第1打席の反省が生んだ清宮の2安打 大観衆の残る期待は一発のみ

楊順行

野球IQの高さを見せたバント処理

勝利を報告すべく、三塁側アルプススタンドへ駆け出す早実ナイン。清宮は前列左から2番目 【写真は共同】

 う〜ん、清宮幸太郎は野球IQ(知能指数)が高い。

 広島新庄(広島)と対戦した早稲田実業(西東京)の2回戦。6対5と1点勝ち越した6回裏の守りだ。無死一塁のピンチで、1番・杉村泰嘉のバントは一塁手・清宮の前への小飛球となった。清宮はこれを、ダイレクトでは捕球せず、ショートバウンドで落ち着いて処理。まずは一塁カバーに入った二塁手の富田直希に送球して杉村をアウトにすると、自重せざるを得なかった一塁走者も一、二塁間で挟殺された。ピンチを未然に断つ併殺の完成だ。

 目の前に飛んできたフライというのは、本能的に捕りたくなるもの。まあ、練れた内野手なら、ショートバウンド処理は当然のプレーだが、清宮はまだ1年生なのだ。

「バッティングはともかく、場面場面で、高校野球のスピードに慣れていないところがある。だけどあのバント処理は、よく判断してくれました」と早実・和泉実監督も目を細める。

第1打席の反省が生きた2安打1打点

 この日の甲子園も、やはり朝から満員だった。観衆、4万4000人。むろんその多くは、スーパー1年生・清宮見たさである。怪物ぶりを証言するのは、ライトの玉川遼だ。お父さんはサントリー勤務で、実は清宮の父・克幸さん(現ラグビー・ヤマハ発動機ジュビロ監督)と同期入社。家族ぐるみの付き合いがあるが、高校に入学した清宮の、最初の打撃練習で驚いた。

「とにかく、初球から打球がまるで違うんですよ」

 そんな和製ベーブ・ルースだから、対する広島新庄の先発左腕・堀瑞輝も、警戒は怠りない。

「1回戦の映像を見ると、インコースの高めを振っていた。なんとか、そこを突いていくつもりです」

 実際、初回1死一塁で迎えた清宮の第1打席は、ゆるい変化球で空振り三振に取っている。だが「気持ちですね。気持ちが入りすぎていた。もうちょっと余裕を持って入れれば……」(清宮)という反省が、次の打席以降に生きる。

 3回の第2打席は、セカンドの右をライナーで抜く痛烈な先制タイムリー。2点を追う5回の第3打席は、ショートの右を破って同点劇の口火を切った。死球をひとつ挟み、8回のピッチャーライナーは好捕されたものの、これもヒット性の当たりだった。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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