白鵬、照ノ富士が元気だった夏巡業 流れは“モンゴル4横綱時代”へ

荒井太郎

巡業部長もぼやく白鵬の順調ぶり

長期間となった夏巡業でも順調に稽古を重ねた横綱・白鵬 【写真は共同】

 今年の夏巡業は全17カ所、20日に及ぶ“長期ロード”だった。9日間だった昨年の倍増以上の日数であり、夏巡業が20日以上となるのは16年ぶり。相撲人気の復活で勧進元も戻ってきた。各会場は満員御礼続出。大盛況のうちに終わった今回の巡業だが、元気だったのはやはり今年に入って激しく賜盃を争う横綱・白鵬と大関・照ノ富士だった。

「強い者がそうでない者より稽古するんだから、白鵬時代は終わらないよ」と尾車巡業部長(元大関琴風)はぼやく。横綱・日馬富士は休場(終盤で土俵入りのみ参加)。横綱・鶴竜は「(負傷を抱える左)肩の状態を見ながら」と慎重な態度を崩さず、申し合いに参加したのは5日間のみ。照ノ富士を除く日本人大関3人は、稀勢の里が後半で気を吐いたぐらいで、豪栄道はぶつかり稽古以外では栃木県足利市で十両相手に肩慣らし程度で取ったのみ。琴奨菊は稽古土俵に上がることはなかった。それぞれケガの事情を抱えているとはいえ、寂しさは否めなかった。

 右足親指の負傷で数日、稽古を回避した以外は土俵に上がり続けた白鵬。8月7日に行われた石川県の七尾巡業ではご当地出身でホープの十両・輝を直々に稽古相手に指名すると、客席からは拍手と大歓声が沸き起こった。10番連続で取った後はそのままぶつかり稽古となり、21歳の新鋭をたっぷりとかわいがった。

 また、翌日の新潟県・糸魚川巡業では平幕の阿夢露を土俵に呼んで胸を出した。両膝の手術からはい上がって幕内の座をつかんだロシア出身の苦労人は「横綱に稽古をつけてもらうのは初めてです。本当にうれしい」と感慨深げ。ご当地力士や生きのいい中堅、若手に積極的に胸を出すサービス精神も交えながら、角界第一人者は順調な調整ぶりだった。

土俵を占拠して稽古を重ねた照ノ富士

 照ノ富士も途中、左膝半月板を痛めて3日間稽古を休んだが、それ以外は各地で栃煌山、妙義龍、隠岐の海といったバリバリの役力士を相手に土俵を占拠するほど。一方で新鋭をつかまえては、あえて相手十分な体勢で攻めさせる余裕も見せていた。稽古熱心さには定評がある大関は「(毎日土俵に上がるのは)普通でしょ」と、さも当然と言わんばかり。さらに「遠藤や輝も立ててあげないとね(笑)」と両力士の地元である七尾巡業では気遣いを見せつつ、稽古量は物足りないといった様子であった。

 9月4日に行われた横綱審議委員会による稽古総見は横綱、大関陣は全員、顔をそろえたが白鵬は土俵に入らず、四股やすり足などの基本運動に徹した。日馬富士は逸ノ城、栃ノ心、遠藤らを相手に「力の入り具合を見ながら」と言いつつも左前褌を引きつける力強い取り口が目立ち、明るい表情も見せたが、10日になって2場所連続の休場を表明。鶴竜は格下相手に12番と軽めの稽古に終始した。

 大関陣4人は意地と意地がぶつかり合う激しい申し合いとなり、13番を取って8勝と唯一、勝ち越した照ノ富士が頭一つ抜きん出ていた印象だったが、日本人大関3人も明らかに大関2場所目の23歳に触発され、内容的にもなかなか見ごたえのある稽古ではあった。

1/2ページ

著者プロフィール

1967年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、百貨店勤務を経てフリーライターに転身。相撲ジャーナリストとして専門誌に寄稿、連載。およびテレビ出演、コメント提供多数。著書に『歴史ポケットスポーツ新聞 相撲』『歴史ポケットスポーツ新聞 プロレス』『東京六大学野球史』『大相撲事件史』『大相撲あるある』など。『大相撲八百長批判を嗤う』では著者の玉木正之氏と対談。雑誌『相撲ファン』で監修を務める。

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント