41歳イチローに高まる3000安打の期待 打撃低迷も来季メジャー契約は有力
野戦病院状態の中で最多出場の41歳
メジャー野手最年長ながら、イチロー(右)は野戦病院状態のチームで最多出場を果たしている 【Getty Images】
現地時間9月14日(日本時間15日、以下現地時間)、ニューヨークで行われたメッツ戦の5回裏、エリク・キャンベルのライナーをイチローが好捕したプレーは、ESPNのスポーツセンター内でそんなナレーションとともに取り上げられた。
当日のトップ10プレーランキングでも8位にランクイン。正直、そこまでのプレーには見えなかったが、依然として変わらぬ米国内でのイチローに対するリスペクトの表れか。マーリンズで初めて迎えたシーズンでも、現役野手最年長の41歳はそれなりの存在感を発揮し続けている。
8月15日のカージナルス戦では日米通算4192本目となるヒットを放ち、参考記録ながらメジャー歴代2位のタイ・カッブを上回った。9月15日のメッツ戦でも9回のセンター前ヒットでメジャー通算安打を2932本とし、歴代34位のウィリー・キーラーに並んだ。同33位のバリー・ボンズにもあと3本に迫るなど、記録面で引き合いに出されるのも歴史的なビッグネームばかりになっている。
全盛期ほどではなくともスピードは保っており、依然として外野の複数のポジションをこなせる守備もハイレベル。開幕ロースターの13人の野手中11人が解雇、降格、あるいは故障者リストに入ってきたことが話題のマーリンズだが、野戦病院状態の中でほぼ唯一のサバイバーがイチローだった。
“ナ・リーグのダークホース”という期待を裏切ったチーム内で、出場試合数は全選手中最多。不惑を超える年齢にして、守備、走塁重視のロールプレーヤーとして貢献ができるのは並外れたコンディショニングのたまものだろう。
7月の打率急降下で補強候補から外れる
「やはり年齢による衰えは隠し切れない。身体全体にキレがなく、スイングスピードが鈍ってしまっている」
ア・リーグの某チームのスカウトに意見を求めても、打撃面の評価は極めて低かった。6月中旬までは2割8分台の打率を保ち、トレード期限間際にレンタル的な形で獲得を望む上位チームが現れることが期待された。しかし、以降に数字は急降下。記録面で話題になることはあっても、7月の月間打率が1割9分5厘ではトレード期限前の補強候補にまったく名前が挙がらなかったのは仕方ない。
昨季開幕直後から、筆者はイチローを「ほとんど理想的な第4の外野手」と認識してきた。外野のすべてのポジションをハイレベルでこなす守備力は健在で、終盤イニングの代走でも相手守備陣の脅威を与えられるだけのスピードも保っている。こんな選手が1人いれば、プレーオフを目指すチームの監督にとって心強いことは間違いない。ただ、それは少なくとも2割7分から8分程度の打率を残せるだけの打撃力を保っていればこそである。
「本塁打は1本のみと長打の危険がほとんどない選手。それだけに、この低打率は厳しい。基本的には守備、走塁だけの外野手になってしまえば、来年の契約は厳しいものになるんじゃないか」
ニューヨークのある地元記者のそんな言葉に、真っ向から反論するのは難しいのが現実である。