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体操金メダル・森末さんが語る東京五輪
「子どもたちに競技を見てほしい」

 2020年東京五輪・パラリンピックまで5年を切った。メディアでは新国立競技場の見直し問題やエンブレムの盗用疑惑など、ネガティブな話題も取りざたされているが、国際的なスポーツの祭典に向け、注目度は日増しに上がっていくだろう。


 そのような環境の中で、われわれはスポーツとどのように向き合っていくか。特に、発達ざかりの子どもを持つ親としては、どのようにスポーツに触れさせていけばいいのか?


 今回は、1984年のロサンゼルス五輪で、体操競技の種目別・鉄棒で金メダル、跳馬で銀メダル、団体で銅メダルを獲得した森末慎二さんにお話を聞いた。

ロス五輪以降、関心が高まってきた

2020年東京五輪が近づき、どのようにスポーツと向き合うとよいか、体操・金メダリストの森末慎二さんに話を聞いた
2020年東京五輪が近づき、どのようにスポーツと向き合うとよいか、体操・金メダリストの森末慎二さんに話を聞いた【スポーツナビ】

――2020年東京五輪まで5年を切りました。東京で再び、スポーツの祭典が開催されるということで、日本のスポーツ界が変わってきたという印象はありますか?


 基本的には、すでにスポーツをやっている選手の目標にはなりますが、一般の方にとっては、5年では間に合いませんので、目標にはならないでしょうね。


 ただやはり、五輪を目標にしている選手にとっては、今まで漠然としていたものが、明確に見え、はっきりと「ここに出たい」という目標になったと思います。


――森末さんが84年のロサンゼルス五輪に出場した際、五輪というのはどんなものでしたか?


 五輪は夢のまた夢でしたね。それこそ日本の六傑に入り、このままいけば来年は五輪に出られるとなった時に目標となりました。そう考えると今の選手も、5年後のことを目標とするのは難しいけど、それでも「東京に出たい」という意識で頑張っていると思います。


――スポーツを取り巻く環境についてはどうでしょうか?


 最近、新国立競技場の問題や、エンブレムの話などもありましたが、いろいろな意味でメディアの話題に上がるようになりましたね。


 例えば、ロンドン五輪では日本の選手強化費が27億円だったと。比べて新国立競技場にかかる費用や、エンブレムを制作した人に支払う費用を考えると、それを来年のリオデジャネイロ五輪に回すことができれば、もっと選手は強くなるのではと、テレビのコメンテーターも言っていました。そのような現状をある程度、国民のみなさんに知ってもらえるようになるというのは大事なことで、そういう部分でも東京で五輪が開催される影響というのはあるのではないでしょうか。


――東京で五輪が開催されるということで、よりスポーツ界の現状が話題になるということですね。


 そうですね。政府としても「スポーツ庁」ができますし、それも東京五輪があるからこそです。実際、政治家の方たちが五輪に目を向け始めたのは、ロサンゼルス五輪から民営化が始まったのがきっかけだと思います。テレビでスポーツの放送が増えましたからね。総理大臣が、金メダリストに電話をするというようなこともあって、政治家の方もスポーツに向いてきたんだと思います。


 ただ、国からの強化費を見ると、他の国に比べれば全然低いレベルなんですよね。それこそ、ナショナルトレーニングセンターが国で経営できていないわけですし。僕としては、もっと国で運営する体育館を作って、どんな競技団体でも使えるようにしてほしいとは思いますね。

体育館があっても使えない

森末さんがロス五輪で金メダルを獲得したのは27歳の時。今の選手たちは競技を早く始めることで、ピークをより早く迎えることができる
森末さんがロス五輪で金メダルを獲得したのは27歳の時。今の選手たちは競技を早く始めることで、ピークをより早く迎えることができる【写真:山田真市/アフロ】

――五輪の関心が増す中で、「将来の五輪選手」を目指す人も増えてきていると思います。実際、アスリートとして子どもが成長するには、何歳頃から始めるのが良いと思いますか?


 始める競技にもよりますが、まずは小さい時にいろいろなことをやった方がいいですね。体操や水泳、野球でもいいし、学校体育でもしっかりやった方がいいです。年齢的には早ければ早いほうがいいでしょう。


 体操でも水泳でもそうですが、30歳を超えた選手よりも、20歳前後の選手の方が体力があります。遅くとも25歳までにトップに持っていくとよいですね。けがからの回復や、体力も充実期になりますので。


 もちろん経験値も必要です。僕らが出場した五輪でいうと、(日本代表の男子体操)チームのメンバーは同級生が4人で26歳と27歳。1つ上の具志堅(幸司)さんが28歳、キャプテン(梶谷信之さん)が29歳でした。その時、中国代表は18歳から20歳の選手が出場していたので、やはり勝てなかったですよね。


 なぜこの年齢になったかというと、体操を始めた時期が、僕らは中学、高校になるので、大体この年齢でいい時期を迎えるんですよ。その後、池谷(幸雄)、西川(大輔)、それで今の内村(航平)は、始める時期が小学生からになったので、トップに持っていく年齢が下がり、一番いい時期を若く迎えられたんです。


――先日も体操はアジア選手権(広島)で団体優勝を飾っています。そのチームの主力が20歳前後と、日本も大きく平均年齢が下がっています。


 年齢が下がってきた理由は、体操を始めるための施設が増えてきたことがありますよね。コナミスポーツクラブなど、日本全国で体操教室ができたことで、早くから始められるようになりました。そこで一生懸命やって強くなることで、本格的に始められる年齢も下がったと。


――日本のスポーツを取り巻く環境も整ってきているということですね。


 そうですね。そこにはやはりテレビの影響もあります。スポーツのスターが出てくればテレビで多く取り上げますし、今では体操でも水泳でも、柔道や卓球もテレビで放送されています。


 ただ、一方でマイナースポーツはこれからどれだけ盛り上げられるかですよね。例えば、ある競技団体は、代表合宿でも管理栄養士が不在で、部屋もみんなで雑魚寝だったり。そういう部分もこれからマスコミが取り上げて、考えていかないといけないのかなと思います。


――そう考えると、まだまだ日本のスポーツに対する支援は足りない。


 全然ですよね。92年のバルセロナ五輪で、女子マラソンの有森裕子さんがプロ宣言をすることでスポンサーが付けられるようになったり、メダリストには報奨金も出るようになったりしました。今は強化費も出るようになって、昔より楽になったと思いますが、マイナー競技は、強化費が少ないので足りないでしょうね。その中で、今後国から出る強化費がどのように振り分けられるか。もちろん強い競技が優先になってしまうと思いますが、それでもトレーニング施設に関しては、五輪選手なら誰でも自由に使えるようにしてほしいですね。


 日本は、世界で1番体育館を持っているという話を聞いたことがあります。小学校、中学校、高校、大学、市営、県営とたくさんありますよね。ですが、どれも簡単には使えないんです。昔、バルセロナ五輪に出場したバドミントンの陣内(貴美子)さんが言っていたのは、「バドミントンの合宿がしたくても、使える体育館がないんです」と。今はトレーニングセンターがあり変わってきていますが、そういうことをもっと、政治家の方たちが分かってくれるといいですね。

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