錦織、得意の全米OPで優勝なるか!? 杉山愛コラム「愛’s EYE」

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「BIG4」の仕上がりは?

全米オープンは8月31日に開幕 【写真:Getty Images】

 今回は8月31日に開幕する全米オープン(以下、OP)の展望をお届けします。

 まず男子について、BIG4から見ていくと、今シーズン圧倒的な強さを見せるノバック・ジョコビッチ選手(セルビア)に対し、アンディ・マレー選手(イギリス)とロジャー・フェデラー選手(スイス)が前哨戦で優勝して全米OPに向けてうまく仕上げてきていると感じます。一方でラファエル・ナダル選手(スペイン)はこの間の錦織圭選手(日清食品)との試合を見ても、いいときの彼に戻っていないように思います。

 ジョコビッチ選手は前哨戦2大会では優勝を逃しましたが、内容は充実しています。パフォーマンスの質といい、安定感といい、まさにナンバー1の実力を発揮しています。もともと柔軟性を持った選手ですが、体の切れが増しているのか、すごくしなやかさを感じます。どんなトレーニングをしているのか教えてもらいたいくらい。それくらいの充実ぶりです。

 前哨戦のモントリオール(ロジャーズ・カップ)の準々決勝では、マッチポイントを握られてからの逆転もありました。相手のエルネスツ・ガルビス選手(ラトビア)はすごいショットもあるのに大切なところではプレッシャーで力を出しきれない、というか出させてもらえない。逆にジョコビッチ選手は、そんな状況でも笑顔を見せる余裕すらあるのですから、底力があるというか、精神的な強さを感じます。

 マレー選手はそのモントリオールでジョコビッチ選手を破って優勝しました。最近のマレー選手はコーチの1人である(ヨナス・)ビョークマンの影響なのか、攻撃が早くなっていると感じます。前はもっとじっくりやるタイプで、相手の攻めからのカウンターねらいが目立ったのですが、ネットも含めて自分からの展開が増え、攻撃的になっていると感じます。

錦織が最も得意な環境

昨年、準優勝した得意のサーフェスで、今年も活躍が期待される錦織 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 フェデラー選手は前哨戦では出場大会を絞り、ピンポイントで出場したシンシナティ(ウェスタン&サザン・オープン)で優勝しました。若い頃とは違う調整法を心得ていて、体と相談しながら大会を選び、そこで十分なパフォーマンスができるのです。グランドスラムにピーキングを持っていく調整のうまさを感じます。

 ナダル選手はこの全米OPでも危うい感じがします。以前は彼のフォアに対して相手の選手がアップアップになってしまうというか、ラリーをしているだけで体力を削がれるような、パワーあふれるボールを打っていたのですが、今はそうではありません。彼自身、それが打てていないのか、あるいは、ほかの選手のレベルが上がって慣れてしまったのでしょうか。

 今の彼は筋肉でショットを打っているような感じがして、関節で打つ、あるいは骨で打つというようには見えません。“動き”で捉えるということをしないで、筋肉で走り、筋肉で打っている。だから体に大きな負担がかかっている、そんなふうに見えてしまうのです。20代前半までは体力が充実しているからそれで通用するのですが、今はもっと効率のよい打ち方、動きを探るべきなのかなと思います。ジョコビッチ選手にしてもフェデラー選手にしても、それを探求していると思うのです。そのことがナダル選手にはしわ寄せとなってきているような気がします。

 ランキング4位の錦織選手にも十分チャンスがあります。去年の準優勝で得たポイントをディフェンドする(ポイントは1年間で失効するため、失効分を取り戻す)重圧はあると思いますが、ハードコートで行われた全米OPシリーズのプレーを見ると、彼が一番好きなサーフェスであることがよくわかります。最も得意な環境で、どれだけのパフォーマンスをしてくれるかというのがすごく楽しみですね。

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