U−22日本が得た鎌田大地という可能性 「変わりたい」という思いで高めた個の力

川端暁彦

母校凱旋に集まる注目の視線

U−22日本代表の合宿に初招集された鎌田大地(白)。鳥栖で結果を残す19歳に多くの注目が集まった 【川端暁彦】

 23日、京都府京都市の東山高校総合グラウンドに一人、また一人と選手が集まってきた。来年のリオデジャネイロ五輪を目指すU−22日本代表の選手たちである。通常、合宿の移動にはバスが用いられるのだが、この日はタクシー移動。散発的に集まった選手たちの中に、鎌田大地はいた。

「懐かしいというか何というか……」

 鎌田にとって東山高校は愛すべき母校である。このグラウンドには彼自身の流した汗が染み込んでいる。ただ、卒業してわずか半年足らずであり、その記憶はまだ思い出になるほどではあるまい。戸惑う表情を浮かべる鎌田よりもむしろ、集まってきていたサッカー部員と学校関係者の視線が、「母校の星」にグイッと集まった様のほうが印象的だった。

 もっとも、集まっていたのは母校の視線ばかりではない。このルーキーは加入したばかりのサガン鳥栖で着実に頭角を現し、印象的なプレーを見せ続けて今回の京都合宿で初招集に至った。1993年以降生まれの選手たちで構成されるリオ五輪代表にあって、96年度生まれの鎌田は最年少。加えて、「本田圭佑を超える」と題された記事が大きな注目を集めたこともあって、注目度は高かった。普段は鳥栖でプレーしているだけに、関東・関西の記者双方で鎌田の取材経験を持つ者が少なかったことも、報道各社の「鎌田狙い」を加速させていた。

「人見知り」な性格に不安も

 鎌田にとって今回の日本代表入りは各年代を通じて初めての経験である。「人見知り」と自ら語るメンタリティーゆえに、最大の壁は輪の中に入っていけるのかという一点だった。東山高校時代の恩師であり、かつて京都パープルサンガ(現京都サンガF.C.)でプレーした元プロ選手の福重良一監督も「そこだけは心配なんですよね」と率直に語った。心配の根拠となっているのは、大阪体育大学時代の先輩から掛かってきた一本の電話である。

「お前は一体、どういう教育をしているんだ?」

 声の主は、かつて川崎フロンターレで監督を務めていた高畠勉氏である。現在はJリーグ・アンダー22選抜の監督を務め、Jリーグで出場機会のない選手のフォローアップに努めている。その彼が選抜に呼んだ鎌田の立ち居振る舞いを心配して、後輩に電話をしてきたのだ。福重監督は「悪いやつではありません。気持ちが弱いわけでもない。ただの人見知りなんですよ」と弁解に終始することになったのだが、その経験があっただけに今回の代表入りにも一抹の不安があったのだ。

「でも、あいつはずっと『変わりたい』と思い続けてここまで来たんです」

高校サッカーで変わったメンタル

「人見知り」という鎌田(右)だが、東山高校時代に仲間を思うメンタルを身に付けた 【写真は共同】

 鎌田にはガンバ大阪ジュニアユースからユースに昇格できず、東山高校を進路に選んだ過去がある。愛媛県から海を渡って大阪まで来ていただけに、挫折感の大きさは想像に難くない。それだけに高校の3年間は成長するための戦いだった。福重監督が強調し続けたのは「意識を変えろ」ということ。代表を目指せる選手だと直感したからこそ、厳しく接した。「古いタイプの指導」と自ら認める、部活スタイルの根性論をぶつけることもいとわなかった。

「僕が絶対に教えられないものを最初から持っていた。ボールを持つ姿勢、スルーパスの感覚……。技術的には何も問題はなかった。ただ、仲間を思う気持ち、仲間のために飛び込んでいく姿勢、そういうものが決定的に欠けていた」

 サッカーはチームスポーツであり、大切なのは信頼関係。ただ、その基本が欠けていた。ただ、東山で過ごすうちに徐々にではあるが、確実に変わっていった。

「鎌田が言っていたことがあります。『ジュニアユース時代の自分はベンチから観ているときも淡々としていて、いざ出ていくときも自分が結果を出せばいいんだろうとしか思っていなかった』と。でも『高校サッカーでは違った。ベンチから出ていくとき、こんな自分をみんなが本当に懸命に応援してくれている。期待してくれている。あいつらのためにやらなあかんと思った』と」

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著者プロフィール

川端暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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