日本代表の対戦相手を戦術から分析 ラグビーW杯プールB展望

斉藤健仁
 9月18日、待ちに待った第8回ラグビーワールドカップ(W杯)がイングランドで開幕する。イングランド代表対フィジー代表を皮切りに、10月31日の決勝まで48試合の熱戦が繰り広げられる。

「エディージャパン」ことラグビー日本代表は、24年ぶりの白星だけでなく、予選プール(トップリーグと同じ勝ち点制)で上位2チームに入り、初の決勝トーナメント進出(8強)を狙っている。そこでプールBのライバルたちのラグビーを紹介しつつ、日本代表がどのように戦うべきかに触れてみたい。

 まずプールBに入った5チームの現在の世界ランキングは下記の通り。

(チーム名、世界ランキング/過去の対戦成績)

南アフリカ代表(3位)/ 今回が初対決

スコットランド代表(10位) /1勝7敗 ※W杯で2敗

サモア代表(12位) /3勝11敗 ※W杯で1敗

日本代表(13位) /−

アメリカ代表(15位) /8勝1分13敗 ※W杯で2敗

 プールBでは優勝2回の南アフリカ代表が突出しており、問題なくプールBを突破し準々決勝に進出するだろう。他の4チームは10位〜15位の中に入り、どのチームにもチャンスはあるという状況となっている。ただ、日本代表にとっては、南アフリカ代表と対戦するのは史上初、また他の3チームには負け越しており、W杯では勝利していない。そう考えると、「日本もラグビーで戦える国であることを見せたい」とのエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)のコメント通り、南アフリカ代表戦で勢いに乗り、スコットランド代表戦やそれ以降の試合につなげたいところ。

南アフリカ代表戦<9月20日(日)0:45キックオフ>

優勝候補の南アフリカ代表。CTBジャン・デヴィリアス主将を中心に日本代表を迎え撃つ 【写真:ロイター/アフロ】

 9月19日、イングランド南部の観光都市ブライトンで、日本代表は南アフリカと対戦する。南アフリカ代表は、ジョーンズHCが「守りだけで勝てる唯一のチーム」と評する通り、個々のフィジカルには絶対の自信を持つ。そのため、少しでもボールキャリアが孤立してしまうとFL/No.8スカルク・バーガー(サントリー)らにジャッカルされ、ターンオーバーされてしまう危険が伴う。日本代表は「ボールインプレーを多くして疲れさせる」という作戦を取る方向だが、ボールポゼッション(保持率)を上げつつも、相手陣で戦うことが要求される。しっかり、相手を動かした後、SHやSOのキックという「賢いプレー」(ジョーンズHC)でスペースを突きたい。

 またFWのセットプレーも世界有数で「スクラム、モールとスローペースに持ち込んでくる」とSH日和佐篤(サントリー)は警戒している。前半の前半は、相手のプレッシャーに耐えつつも、後半、相手が疲れたところで、どこまでペースを上げて、トライに結びつけることができるか、この4年間の「エディージャパン」の試金石となろう。
 また相手の攻撃は、FWを全面に押し出してくる「アタックシェイプ」が中心だ。日本代表と似た攻撃のため、守りやすいはずだが、個々のパワーに押されてタックルミスが出るとピンチを迎えてしまうだろう。攻守ともに、どこまで運動量を高めて、相手1人に対して、1人ではなく、2人、3人でプレーできるかが鍵となる。

スコットランド代表戦<9月23日(水)22:30キックオフ>

スコットランド代表はLOジョニー・グレイ(左)、リッチー・グレイ兄弟の活躍に期待が集まっている 【写真:ロイター/アフロ】

 南アフリカ代表戦から中3日となる9月23日、日本代表はグロスターに移動して、スコットランド代表戦を迎える。ちなみにスコットランド代表にとっては初戦となる。前回大会、初の予選プール敗退となってしまったスコットランド代表は、フランスのクレルモンで実績を挙げた、ニュージーランド出身のヴァーン・コッターHCを招聘。セットプレーと守備で粘り、プレースキックで得点を取るというラグビーから、展開ラグビーへ進化中である。

 イメージはニュージーランドやパナソニックの攻撃をイメージしてもらえばいいだろう。ミッドフィールドでは、SHクレイグ・レイドロー主将を起点としてFWのアタックラインである「9シェイプ」を連続し、両サイドにはBKの選手をあらかじめ配置する「ポッド」を採用している。大きくて決定力のあるWTB陣(登録4選手は平均188センチ、103キロ)がそろっているため、日本代表はFW勝負で負けてしまうと、両サイドでピンチを迎えてしまう。FWにプレッシャーをかけて、相手のリズムでプレーさせないことが大事だ。

 相手のディフェンスは、南アフリカ代表ほどではないため、日本の攻撃ができればトライチャンスも生まれると予想する。もちろんスクラム、ラインアウトといったセットプレーも相手は手強いが、この部分で勝つことができれば、日本にもチャンスが出てくるはずだ。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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