ボルトのタイムは不滅の記録!? 世界記録、日本記録の推移を考察

小川勝
 陸上の世界選手権(中国・北京)が22日に開幕した。1年後に迫ったリオデジャネイロ五輪の前哨戦に位置づけられる今回は、来年のメダリストを占うにも重要な大会となる。

 一方、世界のトップアスリートたちが「記録」に挑戦するのも見逃せない。今回は男子100メートル、男子200メートル、男子マラソン、男子走高跳という注目種目の、21世紀に入ってからの記録の推移について考察してみたい。

誰も近づけないボルトの記録

 以下に並べるのは男子の100メートルと200メートルにおける、世界記録(濃い青)、世界のシーズンベスト(水色)、日本記録(濃いオレンジ)、日本のシーズンベスト(薄いオレンジ)の推移を表したグラフである。

男子100mにおける、世界記録と日本記録の推移 【スポーツナビ】

<記録推移>
世界記録:99年9.79(M・グリーン)⇒05年9.77(A・パウエル)⇒07年9.74(A・パウエル)⇒08年9.69(U・ボルト)⇒09年9.58(U・ボルト)

世界シーズンベスト:01年9.82(M・グリーン)、02年9.78(T・モンゴメリ)※、03年9.93(P・ジョンソン)、04年9.85(J・ガトリン)、05年9.77(A・パウエル)、06年9.77(A・パウエル)、07年9.74(A・パウエル)、08年9.69(U・ボルト)、09年9.58(U・ボルト)、10年9.78(T・ゲイ)、11年9.76(U・ボルト)、12年9.63(U・ボルト)、13年9.77(U・ボルト)、14年9.77(J・ガトリン)、15年9.74(J・ガトリン)
※02年にモンゴメリが世界記録を超えるタイムを記録したが、その後ドーピングが発覚したため、世界記録としては認められなかった

日本記録:98年10.00(伊東浩司)

日本シーズンベスト:01年10.02(朝原宣治)、02年10.05(末續慎吾)、03年10.03(末續慎吾)、04年10.09(朝原宣治)、05年10.15(末續慎吾)、06年10.25(塚原直貴)、07年10.14(朝原宣治)、08年10.16(塚原直貴)、09年10.07(江里口匡史)、10年10.16(江里口匡史)、11年10.14(江里口匡史)、12年10.07(山縣亮太)、13年10.01(桐生祥秀)、14年10.05(桐生祥秀)、15年10.09(高瀬慧)

※注目ポイント
1、08年にボルトが世界記録を更新。09年にはそのタイムを一気に伸ばした
2、09年以降は、その世界記録に近づいた選手がほぼいない
3、日本記録は98年に伊東浩司が記録した10秒00。最も近づいたのが13年の桐生祥秀

男子200メートル

男子200mにおける、世界記録と日本記録の推移 【スポーツナビ】

<記録推移>
世界記録:96年19.32(M・ジョンソン)⇒08年19.30(U・ボルト)⇒09年19.19(U・ボルト)

世界シーズンベスト:01年19.88(J・ジョンソン)、02年19.85(S・クロフォードほか)、03年20.01(B・ウィリアムズ)、04年19.79(S・クロフォード)、05年19.89(W・スピアモン)、06年19.63(X・カーター)、07年19.62(T・ゲイ)、08年19.30(U・ボルト)、09年19.19(U・ボルト)、10年19.56(U・ボルト)、11年19.26(Y・ブレーク)、12年19.32(U・ボルト)、13年19.66(U・ボルト)、14年19.68(J・ガトリン)、15年19.57(J・ガトリン)

日本記録:98年20.16(伊東浩司)⇒03年20.03(末續慎吾)

日本シーズンベスト:01年20.29(大前祐介)、02年20.37(末續慎吾)、03年20.03(末續慎吾)、04年20.59(高平慎士)、05年20.55(末續慎吾)、06年20.25(末續慎吾)、07年20.20(末續慎吾)、08年20.58(藤光謙司)、09年20.22(高平慎士)、10年20.38(藤光謙司)、11年20.49(高平慎士)、12年20.42(高瀬慧)、13年20.21(飯塚翔太)、14年20.34(高瀬慧)、15年20.13(藤光謙司)

※注目ポイント
1、100mと同じく、世界記録はボルトが08年、09年と立て続けに更新
2、12年以降はボルト以外19秒5台を切れていない
3、日本記録は末續慎吾の20秒03。今季はその記録に藤光謙司、高瀬慧が近づいている
<解説>
 男子100メートルと200メートルについて、世界記録の変遷、および最近のシーズンベストを見ていくと、2009年世界選手権(ドイツ・ベルリン)で記録されたウサイン・ボルト(ジャマイカ)の世界記録は、当分、破られそうにないことが分かる。

 13年、14年、そして15年も、世界記録に迫るタイム、つまり100メートルで9秒70を切った選手、200メートルで19秒50を切った選手は出ていない。14年と15年、世界ランキングのトップは、100メートル、200メートルともにジャスティン・ガトリン(米国)だ。ガトリンはすでに33歳のベテラン。100メートルは9秒74、200メートルは19秒57まで自己ベストを伸ばしているが、33歳という年齢を考えると、このあと世界記録の9秒58、19秒19まで伸ばせるかというと、それはなかなか考えられない。

 ボルト自身も今年の8月21日で29歳。2年前の世界選手権(ロシア・モスクワ)で9秒77、19秒66を出して以降は、年間世界ランキングの1位にもなっていないとなると、自身の記録を更新するのは厳しいだろう。

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著者プロフィール

1959年、東京生まれ。青山学院大学理工学部卒。82年、スポーツニッポン新聞社に入社。アマ野球、プロ野球、北米4大スポーツ、長野五輪などを担当。01年5月に独立してスポーツライターに。著書に「幻の東京カッブス」(毎日新聞社)、「イチローは『天才』ではない」(角川書店)、「10秒の壁」(集英社)など。

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