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日本ハンドボール界の希望に――
フランス1部リーグ土井杏利の挑戦

フランスで活躍し続けることの意味

「五輪で優勝」という夢があるので、日本代表に対する思いは大きい。しかし、メンバーに加われないというのが現状だ
「五輪で優勝」という夢があるので、日本代表に対する思いは大きい。しかし、メンバーに加われないというのが現状だ【中莖かうり】

――それでは最後に日本代表についての話をうかがいます。今年の2月に岩本監督が代表監督に就任されてから、代表合宿のメンバーにリストアップされました。代表は今回が初めてですか?


 いえ、一度ジュニアの時に中国との交流試合で選ばれましたが、それ以来ですね。


――今回はリーグ戦の兼ね合いもあり辞退となりましたが、日本代表に対する思いというのはどんなものがありますか?


 もちろん僕も日本のために戦いたいという気持ちはありますし、日本代表に選出されるのはうれしいことです。ですが、現状では僕にとって日本代表で戦うことは難しいんです。


 11月にリオデジャネイロ五輪のアジア予選(カタール)が始まりますが、すでに僕はシーズン中で、チームとしても僕が抜けると困る状態にあるので、行かないでほしいと言われています。もちろん五輪出場の可能性が高いのであればチームも分かってくれるのですが、僕が入ってもチームのプラスになるかはやってみないと分からないので、五輪に行ける可能性が高まるとは限りませんし、けがのリスクを背負って行くということを、チームは認められないという状態です。


――今回合宿に招集されたメンバーは同世代の選手も多いかと思います。そのような選手たちに日本の状況は聞いたりしていますか?


 代表メンバーの中には仲の良い仲間もいます。いろいろ話を聞いていて、良い選手もそろっていると思います。ただ、今のまま同じことをしていても変化はないですし、2020年まで5年ありますけど、これもすでに手遅れになっているかもしれません。


 世界のハンドボールの発展レベルは日々進化していますが、日本ではいまだに練習では走ることが中心で、毎日同じ練習、同じ戦術のくり返しになってしまいます。それだと僕にとってのメリットがなく、チームに残って練習している方が世界のトップレベルの選手と試合ができますし、良い経験になるんです。


 ただ複雑な気持ちもあります。日本のために戦いたいという気持ちもありますので……。


――やはり最初に話されていたように、「五輪で優勝」が目標であると?


 そうですね。小さい頃からの夢なので、僕は出場するなら優勝したいと思っています。ですが、今は欧州のクラブチームの間でチャンピオンズリーグというのがあって、そこに日本人として最初に出場してみたいというのがあります。そこで優勝することも世界一という夢につながるかなと思っています。


――現在、日本が低迷している状態を見ていて、自分自身ができること、しなければいけないと思っていることはありますか?


 僕がしないといけないことは、結果を残し続けることだと思います。それが日本を変えるきっかけになると思うんです。


 結局、僕一人が良い結果を残し続けても日本全体が変わるものではありません。僕自身、日本にいたときはすごい選手でもありませんでしたし、トップのトップと言われる選手ではありませんでした。ですが、そういう選手が結果を残し続ければ、みんなの希望になると思います。「俺でもできるんじゃないか?」と思ってくれる選手が増えるためにも、活躍し続けることが重要なのかなと。


 僕が活躍し続けること、希望であり続けるというのが大事で、若手が海外に来てくれれば日本のレベルも必然的に上がると思います。ですので、僕にできることは結果を残し続けることだと思っています。


――土井選手が活躍することで、同じく海外で戦いたいと思う選手が増え、その数が増えれば日本自体のレベルが高まってくると。


 そうですね。ですから僕は、いろいろな人にチャレンジしてもらいたいと思っています。一つのチャレンジで、僕のように大きく人生を変えることもあります。だから、怖がらないでチャレンジしてほしいです。もちろん、新しい世界にチャレンジするのは怖いことだし、その先には必ず苦しみが待っています。ただ、その苦しみが自分に降ってきた時、それを楽しんでほしいんです。


 僕が経験してきたことで言いたいことは二つだけ。「チャレンジしてほしい」と、「苦しい中でも楽しんでほしい」ということです。文字にしてしまえば簡単なことですけど、僕にとっては本当に大きなことです。


(取材・文:尾柴広紀/スポーツナビ)

今年の春にシャンベリーとは2年の契約延長を結んだ。海外で活躍し続けることが、日本への貢献にもつながる
今年の春にシャンベリーとは2年の契約延長を結んだ。海外で活躍し続けることが、日本への貢献にもつながる【中莖かうり】

■選手プロフィール:土井杏利(どい・あんり)


フランスリーグ登録名:Remi Feutrier


1989年9月28日生まれ 178cm/74kg


所属チーム:シャンベリー(フランス1部リーグ)


ポジション:LW(左サイド)


経歴:冨里北中学校(千葉県)

   浦和学院高校(埼玉県)

   日本体育大学


 フランス人の父と日本人の母の間に生まれ、4歳から千葉県成田市で育つ。

 小学3年生の時にハンドボールを始め、冨里北中学での活躍を経て、全国的強豪校の浦和学院高校へ進学。大学も全国トップの日本体育大学へ進む。

 大学ではヒザのけがで出場機会に恵まれず、また卒業後も実業団でのプレーを断念し、語学留学を目的にフランスへ渡る。


 ひざのけがが回復したことを機に、2012年にシャンベリーの下部組織の練習に参加。活躍が認められ、わずか数カ月でトップチームへ昇格し、プロ契約を結ぶ。


 2014−15シーズン序盤からスターターに抜擢され、さらにはチームで唯一の攻守フル出場を任される。シュート成功率が最も重要視されるLWのポジションで、驚異の成功率75.61%を記録し、チームをリーグ4位、EHFカップ進出に導く。

 複数の球団から契約オファーを受けるも、15年春にシャンベリーと2年の延長契約を更新。16−17シーズンまで同球団でプレーすることが決定している。

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