負けられない相手。そう口では言いながらも、昨年の世界選手権の直後に開催されたアジア大会決勝(1−3)は、下から見上げ、挑戦者としてぶつかる相手だった。


 だが、今は違う。主将の清水邦広(パナソニック)がこう言った。


「イランとの力の差は、正直そこまで感じませんでした。だからこそ今日の試合は勝って自信をつけたかった。でもどんなチームにも良い時、悪い時があって、日本も良い時は強い相手にも十分通用するチームになったと思います。だから落ち込まずに、2、3年前ならストレートで負けていたような相手にフルセットを戦えたことを自信にしたいです」


 男子バレー全日本代表は今、大きな変化の時を迎えようとしている。


 戦前の予想では「1、2勝するのがやっとではないか」という声が大半を占める中、ふたを開ければ初戦(8日)でエジプトにフルセット勝ちを収め、米国戦に敗れはしたものの1セットを取る善戦を展開し、続くオーストラリア、カナダを撃破。下馬評を覆す快進撃に、周囲の関心も少しずつ高まりを見せ、7月のワールドリーグでは閑古鳥が鳴いていた体育館が、W杯は連日満員。2008年の北京五輪最終予選以来の熱気が溢れていた。

石川と柳田のサーブが大きな武器

今大会ではサーブが機能している日本。そのサーブ力は世界からも認められている
今大会ではサーブが機能している日本。そのサーブ力は世界からも認められている【坂本清】

 まず大きな理由は、バレーボールにおいて主導権を握るために最も大切なプレーであるサーブで、確実に相手を攻め、得点に結びつけられるビッグサーバー、石川と柳田将洋(サントリー)の存在だ。


 バックアタックさながらに、高い打点からのジャンプサーブを得意とする2人は日本の中では屈指のサーバー。その能力は諸外国の選手たちも認めており、イタリア代表のリベロで石川とはイタリア・セリエAのモデナでチームメートだったサルバトーレ・ロッシーニも2人のサーブ力と、今の日本の力を高く評価する1人だ。


「これまでの日本はディフェンスに優れたチームという印象が強かった。でもこの大会ではディフェンス力以上にサーブが素晴らしい。祐希がとても優れた選手だということはイタリアにいる頃から認識していたけれど、1人だけでなく、サーブでポイントできる選手が多くそろうということは、それだけ対戦国にとって脅威と言うべき存在であり、今の日本は世界のトップにも勝利する力を備えたチームだ」


 世界と戦うレベルまで引き上げた、と言うと多少大げさな感もあるが、スタメンに定着しつつある石川、柳田の活躍は日本にとって明るい材料であることは間違いない。特にサーブに関しては、2人のビッグサーバーが戦力として確立したことでチームにも好影響をもたらしていると清水も言う。


「石川と柳田のサーブでポイントが動くので、自分はそこまで無理して打たなくていい、と気負いがなくなりました。(今大会では)自分の後に柳田がサーブを打つので、ミスしてしまうと柳田にも影響が出てくる。常に一か八かで打つのではなく、前に落としたり、7〜8割の力で打ったり、攻めながらもミスを少なく、若い2人につなげられるように、と全員が意識しているんです。だから強いチームに対しても今の日本は『サーブが武器だ』と思えるし、すごくサーブが機能していると思います」

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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