バットを生地に持ち替えた元近鉄・川口 “つながり”が導いた第2の人生
思い出深い2001年シーズン
01年、“いてまえ打線”の一員として、リーグ優勝に貢献した 【写真=BBM】
優勝を決めた劇的なシーンが思い出される。9月26日のオリックス戦(大阪ドーム)、2対5の9回無死満塁から北川博敏(現・オリックスプロジェクトマネージャー)が代打逆転サヨナラ満塁本塁打。セカンドランナーだった川口は、かつて経験したことがない興奮の中で仲間が待つ本塁までを走り抜けた。
「どっかーんってなりましたからね。超興奮していました。だから、三塁ベースをちゃんと踏んだかなって今でも不安です(笑)」
真弓コーチと中村紀洋、無しには語れない野球人生
「真弓さんは(柳川)高校の先輩で、いつも気にしてくれました。中村さんは僕の師匠。怖かったですが、いつも一緒にいさせてもらって本当にありがたかったです」
店名の「hands hands」は手作りへのこだわりを表すとともに「手から手へ」という“つながり”の意が込められている。かつて本拠とした大阪や仙台からお店に足を運んでくれたファンもいる。店のオープン時には中村をはじめ、ずらりとプロ野球選手名が書かれた祝花が並んだ。
「元プロ野球選手だと知らないお客さんがほとんどなんで、『何でだろう』って皆さん不思議そうにしてました」
おいしいパンを並べて笑顔でお客さんを出迎える日々。すべての出会いを大切にすることでさまざまなつながりが生じている。
指導者としての夢も…
「偶然ですが、ここから車で10分ほどのところに住まわれています。僕が高校を出た後に大学で監督をされたのですが、そのときの教え子が今の西南学院大の監督で、そのつながりで教えることになって」
学生野球資格回復制度を知ったのも縁だった。OBクラブ主催の野球教室で一緒になった金田政彦(元楽天ほか)に同制度のことを聞いた。
「一緒に行こうよって誘われたんで、『取っておいた方がいいんですよね』って感じで適性審査を受けに行ったんです」
今春、西南学院大は109季ぶりに九州六大学リーグで優勝し、大学選手権に出場した。
「やっぱり野球が好きですね。リーグ戦が始まると気持ちはつい、あっちに行っちゃいます。どんなオーダーを組もうかって」
指導者として再びユニホームを着る熱意はある。生活の基盤として繁盛店を切り盛りしつつ、夢を抱き続ける。そんなセカンドキャリアの過ごし方を実現している。
=文中一部敬称略=
<取材・文=菊池仁志(BBM)>