甲子園V投手は大成しないってホント? 歴代67人のその後から定説の真偽探る

ベースボール・タイムズ

100勝以上“本物のスター”は4人

【ベースボール・タイムズ】

 投手としての成功の基準をどこに置くかはさまざまだが、それを「勝利数」とするのは1つの案だろう。その白星をプロでマークした者は、今年の8月9日に初勝利を飾った高橋を含めて計21人。しかし、これを「10勝以上」にすると12人とほぼ半減し、さらに「50勝」以上とすると7人、そして「100勝以上」とすると尾崎、桑田、野村弘樹(PL学園高→大洋)、松坂の4人しかいない。

 甲子園優勝で唯一無二の栄冠を手にした一方で、その後の野球人生においては大きな期待と同時に、過度のプレッシャーを受けるのは想像に難くない。そう考えると、甲子園優勝投手の肩書に収まることなく、世間からの注目、重圧の中でプロとして「100勝」を挙げて大成した上記の4人は、本物のスターと言えるだろう。

定説は本当か? 可能性秘めた若手に期待

 では、これまである種の定説として扱われてきた「甲子園優勝投手はプロで大成しない」は、果たして本当なのだろうか。

【ベースボール・タイムズ】

 大成したラインを「100勝」として、65年のドラフト制度導入以降の甲子園優勝投手(24人)のデータを見ると、100勝を達成したのは、桑田、野村、松坂の3人で、その割合は「12.5%」。甲子園優勝投手の8人に1人はプロで大成することになる。

 これをドラフト制度導入以降にプロ入りしたすべての投手に枠を広げてみると、入団した全2284人中、100勝以上を挙げた日本人投手は72人で、その割合はわずか「3.2%」。客観的にこの数値だけを見ると、甲子園優勝投手の奮闘ぶりが明らかになる。

 この数字は今後、さらに変わっていくだろう。現役プロの甲子園優勝投手は、野手転向の堂林を除いて、松坂、近藤一樹(日大三高→近鉄・オリックス)、斎藤、島袋、藤浪、高橋の6人。今秋のドラフト1位候補に挙げられる小笠原を含めた若い面々には、まだまだ無限の可能性が残されている。甲子園優勝は誇るべきもの。その栄誉に負けない活躍、これまでの定説を覆す活躍をぜひとも期待したい。

(文:三和直樹、グラフィックデザイン:山崎理美)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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